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34 親の愛

カクヨムで2000pv突破!


レオはフィデリアがいる宿屋に向かった




『2日間、俺が止まっている宿屋を見つけて呼び戻そうとしたが、フィデリアにまったく取り合ってもらえなかった。お前も夜な夜な探していたのに負担をかけてしまって悪いが、どうにか説得してきてほしい。』




出発する前にエルターンから言われた言葉を思い出している




『どうやらあいつは挫折が原因でな、それから俺と折り合いが悪くなってしまった。俺がもっとかかわり方を考えていれば・・・。』




(挫折、か)




俺も先の戦いで実力不足を痛感した


挫折感は俺も理解しているつもりだ


だが、俺がフィデリアを呼び戻すことはできるのか?




いや、只呼び戻すだけではなく、フィデリアの心を救わなければならない


そうしないと、何の解決にもならない




あいつ、意外とメンタル弱いからな


リリーさんのレスバにも過剰反応するし、特に自分のプライドが傷つけられるような発言に敏感だった(胸とか)




俺にできることはあるか?


いや、できるじゃない、やるんだ




俺ができる最大限の努力をしてみてから弱音を吐け




レオは、フィデリアの部屋の前に立った




コンコン




ノックをする




「おーい、フィデリア。今、話せるか?」




返事がない


夕暮れの空にヒグラシの鳴き声が響いているだけだ




だが、いないわけではない


宿屋に来た時に、受付の人に外出しているか聞いたからだ




今は、誰とも話したくないのだろう


・・・放したくなくても、声くらいは聞いてくれるか・・・




「なぁ、フィデリア。エルターンさんのところに戻らないか?」




相変わらず返事はない




「俺はエルターンさんから大まかな原因は聞いているが、お前の口からきかないと詳しくはわからん。それは、たぶん、エルターンさんも同じだと思う。」




部屋の中から少し物音がした


話を聞く気になったのだろうか




「俺と一緒に帰って、エルターンさんと腹割って話そう。二人とも、仲たがいする直前から全然話してなかったって聞いたし。」




「・・・話すことなんてないわ。私は醜態をさらしすぎた。もう、みんな内心冷めちゃってるに違いないわ。」




かすれており、耳を澄まさないと聞こえないようなか細い声が聞こえた


どうやら泣いているようだ




「・・・そうか、じゃ、俺の話だけ聞いてくれないか。面白くないかもだけど。」




「あんたの口から面白い話が出たのは森を爆破したときだけよ。」




「辛らつだな・・・まぁ、いいや。それで、話し、聞いてくれるか?」




「・・・少しだけなら。」




よし


・・・話すか


この話するの初めてになるかな




「俺さ、両親がいたんだけどさ、いろいろあって、俺を見捨てたんだよね。」




フィデリアは何も言わなかった




「いろいろあってのいろいろってのは、まぁ、簡単に言うと冤罪だな。それで、俺は無実を訴えたんだけど、親は俺も信じてくれなかった。」




フィデリアが息をのむ音と同時に、ヒグラシの鳴き声が静まる




「俺の両親は世間体を気にして、俺を見捨てたんだ。それだけの理由ではないと思うけど。・・・多分、怖かったんだろうな。俺がもし冤罪じゃなかったら、信じた息子が裏切っていたら。そしたら、俺の両親は犯罪者の家族の名前と息子に裏切られたっていう二つの重荷を背負うことになる。」




「私は犯罪なんかしてないわ。」




「・・・俺が言いたいのはここからだから。」




「少し長いわね。」




「ごめん。」




「いいわよ。」




「じゃ、ありがたく続けさせてもらうとするよ。・・・俺の両親は俺を見捨てた。親友にも俺は見捨てられた。同級生なんて論外だ。・・・でもさ、フィデリアの親は見捨ててないじゃん?」




「・・・そんなの義理よ。」




「義理かなぁ。義理だったら実の子でもないフィデリアにここまで必死になってくれないと思うけれど。」




「・・・何が言いたいの?」




「俺が言いたいことか・・・そうだな、俺が言いたいのは、フィデリアがうらやましいってこと。」




「私がうらやましい?」




「だって、俺の親、見捨てたもん。」




「あんたほど私は大ごとになってないから見捨てられたないのよ。」




「ほら、見捨てられてないって自分で言った。」




「・・・性格悪いわね。」




「おかげさまでひねくれたもので。」




「最初からじゃないの?」




「ひどっ!・・・なぁ、フィデリア。」




「なによ。」




「親は大切にしろよ。俺みたいに、真に愛してくれない親もいる。別に親のことはもう恨んでないけど。」




フィデリアは何も言わない




「エルターンさん、50前だろ?この世界に平均寿命は60あるかないか・・・もう10年しか一緒にいられないかもしれないんだぞ?」




「・・・今から戻っても、只の親不孝にしかなれないわ。」




「何言ってんだ。俺の故郷の話だけどさ、子どもは3歳までに一生分の親孝行を済ませているらしい。フィデリアは赤ん坊のころからエルターンさんに育てられてたんだから、もう親孝行はしてんだよ。だから、あとは一緒にいてやれ。それだけで喜ぶと思うから。」




「・・・私なんかと一緒にいたら、挫折して里を抜け出した奴の家族になるわ。」




「それ、絶対気にしてないと思うぞ。エルターンさんのことだし、『何か言いたいなら斬りかかってこい!』なんて言うんじゃないか?」




「ふっ・・・いいそうだわね。」




「今笑うの我慢しただろ!」




「してないわよ!」




「・・・そういうことにしてあげる。」




「なんか私が前あんたに言った言葉まねされたんだけど。」




「いいだろ、別に。」




「ま、まぁいいわ。・・・ねぇ、レオ。」




「どうした?」




「少し、私の話を聞いてくれる?」




「いいよ。」




すると、扉にもたれかかったような音がした


フィデリアが扉にもたれかかったのだろう


レオも扉にもたれかかった




「・・・私は、物心ついたころから、剣を握っていた。お父さんにあこがれてね。」




「すげぇな。」




「10歳で上級剣士になれて、みんな褒めてくれた。お父さんも、喜んでた。・・・でも、12になったころ、ヘルミーネが来てから私はお父さんとぎすぎすし始めた。」




レオは黙って聞いている




「ヘルミーネはわずか一年で王級になった。それからお父さんはヘルミーネばかり相手をするようになった。私はそれが嫌でヘルミーネに当たり散らした。」




「通常運転じゃなくて?」




「いつも当たっているわけじゃないわよ!・・・あの頃の私は剣を認められることで=お父さんの愛を受けられると思っていた。だから、ヘルミーネばかりかまうようになったお父さんを見て、私はもう愛されてないんだと思った。・・・今になって考えれば、たまに相手をしていてくれたし、一番うまいやつの相手するのは何も悪くないことなのにね。」




フィデリアは自嘲気味に笑った




「それで、お父さんに反抗して、喧嘩して、家を出た。閃辰流も使わないようにした。・・・お父さんを思い出して、悲しくなりたくなかったから。」




部屋の中でフィデリアがうずくまると同時にヒグラシが再び鳴き始めた




「もっと、もっと早く愛に気づいていれば、こんなに長く喧嘩が続くことはなかったのに、私、馬鹿だわ・・・。」




「今からでも遅くないよ。てか、叔父さんなのにお父さんって言ってくれてるだけでもエルターンさんは喜んでくれるだろうし、何よりお前はファザコンだ。」




「ファザコンじゃないわ!」




「12にもなってお父さんかまってくれない!はファザコンだろ。普通、きもい、死ね!とか言ってる歳だし。」




「う、うるさい!」




「ほら、行くぞ。」




「・・・少し待って。」




それから2分ほど待つと目をはらしたフィデリアが出てきた




「お前の部にいる蚊は目の周りを刺すやつしかいないみたいだな。」




「それ、馬鹿にしてるわよね?」




フィデリアがレオの尻を蹴る




「痛いっ!」




レオがうずくまっているとフィデリアがこういった




「早く、帰るわよ。・・・そうだ、あんたの親、私があったらぶっ飛ばしといてあげる。」




「ははは!・・・そうだな。頼んだよ。」




なぜか涙が出てしまったレオは目をこすった


そして、レオはフィデリアとともに宿を出た

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