35 もう一度
フィデリアはレオとともにエルターンの道場に戻っていた
そして、エルターンがいる部屋の前に立った
(どうやって話したらいいのかしら)
フィデリアは緊張で体が震えている
心臓の音がうるさい
「大丈夫。正直に話せば何とかなるさ。」
「うるさいわね。」
レオの励ましにからい言葉を投げかけるものの、内心嬉しかった
逃げてはいけない
そう思って扉を勢いよく開けた
「ちょ、ノックはした方が・・・。」
レオの言葉を無視して部屋に入る
すると、エルターンは驚いたような顔でフィデリアを見た
「フィデリア・・・。」
エルターンの表情は嬉しさと驚きと、緊張で何とも言えない顔になっている
フィデリアは何も言わずにエルターンの目の前に座り、土下座をした
(どんな反応されるかわからない。でも、仲直りしたい)
冷や汗をかき、体を少し震わせながらもフィデリアは口を開いた
「お父さん、ごめんなさい。私、お父さんに認めてほしくて、私を見てほしくて、そっけない態度をとって、里も無断で出てしまいました。・・・自分がってだったとはわかってる。だけど、どうか、許してくれませんか。もう一度、お父さんと話したり、剣の修業をしたり、したい・・・。」
最初は震える声で、最後の方は涙で声にならない声だった
(許さないって言われたらどうしよう。そしたら・・・)
フィデリアが心配して顔を上げられずにいるとエルターンがフィデリアの肩に優しく手を置き言った
「俺もごめんな、フィデリア。フィデリアの気持ちに気づいてあげられなかった。俺は、フィデリアの親なのに、娘と向き合うことをしなかった。だから、これからは二人で腹を割って話したい、また、あの頃みたいにな。・・・もし、フィデリアが俺を許してくれるなら、もう一度、俺を家族だと思ってくれないか・・・。」
するとフィデリアは顔を上げ、涙をぬぐいながら笑顔で言った
「お父さんを家族じゃないなんて思ったことないわ。エルターン・アマンダは私の大好きで自慢のお父さんだもの!」
そうフィデリアが言うとエルターンとフィデリアは二人で抱き合った
フィデリアも、エルターンも泣いていた
(俺はお邪魔かな)
レオはそっとその場から嬉しそうな顔で部屋から出て、扉の向こうで待機知ることにした
それからしばらくすると、フィデリアとエルターンの楽しそうな話声が聞こえてきた
(仲直りしたみたいでよかった)
レオが安心していると、リリーもいつの間にかここに来ていた
「リリーさんも心配だったの?」
「もちろんですっ!友達ですからね。」
「そっか。そうだもんね。」
レオとリリーはこれ以上長居するのもいけないと思い、その場から去った
* * *
その晩、ようやく新入生歓迎会が行われた
道に迷って3日も肉を買うのに時間をかけたヘルミーネはエルターンから説教されていた
結局、こいつに任せた俺が悪いなと言い、エルターンさんはヘルミーネに謝った
それが逆にヘルミーネさんの心を傷つけたようだったが
エルターンとフィデリアは肩を並べて楽しそうにしていた
門下生もフィデリアの帰還を喜んでいた
「セレーナ、ちょっと、酒の代わりを3人分頼む!」
「俺も手伝います!」
レオはセレーナとともに厨房に向かった
「どばー。」
(なんで自分で効果音つけてんだ?)
セレーナは真顔で酒を注ぐときにどばーと自分で効果音を言っていた
レオは若干引いている
(気まずいな。なんか、話すこともないし)
レオが気まずそうにするとセレーナがぬっと近づいてきた
「あの、どうし・・」
するとぺこりとセレーナがお辞儀をした
「レオさん、ありがとうございます。エルターン様とフィデリアの不仲は門弟内でも悩みの種となっておりました。私自身もあの二人が早く仲直りする日を待っていました。あなたのおかげで再び二人が楽しく話をしている。感謝してもしきれません。」
「いや、それほどでも・・・。」
「そう卑下しないでください。貴方も我ら閃辰流の門下生なのです。自分に自信を持ってください・・・ほら、行きますよ。」
「は、はい!」
(いい人ばかりだな)
レオは剣の里の人々の人柄に惹かれていた
「二人とも、ありがとな。お前らも飲むぞ!」
宴会は深夜になっても続き、皆、酔いつぶれた
* * *
剣の里から北西に30㎞ほど行った先の森
「ここらへんに強いやつはいないのか?」
白髪が混じったシアン色のオールバックの中年の魔人族がそう言った
「・・・ん?南東にそこそこの魔力の奴らが集まってるな・・・行ってみるか。」
雷龍と風龍の屍の上から立ち上がり、男は歩き始めた
一触即発の事態が迫る
続きが気になる方や少しでも面白いと思った方はページ下部にある星をお願いします。
ブックマーク登録もぜひお願いします。




