シーズンⅡ 第五話 坑道の中で
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
前回は温泉街でのラストシーンまでを書かせていただきました。
今回からは目的地である鉱山に物語の舞台を移していきます。
本作はいじめや暴力の描写を含みますので、苦手な方はご注意してください。
主人公が理不尽な暴力や、過去のトラウマと闘いながら成長していく物語なので、お付き合いいただければ幸いです。
この物語はフィクションです。登場人物・団体および地名等における名前や設定はAIと相談しながら決定しています。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
翌朝、俺たちは鉱山の坑道入口に立っていた。
周辺一帯は再開発として囲まれているということだったが、仮囲いを超えた先に敵の姿はなかった。
先行した騎士団が鉱山周辺の情報収集を行うとともに、トラップの解除や、監視要員の捕縛も済ませてくれていたからだった。
早速、アリアの手回しが活きてきたわけだ。
俺たちは騎士団の指揮官と合流すると、作戦の最終確認をした。
坑道に入るのは俺たち六人。
主目標は魔石の違法採掘現場を押さえて「黒い天秤」の資金源を断つこと。
併せて、ここで働かされている奴隷たちの解放だ。
森の廃墟における幹部一斉拘束の際に、奴隷として働かされている人々の家族——つまりは人質だ、を地下牢で発見して保護したことを伝えれば、奴隷たちは逃げることができるだろう、とのことだ。
騎士団は坑道入口で待機し、坑道から出てきた人間の保護、もしくは拘束を担う。
以上だった。
「ご武運を。レオン殿。」
騎士団の指揮官が言った。
「ああ、ここはよろしく頼む。」
俺はそう返すと、仲間とともに坑道に足を踏み入れた。
——さて、ここからが本番だ。
カイルとジークフリートが後衛。
クロエとエレナが前衛。
俺とアリアが真ん中で全周を警戒する。
坑道は湿っぽく、入った直後は日の光が届いていたが、今は手元の魔石によるランタンだけが頼りだ。
言われなければ、どう見ても閉山した鉱山の洞窟だ。
慎重に、慎重に奥へと進んでいく。
すると視界に広がる坑道のさらに奥の方から、人の気配がしてきた。
前衛のクロエが身振り手振りで伝える。
俺たちは物陰に隠れて、奥の方を見やる。
——そこには広大な空間が広がっていた。
そこではそこかしこでツルハシを持った男たちが壁を削り、猫車を持った男たちが、魔石を含んだ石を運び出していた。
猫車を押していた一人の男が力尽きて転倒する。倒れた猫車から積んでいた魔石が音を立てて転がった。
男は膝をついていたが、側にいた監視役の男が鞭をふるって立つように促した。
叩かれている男の顔に目を凝らした俺は、目を見張った。
あいつは、田中——。生前俺にコンビニで万引きを強要した男の顔だ。
あいつは吾妻らと違って、日常的には攻撃してこなかった。だが、あの時、あのせいで俺は補導されて、クラスはおろか学校中で居場所を無くすことにつながったんだ。
俺の拳が震える。だが——あの男はあいつではない。今はほかの奴隷たちと同じく救われるべき、理不尽な暴力の被害者なのだ。
——その時だった。男の真上の天井が部分的に崩落した。大きな岩が男に向かって落下していく。鞭の男は逃げ出していたが、膝をついていた男はその場から動けなかった。男は両手を頭にのせるとその場にうずくまった。
俺は無意識に、男の頭上に防御魔法を展開していた。
落下してきた岩は、俺の展開した防御魔法のシールドにより、粉々に砕けて、男の周りに無害な破片として散らばっていた。男は頭を挙げると、何が起きたのかわからないという様子で自分の周りに散った岩を眺めていた。
とりあえずは、一人助けることはできた。
だが、これでこちらの潜入は敵に知られた——。
「突入するぞ!」俺は声をかけた。
「了解!」仲間の声が響きわたった。
◇
奴隷たちを監視していた男たちが、こちらに一斉に襲い掛かる。
「クロエ!エレナ!」
俺が叫ぶと、クロエは水魔法を放ち、向かってくる男たちの足元に大量の水を流し込んだ。
男たちは一瞬動揺するが、広い坑道の中では水たまりに足が浸かった程度だった。
「なんだぁ。なめてんのか!小僧ども!」
再び俺たちに向かってくるが、それだけあれば十分だった。
エレナは凛とした佇まいで魔法の詠唱を行う。
——クロエが作り出した水たまりに氷結魔法をかけたのだ。その瞬間、男たちの足は現在位置から一歩も動けなくなった。
「な、なんだこりゃ!」
「おい!誰かこの氷を溶かしてくれ!」
後方から俺たちに襲い掛かろうとした連中は、カイルとジークフリートによって無力化されていった。
カイルはお得意の風魔法により敵の動きを封じると、持ち前の剣術で向かってくる敵を圧倒していた。
「おい。カイルさん。風魔法使うのはいいけど、こっちまで巻き込むなよ。」
ジークフリートは言う。
「大丈夫だ。同じミスは二度と犯さない。」
カイルは俺の方をちらと見るとそう言っていた。
俺は防御魔法で、天井がこれ以上崩落しないように固定しつつ、向かってくる相手をアリアとともに迎撃していた。
アリアは公爵令嬢ではあるが、剣術の覚えも人並み以上だった。俺が手を貸すまでもなく、向かってくる男たちを次々となぎ倒していった。
『弱者を守る盾であれ』——家訓そのものを体現して見せる令嬢の姿に頼もしさを感じ、俺は防御魔法の余力の一部を火魔法にして、火球を一発ぶち上げていた。
もちろん、ここでも酸欠には要注意だ。しかも魔石に引火して爆発なんてことになったらたまらない。
そのことは監視役の男たちも理解している。それだけに俺の火魔法の使用には腰を抜かしていた。
「バカ!やめろ!」
「死にてぇのか!ガキ!爆発するぞ!」
俺もバカじゃない。火魔法の威力を抑えてかつ、火球を防御魔法で包んで——要は袋に入れたような状態にしてぶち上げたのだ。
遠くの仲間に連絡する方法として、俺が研究していた応用技術だ。以前は小屋に放火することしかできなかったが、これなら安全かつ広い範囲に光をもたらすことができる。
奴隷たちの視線がこちらに集まった。ここからが俺の仕事だ。
第五話も読んでいただき、ありがとうございました。
相変わらずレオンの”全力の火魔法”をお見せする場面を用意することができず、申し訳ありません。
それでも、今回の戦闘シーンを執筆するにあたって、なるべく全員以前よりも磨きがかかっている、ということが伝わることを意識して書いてみました。
主人公も最初の三か月間だけでなく、女神ルミナと別れた後も成長を続けているということを示す場面が欲しいと思っていたので、ラストのシーンを入れることができて良かったです。
第六話は2026年9月23日12時10分、公開予定です。
高評価・感想をいただければ作者も成長できると思うので、よろしくお願いします。




