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コンテニューゲーム  作者: 南江 行瀬
第一章

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6/7

6 崩壊


どういう事だ?分からない。何がどうしてこうなったんだ?

俺がしたのは坂田を見捨てた事だけ。他は何もやっていない。なのになんでこうも変わる?


「おはよーカイセイ。上手くできた?」

「…ッ!理生、音もなく来るなよ……」

「クセなんだ。気にしないで」


中学生の格好をしたリオが、いつの間にか部屋にいる。飾ってある賞状や写真を眺めながら、俺に問いかける。


「どう?他人を見捨てた気分は」

「それは……」

「あ!そうか、記憶を渡してないから分かんないよね!」


忘れてた……。俺の知らない記憶の付与があるんだった。今回は7年近くの記憶だ。どれ程の量の記憶が渡されるんだ……?


「前より苦しいかもだけど、頑張ってね」


俺が言葉を発する間もなく、記憶が流れ込んでくる。殴られた痛みでは済まない。無理やり脳を弄られているような不快感と激痛。そんな酷い痛みに耐えられるはずもなく、俺はベッドに倒れ込んだ。


「人間の脳って、限界がないんだって」


情報を処理しようと脳がフル活動しているのが分かる。それは痛みとして現れ、今まで感じたことのない声が出せないほどの痛みだ。


「少し──なっ──んだ。人間は──と精──、どっちが──れ──のか」


リオが何か言っている。でも上手く聞き取れない。痛い痛い痛い痛い……!

知らない記憶。覚えのない記憶。俺じゃないような記憶。何もかも新しい記憶だ。もう限界だ。これ以上は無理だ。

そう思った瞬間、プツリと糸が切れた音がした。



***



「ありゃ、気絶しちゃった」


まあ無理もないか。かなり濃い数年間の記憶を一気に流したんだもん。並の人間が耐えられるわけないか。

それより、上手く記憶が入り込むように、カイセイを深い所まで落としておこう。学校を休まれちゃ、面白いものが見れないから、遅刻しないギリギリまでね。


「入れた記憶は寝てる間に刷り込まれるはずだし、起きた時の反応が楽しみだなぁ」


眉を顰めて眠るカイセイ。根っこは優しい人間なのに、どこか自分勝手なところもある。人間は面白い。目に見える性格が全てじゃない。


「ぅ……」

「あ、起きた?おはよー」

「ッ……、頭痛い……」

「そーだよね。でも準備しないと遅刻するよ?」


深い眠りから覚めたカイセイは、少しフラつきながらも学校へ行く準備をする。そんな中でも片手間にスマホを弄っている。

ちょっと覗いてみれば、数人のグループチャット。この世界線での友達だろう。


準備を終えて家を出ていくカイセイ。ボクも一応中学生ってことになってるから、形だけの登校をする。家から離れれば、ボクは中学生の理生じゃなくなる。

くるりと宙返りをすれば、姿が変わる。


「やっぱり観察には蝶が便利だよね」


青空に溶け込むような羽を羽ばたかせて、カイセイの学校まで飛んでいく。

今回のやり直しで、カイセイはかなり変わったと思う。前はいじめられっ子だったけど、今は悪友と呼ばれる人達とつるんでいる。


「いいなぁ、これだから観察は辞められない……」


一度他人を見捨てたことで、今は少し荒れた青春を送ってる。カイセイ自身がどう思ってるかは知らないけど、これもまた人生ってやつ?

まあでも、優しさはどっかいっちゃったみたいだけどね。


「あ、なんか面白いこと起きそう!」


カイセイがいるのは階段の踊り場。そこでは一人を取り囲むようにして数人が立ってる。カイセイは少し離れたところでスマホを弄ってるみたい。

ここからじゃ分かんないし、カイセイのところに行こう。



***



この世界の俺は、少し荒れてるグループにいる。喧嘩をしてる訳ではないし、犯罪もしていない。ちょっとだけ不真面目なグループだ。ここに居れば、ある程度は安全だ。

今はなんか、同じグループの奴らが誰かを囲んでる。何をしてるかは知らない。俺はただ、誰か来ないか見張るように言われてるだけだ。


「(まあ、息はしやすい気がする)」


前の現実は苦しかった。皆が敵だった。味方は誰もいなかった。でも今はこいつらが居る。味方って訳でもないけど、敵でもない。


「……、ねえ、先生来てる」

「お、マジ?んじゃ行こーぜ」


遠くに見えた先生の影の存在を伝えれば、グループはそそくさとこの場を去る。俺もそれに便乗して去る。踊り場に残るのは蹲っている一人の男子生徒。一瞬、小学生の頃のクラスメイトと重なった。


「(なにしてたんだろ)」


気になるけど聞かない。関わらなくていいなら関わらないでいたい。無駄なことに足を突っ込みたくない。


「(早く帰ってゲームしたい……)」


元の現実でもゲームは好きだった。その時はのんびりとしたRPGをよくやっていた。

でも今好きなゲームはアクションゲーム。NPCや他のプレイヤーと戦ってランクを上げていくやつ。普通に戦っても勝てないから、俺はよくリセットして低ランクで遊んでる。

そうすれば全部がイージーモード。武器の特性も全部分かってるから、簡単に勝てる。


「(…………リセットか……)」


リオはやり直しと言っていた。でも、その制約とかは聞いてない。俺の人生は、どこまで遡ってやり直しができるんだろうか。

ふと窓の外を見れば、不気味なほど綺麗な一匹の蝶が、ひらひらと舞っていた。




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