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【92】心配性な人


 シャルテに謝って急いでて店を出た私は、店の裏手に走った。走ったっていってもすぐだけど、めちゃくちゃ焦った。裏手っていっても何処!? キョロキョロと当たりを見回すけど、クロードさんは見つけられずますます焦った。どうしようかと思っていたら、急に腕を捕まれて家と家との間の路地に引き込まれた。


「ひゃっ!」

「アリス、大丈夫だから大声出さないで」


 クルッと立ち位置を逆転させられ、ふわっとマントに包まれ正面から抱きしめられた。うぇ!? ちょっ! どういう状況!?


「急にすまない、昨日の事をリュカから聞いたよ。怪我は無い?」

「は、はい。怪我、してません……」

「そうか、良かった」


 あからさまにホッとされたのだけど、あの……、頭に顎が乗って……。体制的に顔も上げられず固まってしまう。本当にどうして!? 何で私クロードさんの腕の中なの!?


「あ、あの……、ち、近い、ですよ……?」


 私ご指摘すると、少しあわてながら背筋を伸ばしてくれた。頭への重みは無くなったけど、依然としてくっついたままだ。


「あぁ、すまない。これは意識阻害の効果のあるマントなんだ。このマントを着ていると、他の人に認識されにくくなるから。少しだけ中に入っててくれ」

「は、はぁ……」


 認識されにくくなると聞いて、なんとなく不思議だったのが分かった。お店でもこの路地でもクロードさんを見つけられなかったはずだ。そんな便利なものあるんだ。と、この世界が魔法の世界だったことを思い出す。なにそれ、私も欲しい……。


「仕事を抜け出してきてるし、私の立場上あまり女性と2人だけで会うのはよくなくてね。でもどうしても伝えなければならない事があって。アリスには悪いけど、少しだけだから我慢して欲しい」

「は、はい……」


 我慢して欲しいとか、もうわかんない! 見つかるのがマズイ状況なのは理解したけど、私の精神衛生上とてもよろしくない! 悪いと思うならもう少しだけでもいいから離れてくれないかな!? 密着と言うほどでは無いにしても、このドキドキが聞こえるんじゃないかってくらいくっついてるし! 


「昨日の件だけど……、アリス? 聞いてる?」

「はいっ! 聞いてます!」


 だから真上でささやかないで!! 聞こえてるけど中身入ってこないから!


「声も少し落としてくれると助かる」

「は、はい……」


 うぅー、恥ずかしすぎる……。


「昨日ギルドからの報告で、うちの部隊も調査を行ったのだけど、特に強い魔物の気配も無く、偶然沸いて出たという、どうしようもない結果となった。警戒期間と言うことで、一週間ほど見回りをすることになったんだけど」


 普段出るはずの無いちょっと強い魔物が出たわけだから、原因を調べるために魔物討伐部隊に要請があったのだと言う。でも辺りを探索してもウルフは出ず、それ以上もそれ以下も通常通り。何も変化は見られなかったんだって。クロードさんはどうしようもない結果と言うけど、まぁ仕方ないよね。何でウルフが出たのかは分からないけど、突出して変化も無ければどうすることも出来ない。被害が出て確実な証拠が無ければどうすることも出来ないのは、元の世界でもあることだし。


「それでなんだが。リゲルは昨日も一緒だったかい?」

「はい、昨日も一緒でしたよ?」


 というか、リゲルはずっと私といる。家にいる時は離れることもあるけど、基本的にずっと一緒だった。


「では、その耳飾りから出た?」

「あ、はい。薬草を探してもらうのに、外に出てましたね」

「あぁ、やはり……」

「え? ダメでした? もしかして、見つかったりしてます!?」


 リゲルが外に出たのを誰かに見られたのだろうかと、ゾッとした。


「ど、どうしましょう! 見つかったんですか? バレちゃいました!?」


 リゲルの契約者が私だとバレたら、研究機関が出てきて、拉致されて、監禁されて、実験されて、もう外に出れなくてっ! 一気に嫌な想像が頭の中に駆け巡ってプチパニックになった。ギュッと包み込まれているマントを握りしめて縋るようにクロードさんを見上げた。


「アリス、落ち着いて。大丈夫だから、誰にも見つかってないしバレてもいない」


 安心させるように少しだけ強めに抱きしめられ、背中をポンポンされた。見つかってない。バレていない。そう聞こえて力が抜けてクロードさんに寄りかかる。良かった。バレてなかった。


「以前、魔物が精霊を食べると話していたのを覚えているかい?」

「はい……」

「たぶんリゲルが外に出た事で、魔力を嗅ぎつけたウルフがあの場に現れた。とフィーが言っていてね」

「え、じゃあ……」


 あの惨事は自業自得って事!? 巻き込んじゃったジャンくんに申し訳ないわ!

 安心して落ち着いていた気持ちが、今度は自己嫌悪になり居たたまれなくなる。で、自分の状況に気づく。

 何しちゃってんの私! クロードさんにくっついてるし!! ってか、もうそんなに抱きしめなくてもいいし! ポンポンとか、もう平気だから!!

 浮き沈みが激しく、とんでもない状況に頭が沸きそうだった。そんな私の状況を知らないクロードさんがお構い無しに話を続ける。


「耳飾りに入っている時は、それほど魔力も漏れないそうなんだが、制御を知らないリゲルが外に出ると、魔物が寄ってくると。今日はそれを伝えに来たんだよ」

「リ、リゲルったら、魔物ホイホイになって、る?」

「ホイホイってアリス……。それでフィーに頼まれてリゲルを迎えに来たんだ」


 努めて明るく振る舞って、動揺を隠そうとしたら、今度はリゲル君のお迎えですって! これって前にもあったやつだよね? 肝心のフィーは、調べものがあるとかで今日は別行動なんだとか。精霊に頼まれてお使いしに来るお貴族さま。いいのかな……。まぁ、どっちがきてもいいのかな? な状況だけどね……。


『ボクまたアリスと離れるの?』


 会話を聞いていたリゲルがふわっと外に出て来て、不安そうに揺らいだ。


「少しだけだよ。リゲルは知らない事が多いから、フィーに色々と教えてもらわなければならないんだよ。ちゃんと制御を覚えたら、またアリスと一緒にいられるから」


 クロードさんは、そっと片手をリゲルに向けて「おいで」と優しくささやいた。


『アリスが襲われたんじゃなくて、ボクが襲われてたの?』

「リゲル……」


 小さい子の様で、何気にしっかりしたリゲルはちゃんと話から状況を理解していた。


『このままじゃアリスに迷惑かけちゃうの?』

「大丈夫だよ、リゲルはちゃんと出来る。フィーもリゲルは覚えが早いって言っていたよ」


 リゲルを安心させようとゆっくりと穏やかな声でクロードさんは話してくれた。リゲルは一生懸命考えているみたいで少しフワフワと揺れていたけど、ピタッと動きを止めるとスッとクロードさんの手のひらに乗った。


『……わかった。ボクフィーんとこ行ってくる』


読んで頂きありがとうございます。

なんとか更新できました。


クロードさん出てくると、話が甘めになってちょっと楽しいです(*´艸`*)


重なる時は色々と重なるものですね…。

今度は学校が休校になりました(*T^T)

当分不定期になりますが、フラッと立ち寄ってもらえると嬉しいです(。>д<)


ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ

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