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15 ようやく気付いた彼女の気持ち

15話です!

リリーさんの渾身の一撃が放たれ、ミルヒヴァイスが押される


ミルヒヴァイスは押しつぶされることはなかったものの、頭から出血している




「ま、さ、か、この程度の人間に傷を負わされるとは・・・。」




ミルヒヴァイスは氷のハンマーを腕で受け止めているがその腕は折れかけている




「これが愛の力です。・・・あなたは私の愛の力に負けているのです。」




リリーさんがさらに力を強める


しかし




氷の義手がどんどん赤に染まっていく


当たり前だ




即席で作った義手だ


傷口を凍らせているとはいえ、完全に止血はできていない




しかも、腕を失っただけでも激痛なのに、傷口を凍らせているということは、想像を絶する痛みがリリーさんを襲っているはずだ




リリーさんは相変わらず怒りを含んだ険しい表情でミルヒヴァイスを見ているが、険しい表情なのは痛みを必死にこらえているからかもしれない




「もう、限界なんじゃない?」




ミルヒヴァイスが氷の義手の限界を悟った




義手はぴしぴしと音を立てながらひびが入っている




「まだ、ですっ!まだ・・・・。」




パキィィン




更にリリーさんが力を込めた時、義手がバラバラに壊れた




「終わりだね。」




「私が、レオさんを、守らな・・・。」




ミルヒヴァイスの容赦ないこぶしがリリーさんの腹に一撃を入れる




「がはっ。」




リリーさんは吹き飛ばされ、吐血した




「リリーさん!」




「レオ、さ・・にげ・・。」




リリーさんが意識を失う


フィデリアも戦闘不能




この世界に来て初めて、死を直感した




* * *




そのころ、ロゼとアーサーの戦いは決着を迎えようとしていた




「あああああああああああ!」




ロゼがすさまじいスピードで大剣をアーサーへ向ける


しかし、アーサーは余裕の表情でそれを魔法で防ぐ




そして無詠唱で幾多もの炎の矢を生成、ロゼに向けて一斉射撃を行った




ロゼは交わしきることができず全身にやけどを負う


対するアーサーは無傷




ロゼは魔族のため、すぐに回復するが、それでも、両者の実力差は明確だった




「ぐっ・・・お前、なめやがって・・・。」




ロゼが悔しそうに唇をかむ


アーサーはまだ、上級魔法までしか使っていない


だが、その発動速度と量、質は王級魔法に匹敵する




しかも、追尾機能式だ




「君を倒すにはこの程度で十分だ。それに、あまり強い魔法を使うと、町に被害が出るし・・。」




ロゼは今すぐ壁に頭を打ち付けなければ抑えきれないほどの怒りに襲われた


だが、それと同時にあることを思い出した




上司から言われたことだ




『人間の中にも強力な個体がいる。彼らは八大神煌と呼ばれている。会敵したときは逃げるように。』




強い人間・・・こいつ、まさか




「お前、まさか、八大神煌か?」




するとアーサーは少し驚いた表情をした後にこう言った




「まさか、魔界にもその名が伝わっているとはね。いかにも、俺が八大神煌が一人、"炎神"アーサー・ブランドだ。」




ロゼは戦慄した


もう、こいつには勝てない




ロゼは魔人族の一人とはいえ、強いわけではない


せいぜい、王級中位程度




それでも、研鑽を重ね、強くなった気でいた


だが、目の前の男と戦い、どれだけ自分が無力であったか思い知らされた




プライドが高いロゼにはそれは許せないことだった


ここで負けては今までの自分が無意味だったことになる




相手は強い


だが、しょせんは魔術師だ


距離を一瞬で詰めれば勝てる




そう確信したロゼはこの一撃にすべてを込めると決めた




「死ねぇぇ!」




ロゼがアーサーに一瞬で距離を詰める


今までで一番早い動きでアーサーの懐に入り込んだ




(勝った!)




ロゼが剣を振るう


しかし、ロゼは剣がアーサーに届く前に左肩から大きく切り裂かれていた




「は?」




ロゼが倒れこみながらアーサーを見ると、アーサーは炎の剣を持っていた




「なん、で?」




「これでも一応、帝級剣士の称号も持っていてね。魔力切れになった時に負けたらいけないし、初速が速い剣士がいたら死んじゃうからね。」




(ふざけるな)




ロゼはもう、何もかもどうでもよくなった


自身の最高の一撃を無傷でかわされ、本当の天才に殺される




屈辱でしかない


だから、ロゼは自身が所持している固有魔法を発動した




「サモン・マジカル・ビースト」




この固有魔法は実戦で役に立たない


自身や仲間を巻き込むため、使わないようにしていたのだ




だが、どうせ自分は死ぬ


ならば、派手にやってやろうではないか




「何を?・・・・。」




そのとき、空から無数の魔獣が召喚され、町に降り立った




「まさか、人間界と魔界を強制的につなげ、魔獣を召喚する魔法!?」




アーサーが驚いているとロゼが笑った




「あははは!どうせ死ぬんだ。私は!・・・フフッ・・アーサーとか言ったか?火魔法は火力が高い分、町を守るのには適していないだろう?この数の魔獣を倒すには特級魔法以上を使わなければいけないのではないか?・・・貴様の追尾術式があろうとも、火魔法である限り、燃え移る。どうやって解決するか見ものだ。はははは!」




ロゼは高揚しているのか早口で話しまくった




アーサーはロゼにとどめを刺そうとする




「・・・私が死んでもすでに魔獣は召喚されている。」




「わかっているさ。」




アーサーはロゼにとどめを刺した




「・・・しかし、困ったな・・・こういう時にシェリルがいてくれれば・・・。」




「呼んだ?」




「ああ、ちょうどいいところにって・・・えっ!シェリル!?」




アーサーは信じられないものを見る目でシェリルを見ている




「うん。私はシェリルだよ。12年も一緒にいて、忘れたとか言わないでよ。」




「忘れてないけれど、シェリル、起きれたんだ・・・・。」




するとシェリルはぷくっと頬を膨らませながら言った




「魔獣が来て眠れなくなったんだもん。・・・それに、ちゃんと起きたらアーサーがほめてくれると思ったから・・・。」




シェリルはよそをむき、髪をいじりながらそう言った




(なるほどね)




アーサーはシェリルの頭を優しくなでた




「・・・ほめて。」




「ちゃんと起きれて偉いね。シェリル。」




「子ども扱いしないで・・・。」




そう言いながらもシェリルはわかりやすく照れている




昔から、シェリルは頭を撫でられながら褒められるのが好きだった


だから、アーサーはシェリルが頑張ったらいつもこうしているのだ




「シェリル、お願い聞いてもらってもいい?」




「・・・それ聞いたら、アーサー、明日の夜、一緒に寝てくれる?」




「うん。」




「じゃ、私、頑張る。」




シェリルは珍しくやる気を出した




* * *




同時刻、レオは一人で戦い続けていた




しかし、どんどん押されていく




(いっそ、リリーの言うとおりに逃げてしまおうか)




そんな最低な考えが頭をよぎる


レオだって、まだ16歳の子供だ




痛いのだって苦しいのだっていやに決まっている




(そもそも、俺はこの町に来て2週間もたってない)




この町がどうなってもいいわけではない


だけど、必死で逃げるための言い訳を探している




(それに、どうせいつか俺を見捨てる)




レオは思い出さないよう努めていた前世の記憶を思い出す


前世に未練などない


彼女ができなかったことも、今の生活を考えればどうでもよくなってきている




みんな、前世では俺を見捨てた


先生も、親友も、親でさえも




なら、俺だってこの人たちを見捨てても罰は当たらないよな?




その時




「レ、オ、さん、ごめんな、さ・・・。」




意識がないはずのリリーがそうつぶやいた


自分の方が痛くて、死にそうなのに、いまだに俺のことを気にかけている




(嘘だ)




“あの時”をきっかけに前世で見捨てられて行ったレオは人を真の意味で信頼することができなくなっていた




だから、人と深くかかわらなければいい


リリーさんやロージさんが魅了してくるならばそれに応じる




だけど、一線は越えない


裏切られた時が怖いから




(嘘に決まっている)




必死に今までの日常を思い出した


リリーさんが裏切るそぶりを見せているときがなかったか探すために




しかし




「・・・ないのかよ・・・。」




思い出すのはリリーさんの優しさだけ




無一文の俺を住まわせてくれている


俺が、ほかの女性に照れていたら不機嫌になるけど、それでも俺を一番に考えている


そして、今も命を懸けて、俺を守ろうとしてくれた




なぜ、そこまでするのか分かっている


だけど、“あの時”は、その感情を“あの子”が俺に向けていると勘違いしたことで始まった


だから、あんなにリリーさんはわかりやすかったのに、気づこうとしなかった




でも、今の状況を見て、それが偽りでないことに気づいた




(リリーさんは俺のことを好きになってくれたんだ)




そう思うと涙が出てきた


人生で初めて俺を本当に愛してくれた人




その人を、リリーさんを守りたい


彼女が命を懸けたなら、俺もかけなければ




レオの瞳が黒から黄色に変わった




「何?・・・そろそろ死んで・・。」




ミルヒヴァイスが無数の糸をレオに放つ




すると、レオがすべての糸を回避し、ミルヒヴァイスに反応できないほどの速さで接近し、ミルヒヴァイスに剣撃を入れた




「なっ!?」




「賭けは成功したみたいだ。」




そう言ったレオは鼻血を出しながら不敵に笑った



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