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【93】意外な一面


 芯のある声でリゲルがはっきりと答えると、クロードさんが感心したように微笑んだ。

 そんなリゲルを見て、寂しい反面なんだか嬉しかった。リゲルも前に進もうとしてくれてるんだね。

 成長しようとしてるリゲルをしっかり送り出してあげなくちゃ。そして、この状況から、は、早く脱出しなければ!

 少しだけクロードさんの体を押そうとして詰まる。ちょっと抵抗された? なかなか押されてくれなかったんだけど……。

 なんとか自分とクロードさんとの間に空間を作ることに成功した私は、緊張して少しだけ手間取ったけど、頑張って耳からピアスを外して、前回同様ギュッと魔力を込めた。そして、リゲルの乗ったクロードさんの手のひらにピアスをそっと置いた。


「リゲルをよろしくお願いします」

「あぁ、しっかりと面倒を見るから安心してくれ」

「リゲルも頑張ってね、私待ってるからね」

『うん、ボクアリスと一緒にいられるように頑張るね!』


 リゲルがヒュッとピアスに戻っていった。しんみりした空気の中、未だクロードさんの片手が私の背にあるを思いだし、どうしようかと視線が泳いでしまう。は、離れ過ぎるとダメなんだよね、でも、近いんだよーっ!


「どれだけ期間が掛かるかは分からないが、なるべく早くに帰せる様にフィーにも伝えておくよ」

「あ、ありがとうございます」

「事前に教えてあげられたら良かったのだけど、気がつかなくてすまなかった。怖い思いをしただろう?」

「クロードさんが悪いわけじゃ絶対に無いで気にしないでください。そりゃ、ちょっと怖かったですけど……。私も思いもしなかったし、気がつきもしなかったから、自分が悪いんです。むしろこれからのことを思うと、クロードさんとフィーには本当に感謝しか無いです、よ? クロードさんも忙しいのに、いつも気にかけてくれてありがとうございます」

「…………」


 少し困った様な顔をしてクロードさんが黙ってしまった。あれ? 何か言葉選び間違ったかな? こ、子犬が顔を出した……。


「クロードさん?」

「アリス、遠慮入らないよっていつも言ってるだろう? 謙虚なのもいいけど、少しは頼ってくれると男と……、友人としては嬉しいんだが……」

「そ、それこそ、真に受けたら、ダメなヤツですよね!? か、感謝はちゃんと受け取ってください! で、出来ればお礼もさせてください!」

「そんなの要らないのに……」


 なんか今ちょっと友人っていう前になんて言った!? 聞き間違えかな!? この場合、頼らないと失礼に当たるとか、そういう常識があるのかな!? しかも、何その駄々だ子みたいな拗ね方!


「何でもない。気にしないで。あぁ、そろそろ戻らないとマズイな……」


 気にしないでとか言われても気になる。めっちゃ気になるよ! なんか、クロードさんの口調が少し砕けているような……。マズイなと言いながら、手が離れない。まだ何か話があるのかな? と思ってクロードさんを見上げると、困った顔はそのままに一息ついて体が少し離れた。


「終わりが見えてきたら、今度は先に連絡をする」

「分かりました。待ってます」


 離れた距離にホッとして普通に返事が出来た。さて、と路地を出ようとしたところで『あ!』とリゲルが声を出したと思ったら、ひょいっと薬草の詰まった籠とリゲルが、一緒にピアスから飛び出してきた。


『アリス、これいる?』

「あ、そうだね。ありがとう。そうだリゲル、昨日作ったポーションも出してもらえる?」

『はいどうぞー』

「ありがとう」

『じゃね! すぐだから! すぐ帰ってくるからね!』

「ふふ、分かってる、行ってらっしゃい」


 籠とポーションを受け取り、可愛いリゲルに笑ってバイバイと小さく手を振ってお別れすると、リゲルはまたピアスに戻っていった。


「はい、クロードさん。お礼にもならないかもしれないけど、私が作ったポーションです。貰ってくださいね」


 半ば強引にクロードさんにポーションを押し付けた。今私に出来るお礼はこれくらいしかない。


「あ、アリス……」

「なんですか? あ、大丈夫ですよ、作り方はちゃんとフレデリクさんな習いましたから!」


 呼ばれて見上げれば、クロードさんが物凄く驚いていた。目がこれでもかってくらい見開かれている。


「い、今のは?」

「え? 何がです?」


 いきなりガシッと籠とポーションを持った手を両方捕まれた。


「きゃっ!」

「どこから出て!? あっすまない! いや、ちょっと、え? ポーション? それはっ! あ゛あ゛っ、クソ!」


 えぇ!? クロードさんクソって言いました!? そっちの方が驚きなんですけど!!

 慌てて手を離してくれたけど、捕まれた驚きより言葉遣いが乱れた事の方がもっと驚いた。しかも、いつもなら冷静に話すのに、髪の毛とか掻きむしっちゃってあ゛ーとか言ってるし! いつものクロードさんどこ行った!?


「色々と話しておきたいが時間が無い! とりあえず次に会った時に話すから、それまでその籠がどこから出てくるとか、そういう話は絶対に誰にもしないように!!」

「は、はいっ! 分かりました! 絶対に話しません!」


 クロードさんの変わり様に、背筋を伸ばして約束した。なんかヤバいやつだったんだ。秘密案件がまた増えてしまったんだ。


「それと、いつポーション作れるようになったんだ!? いや、そうだな、習ったのだな。アリスだからな。まさか、店に出しては!?」

「いえ、まだ練習中なので、お店には出してません! リュカには効果を試して欲しくて何本か渡しましたけど……」

「リュカにか! ま、まぁ渡ったのがあいつで良かったか……、戻ったらすぐに……」


 乱れた口調でぶつぶつと何か呟いてから、ぐっと堪えるように私を見てきた。不安になってぎゅっと手を握りしめて私もクロードさんを見た。


「ダメでしたか? ポーションは要らなかったですか?」

「いや、ダメと言うことではないし、要らないなんて事はない、とても助かるよ、ありがとう。大切に使わせて貰うよ」

「良かった」

「なるべく早くに連絡する、何かあったらリュカに伝言を……」


 何か言いたそうだけど、時間が無くて戻らなくちゃいけないクロードさんは、大きく大きく深呼吸をしてからマントのフードを深くかぶりなおした。


「では、くれぐれも気を付けて」

「はい! 大丈夫です! 誓って話しません! 連絡を待ちます!! 何かあったらリュカに言います!」

「よろしい。では」


 よろしいとか言っちゃって、取り繕った感じで少し可笑しかったけど、意識阻害のマントのせいでその表情は残念ながら見れなかった。

 ぼんやりとした後ろ姿になっちゃって変な感じだったけど、先に路地を出ていくクロードさんを見送った。

 見送って、見送ってクロードさんが見えなくなってから私は、怒濤の展開にどっと疲れが出て壁にもたれかかった。


「クロードさん、めっちゃ崩れてた……。なんか以外……」


 以外だけど、すごくイイ……。ギャップ萌えってやつ? 

 紳士なクロードさんと、子犬みたいなクロードさん。それに今日はちょっとワイルドなクロードさんも見れた。

 どんだけバリエーションがあるんだろう。そして、彼の素はちょっと口の悪かったワイルド系なのだろうかと、その姿を思い出して私は両手で顔を覆った。


「はぁぁぁぁぁ、めっちゃドキドキしたぁ……。最後のクロードさんはダメだわ。全部持ってかれるヤツだよ……」


 みっともないとは思いつつも、ずるずると壁づたいに下がって座り込んだ。

 いつまで経っても治まらないドキドキを、深いため息と共に吐き出していると、


「あんた、こんなところで座り込んで何してんの?」


 シャルテが呆れたように私を見下ろしていた。





なんとか一週間で更新できました(汗)

読んで頂きありがとうございます。


クロードさん壊れがちですが、面白いのでたまに壊したいです(笑)


今後も落ち着くまで更新がんばります!

ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ

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