9 業火と暁光
カクヨムで異世界ファンタジー週別ランキング1868位に上昇しました!
ジェネシスにある畑で、男と子供が畑仕事をしていた
「ねーパパ。」
「なんだい?」
「あのおっきいの何?」
男が見上げると上空に、赤龍がいた
(あれは・・・まさか)
「早く逃げるぞ、ラン!」
「どうして?」
「いいから、死にたいのか!」
男は娘を抱えて一目散に逃げた
* * *
コンコン
フィデリアの家がノックされた
「何よ、レオかしら。」
ドアを開けるとリリーがいた
リリーはどこか落ち着きがないようだった
息を切らしながら走ってきたようだ
「何、喧嘩なら今日はしないわよ。」
「喧嘩じゃありません。空を見てください!」
「空?」
フィデリアが見上げると深紅の翼をもつ、50メートル近い赤龍がいた
「あれは、赤龍?」
「はい。Sランク相当の化け物です。」
震えた声でリリーがそう言った
「まさか、こっちに近づいてきたりしてないわよね・・・。」
フィデリアも動揺し始めた
体が少し震えている
「そのまさかです。」
「え?」
刹那、赤龍が口から炎を吐いた
その業火は次々と街を焼き尽くしていく
「きゃぁぁぁぁ!」
街の人々の悲鳴が次々と上がる
「今この町にいる冒険者は全員、集まってください!」
ギルドの方から声がそう聞こえた
「・・・行きましょう。フィデリアさん。」
リリーはフィデリアの折れた剣の代わりに、氷の剣を生成し、渡した
フィデリアはそれを受け取ると、こう答えた
「もちろんよ。」
* * *
そのころ、何も知らないレオはモンブランを発売しているケーキ屋の行列に並んでいた
(これ、何人並んでんだよ)
もう、一時間近く並んでいるが、まだ、列の真ん中あたりだ
その時、後ろから声がした
「アーサー・・・疲れたからおんぶして。」
「はいはい。」
後ろを振り開けると、赤髪に、オレンジ色の瞳のイケメンと白髪に、水色の髪が混ざっているロングヘアで、青の瞳を持つ、スタイル抜群の美少女がいた
(美少女?いや、よく見ると20代前半くらいか)
アーサーと呼ばれた男は美少女?をおんぶした
(昼間からイチャイチャしやがって(悔し涙))
レオは見るのをやめ、後ろからの声は聞かないようにした
* * *
レオが無視し始めた後も、アーサーたちは話し続けていた
「まったく、水神がこんなずぼらだとばれたら俺は恥ずかしいよ。」
「水神なんて言ってるのは世間の評価。私は私。でも、アーサーが照れてるとこ見てみたい。」
「はぁ、シェリルは気楽でいいね・・・。」
アーサーはため息をついた
その時
「・・・シェリル、強大な魔力が隣町に近づいている。多分、あれは龍種だ。」
しかし、反応がない
「シェリル?」
アーサーがシェリルの顔を見ると・・・寝ていた
おんぶされたまま、公衆の面前でだ
静かな寝息が聞こえる
「おーい、シェリル。おーきーろ。龍種が近くにいる。」
アーサーがシェリルを起こすと
「う~ん・・・眠いし、トカゲの相手したくない・・・。」
そう言ってまた寝てしまった
アーサーは知っている
こうなればシェリルは何をしても起きないと
(俺が向かいたいところだが、シェリルをほっておくわけにもいかないし・・・はぁ、こいつの呑気なところにはいつも困らせられる)
シェリルが男なら大丈夫だが、シェリルは一応女性だ
襲われそうになったら本能で起きるかもしれないが、念には念をだ
アーサーは適当なホテルを借りて、まずはシェリルをそこに寝かせることにした
* * *
そのころ、ジェネシスの街では
「ぎゃぁぁ!」
悲鳴が上がり、多くの冒険者や住民が死んでいた
当然だ
この町には今、Bランク以下の冒険者しかいないのだ
「ぜぇ、ぜぇ・・・何なのよ、こいつ。」
「強すぎますね・・・。」
リリーとフィデリアは何とか生存しているものの、満身創痍だ
だが、赤龍は上空から傷一つ受けることなく、炎を吐き続け、蹂躙している
(私が頑張らなくちゃ)
リリーはBランク
ほかにもBランク冒険者は4名いたが3名は死亡し、1名は重体だ
リリーが倒れれば、この町はCランク以下だけになる
「汝に氷雪の加護を与えよ。白銀の吹雪よ。世界へ狂い降れ!」
「シュネーシュトゥルム・レイン!」
上空から赤龍目掛けて大量の氷の矢が降り注ぐ
だが
「ぎゃぉぉ!」
赤龍の炎ですべて無に帰された
(相性が悪すぎる。相手は格上なのに・・・)
もはや、絶望的な状況だ
今使った魔法は特級魔法
リリーが使える中でも最上位の魔法だ
「もう、魔力が・・・。」
リリーがふらつき始める
「ちょっと、あんた!」
フィデリアがリリーに駆け寄る
(もう、おしまいかもしれない)
フィデリアはそう思った
ほかの冒険者はもはや立ち尽くしているだけだった
逃げている冒険者もいたがそいつらはすべて炎で焼かれた
ここは逃げ場のない、地獄へと化していたのだ
* * *
同時刻、レオがようやくモンブランを買えて満足していると通行人のある声が聞こえた
「おい、聞いたか?ジェネシスに赤龍がやってきて、今、街を焼き尽くしているらしいぞ。」
(え?)
ジェネシスって、俺が住んでいる町だよな
赤龍・・・焼き尽くしている・・・リリーさんたちが危ない!
レオは急いで街を出て、ジェネシスへ向かった
* * *
「ふぅ・・・シェリルを寝かしつけたし、急いで向かうか。」
アーサーが街を出ようとしたとき、一人の少年がジェネシスに向かって駆け出していた
(あの子、まさか、赤龍を倒しに!?)
後を追わなければいけない
赤龍の強さは誰もが知っている
それなのに現場に向かうとなると、よっぽどの家族や仲間思いか、実力者しかいない
アーサーはこっそり後をつけた
* * *
酷いありさまだ
レオはジェネシスが見える丘に到着したときそう思った
ここから見えるほど、たくさんの炎が上がっている
そして煙の臭いがここまでする
(赤龍を倒さなければ。でも、どうする?)
レオははっきりと赤龍の場所を特定できている
だが、近づきすぎると、赤龍の射程範囲内だ
そして、今レオが持っている技は赤龍を倒すには威力不足の魔法しかない
ここから放つとなると、傷すらつかないだろう
(何か、何か魔法を・・・)
その時、あるアニメのタイトルを思い出した
(いけるかもしれない)
ここから赤龍を倒せる火力技で俺が実現できるかもしれないもの
それは電磁砲だ
幸い、赤龍は上空にいるため、電磁砲を撃っても、街に被害は・・・・起こるが多少は目をつぶらないと倒せない
問題は、俺の体が耐えられるかだ
今のままでは発射と同時に俺の体は消し飛んでしまう
(いや、賭けだができる)
電磁砲は電磁砲でも魔力で作った電磁砲
俺に向かってくる衝撃波も魔力で作られたもの
ならば、衝撃波を分解しながら発射すればいい
失敗すれば死ぬ
街のみんなも死ぬ
それでも、やるしかない
レオは周囲の魔力を集め始めた
レオに魔力が集まっていき、膨大な紫の魔力がレオから出ている
(まだ足りない。赤龍を倒すにはもっとだ)
そして空気が震えるほど魔力がたまると、レオは雷の初級魔法を大量に生成し、すべて、合体させた
そして、剣を媒介に極限まで帯電している魔素を加速させ、詠唱を始めた
「汝を求める雷帝よ。その強靭なる雷を我に見せよ。」
レオの周りで膨大な紫の魔力が紫電へと姿を変えバチバチと音を立てながら輝いている
「大地を貫き、大海を無に帰せ。世界を震わせる雷轟の産声を上げろ。轟け。」
とてつもない風圧で空気が音を立てるほど震え、紫電の魔力は遠くからわかるほどにまでなっていた
そして、狙いを赤龍に定めて、究極の一撃を放つ
「ディストラクティヴ・キャノン」
すさまじい爆音と衝撃は共に雷光が放たれ、暁光が昼の空に輝いた
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