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【88】報告

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。

今年も作者と作品をよろしくお願いいたします。


 ギルドに向かうと、ヤニックさんたちと抱えられたジャンくんと一緒に入ってきた私に気が付いたミラさんがあわてて駆け寄っててくれた。


「アリスさん!」

「ミラさん」

「どうしたんですか?!」

「採取依頼中に魔物に襲われまして、あ、でも大丈夫です! この方達が助けてくれましたので! ジャンくんも気を失っているだけですから!」

「魔物に?! 怪我は無いようだけど、大丈夫?」

「はい。大丈夫です」


 ミラさんはカウンターから出てきて、ペタペタと私の体を触り無事を確かめる。


「キャハハっ! ミラさんっ、くすぐったいですよっ!」

「あぁ、ごめんなさい! よかった、アリスさんが無事で!」


 ミラさんは本当に心配してくれているようで、会ったのはこれで三度目となるが随分と気に入られているみたいで驚いた。


「出没した魔物の事で報告したいことがある。悪いがギルド長を呼んではくれないか?」

「はい、ジャンくんもその調子では、お部屋に案内した方が良さそうですね」

「そうしてもらえると助かる」


 私とヤニックさんの後ろでロッドさんに抱えられたジャン君を見て、ミラさんが他の職員に声をかけ部屋に案内してくれた。

 応接室みたいなその部屋の窓際に置いてあるソファーに寝かされたジャン君は、まだ起きる気配は無い。


「しばらくこちらでお待ちください」


 そう言って案内してくれた職員さんが扉を閉めて出て行く。私たちもソファーに座り一息ついていると、扉の外が騒がしくなり勢いよく扉が開かれた。


「ヤニック! 魔物が出てけが人が出たと聞いたぞ! 何があった!」


 急に入ってきた人物に、私はびっくりして体を震わせた。見るからに厳つそうな体格の、顔に傷のある男性で威圧感が半端ない。


「ロイさん、お願いだから静かに入ってきてくれませんかね?」


 ヤニックさんは片方の耳を塞いで鬱陶しそうに眉をひそめ、入ってきた男性を非難した。


「ギルド長、気を失っているものもいます。アリスさんとは初対面です。大声を上げないでください」

「あぁ? あぁ悪い」


 後ろから付いてきたミラさんがギルド長と呼ぶロイさんを窘める。素直に謝るところを見ると、顔は怖いけど悪い人ではなさそうだ。私は少しだけ緊張を解いてすっと立ち上がった。


「初めまして、Fランクのアリスと言います」

「驚かせて悪かった。ギルド長のロイだ」


 自己紹介を簡単に済ませ、座るように促されみんなで座ったところでヤニックさんが口を開いた。


「早速で悪いが報告だ。森の入口から南西に少し行ったところでウルフと遭遇したそうだ」

「ウルフだと?! 森の奥まで行かなければ遭遇しない魔物だぞ。そんなところまできてるのか!」

「7匹だ。7匹のウルフがこの子達を追っていた」


 この子達、とヤニックさんが説明すると、クワッと目を見開いたロイさんがこちらを向いた。スパーンっと小気味良い音がしてギルド長さんの隣に座っていたミラさんが、ギルド長さんの頭を叩く。


「顔が怖いですよ」

「あぁ、すまん」


 顔と音に驚いて、ちょっと引く。ギルド長なのに、叩かれてる……。

 叩かれた本人は、さして気にしていない様子で話しの続きを促す。

 順を追って話を進める度に、ギルド長さんがいちいち驚き、私がびっくりして、ミラさんが叩く。を何度か繰り返し報告が終った。

 最後の方はもう、コントでも見てるみたいになってきて、笑いを堪えるのが大変だった。

 あんなに叩かれて、ギルド長さんは大丈夫なんだろうか……。


「あんたも災難だったな。調査のために低ランクは外への依頼が間受けられなくなるが、まぁそんなにかからないと思うが、まぁなんだ、めげんなよ」


 初日の依頼で命の危険に遭遇して、トラウマになって以降外には出なくなってしまう冒険者もいるそうだ。怖かったけど、逃げきる自信はあったのだ。対策が必要なことは分かったので、どうしたら良いかリュカに相談してみよう。


「うぅん……、っ! ウルフは?!」

「ジャンくん!」


 話が終わりになった頃、寝かされていたジャンくんが声をあげガバッと起き上がった。私はあわてて駆け寄りジャンくんを抱き締めた。


「うわぁ!」

「気が付いて良かった!」

「アリス?! ちょっ! なに?!」

「ごめんね! 本当にごめんね! どっか痛くない?! 気分悪くない?!」

「何が?! ちょっとアリス! 落ち着けって!」


 いきなりの抱擁に驚いたジャンくんが、私を押し退け辺りを見回す。


「ココドコ?」


 この部屋に入ったことが無いのか、ジャンくんはキョロキョロと周りを見回して、大人達に気が付くと「あぁ、ギルドか……」とようやく落ち着いて身体の力を抜いたのが分かった。


「ジャン、大丈夫か?」

「ギルド長……。大丈夫です」

「お前も助かって良かったな。助けてくれたのはヤ二ック達だ。お礼言っとけよ」

「はい……」


 ソファーから降りたジャンくんは、ヤニックさん達の前に生き、すっと頭を下げた。


「助けてくれてありがとうございました!」

「うおぉ、 元気いーな。これからも頑張れよ」

「はい!」


 さっきはコントで、今度は体育会系の部活みたい。一人でそんなことを思っていたら、ジャンくんが戻ってきて私にも頭を下げた。


「へ? え?」

「アリスも、ありがとう。オレ、死ぬかと思った」


 頭を下げたままのジャンくん。ぎゅっと握られた拳が、少しだけ震えていた。私はその拳をそっと解いてジャンくんの手を握る。


「お礼なんて……、私の方こそありがとう。ジャンくんが気が付いてくれたから逃げられたんだよ、私一人だったら絶対気付けなかった」


 もしかしたら、リゲルが気付いてくれたかもしれないけど、一人じゃ怖くてきっと無理だった。ジャンくんがいたから全力で逃げようってすぐに思えた。そう思ってぎゅっと手に力を込めれば、ジャンくんは顔を上げて少しだけど笑ってくれた。


「お互い助かって良かったね」

「あぁ、よかった」


 そんな私たちの様子を大人達は微笑みながら見守ってくれていた。とんだ初依頼だったけど、反省を胸にこれからも頑張ろうと思うのだった。




 ジャンくんも目覚めたことだし、報告も終った事で、早速調査依頼を頼まれたヤニックさん達と部屋で別れ、ミラさんに励まされながらジャンくんともギルド前で別れ、私はとぼとぼと歩きながら、ふとピアスを触り「はぁ」とため息をついた。


 薬草どうしよう……。


 結局、みんなのいる前じゃ出すわけにもいかず、そのままお持ち帰りな訳で……。そんな状況じゃ、帰って作業部屋で調合も出来ないし。結果的に次のお休みまで保留になるのか。とちょっと落ち込んだ。ちなみに、ジャンくんはしっかりお持ち帰りしていたみたいで、帰りにちゃんと報酬を頂いていた。あんな状況でも冷静に持ち帰るなんて、さすが先輩。


 いや待てよ。もしかしたら……。


 帰り道、私はフレデリクさんとのポーション作りを思い出しながら、あーでのもないこーでもないと一人で頭を捻っていた。考えなから歩いていたら、突然ドンっと衝撃が来て転びそうになった。


「うわぁ!」

「きゃっ!」


 身体強化かけっぱなしだったこともあり、衝撃だけで全然痛みは来なかったけど、ぶつかった相手は違ったらしい。目の前で転んでいたのはなんとシャルテだった。



読んでいただきありたとうございます。


短い冬休みも終わり、日常が戻ってきました。


今日から更新再開です。また週2回更新していくつもりです。


これからもよろしくお願いします。




ではまたぁ~(o゜▽゜)o

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