【87】上級冒険者とピアス
「あなた、森の中なのに相当頑張ったのね。光を上げたのも良かったわ。あれが無ければ助けにこれなかったもの」
門までの道すがら、お姉さんに褒められてしまった。巻き込んだ側としては、とても素直に喜べない状況なんだけど……。
「それは、目くらましになればと思って。でも、本当にありがとうございました。おかげで助かりました」
「小さい子まで背負って、本当に偉かったわね。冒険者は全てが自己責任だけど、助け合いも大切なのよ。特にランクの低い冒険者を手助けするのも高ランク者の勤めね。だからお礼は一度で十分よ」
そう言いながら、お姉さんはウインクまでしてみせてくれた。なんて男前なお姉さんなのだろうか! 惚れてしまいそうだよ!
「私はエレノア。こっちがヤニックで、そっちの大男がロッドよ。私たち3人でパーティーを組んでるの」
お姉さんはエレノアさんと言うらしい。赤髪の男性がヤニックさんで、ジャンくんを抱えているのがロッドさん。
「私はアリスです。そっちの男の子はジャンくんです。今日森で会ったばかりなんですが、一緒に薬草採取していました」
「なんだ、一緒のパーティーじゃないんだ」
「はい、たまたま会って、依頼が被ってたので、一緒に行動してたんです」
「そしたら、たまたまウルフに遭遇したと」
「あー、はい……」
ヤニックさんに事実を言われ少し落ち込む。たまたまウルフに遭遇って、どんだけ運がないんだか……。
「落ち込むことはない。たまにある」
「あるんですか?」
ロッドさんがフォローしてくれる。
「ああ、予想していない事が起きることは多々ある」
「そうですか」
「そこで命を落とすやつもいる。だからアリスとジャンは運が良い」
「どこがですか?」
あまりここら辺では見ない魔物に襲われて、どこが運が良いと言うのだろうか。不思議に聞くと、大真面目な顔をしてロッドさんが
「オレ達が見つけた」
そう言ったのだ。本人はいたって真面目に答えているのだろうけど、凄い解釈の仕方だと思った。思ったけど、確かにそれも一理あるなと、この3人を見ていたらそう思えてきた。
「本当ですね」
少し笑って同意すれば、ロッドさんはうんうんと頷き満足げな顔をしていた。
あのまま逃げきれたとしても、街に連れていってしまったら、もっと大変なことになっていたかもしれない。結果的に、追われはしたけど怪我はないし助けて貰えたし、被害は出ていなかった。
「ああ、やっぱり嬢ちゃんだったか! 心配してたんだ!」
街の門まであと少しのところで、中からさっきの警備のおじさんが出てきた。
あ、〖お嬢ちゃん〗から〖嬢ちゃん〗に変わってる。やっぱり気にしてたんだ。
おじさんは心配そうに駆け寄りロッドさんに抱えられているジャンくんに気が付いて、険しい顔になった。
「ん? ジャンか?! どうしたんだ! やられたのか?!」
「いや、気を失っているだけだ。怪我は無いみたいだ」
「はぁー、そうか。そりゃよかった。あんたらもありがとな」
ヤニックさんの言葉にほっと胸を撫で下ろすおじさん。ジャンくんとは知り合いだったようだ。
「しかし、何だったんだ?」
「ウルフが出たんだ」
「ウルフだって?! 嬢ちゃんやジャンが行く場所に、ウルフなんて滅多に出ないはずだ。それにまだ増える時期でもねえし」
ウルフと聞いたおじさんは、眉間にシワを寄せて考え込んでいた。
「そうなのよ、だからちょっとギルドにも報告しに行ってくるわ」
「あぁ、そうしてくれ。俺はここから出ていく奴らに注意するように伝えておく。それで、遭遇した場所は?」
エレノアさんと私を交互に見ながらおじさんが聞いてきた。エレノアさんは私に目配せをして頷く。私も頷きおじさんに向き直って説明を始めた。
「おじさんに確認した方角から森に入って、左に行った奥の薬草がたくさんある場所です。採取に夢中になっていたら、気が付いた時には囲まれていて……」
「お、おじっ……。そういや、名前言ってなかったな。門番のランディだ。初日で大変だったみたいだが、めげんなよ」
「はい……。あっ!」
「うぉっ、どうした?!」
「あ、いえ、何でもないですっ」
急にある事を思い出して声をあげてしまい、ランディさんが驚いていた。取りあえず何でもないと言ったけど、何でもなくなんて無い。薬草、袋ごと置いてきちゃったのだ……。はぁ、せっかくたくさん採ったのに……。
『アリス?』
『リゲルー、薬草置いてきちゃったよー』
『薬草? それならボク持ってきたよ?』
「えっ?!」
「今度はなんだ?!」
「ごめんなさいっ! 何でもないです! ちょっと考え事しててっ」
2回目の奇声に恥ずかしくなる。熱い顔を下に向けると、頭にポンッと手が置かれた。
何かと思い顔をあげると、ロッドさんが頭をポンポン叩いていた。
「今日は大変だった。あと少しだからがんばれ」
「は、はい」
どうやら慰めてくれてるらしい。話し方は端的だけど、優しさが感じられるロッドさんだった。全然取り乱してるとかそんなんじゃないんだけどね……。
『リゲル、持ってきたって、どういうこと?』
『んー、ピアスん中』
…………。ピアスん中。ピアスん中と。
『えーっと、ピアスの中に入れたと』
『うん。ボクと一緒に入ってるよ』
『入れられるの?』
『ん? 入れられるよ? 他にもね、ボクの宝物とか入ってるから』
『宝物?』
『うん! 宝物!』
なんだかテンション高めのリゲルが、嬉しそうに話してくれた。リゲルの宝物。それは、私の小さい頃の写真とか、こどもの頃に一緒に遊んだ小さなオモチャとか、大好きなクマのぬいぐるみとかだった。知らなかった。このピアスがそんなことになってるなんて。しかも、私の写真とかそんなものまで入ってるなんて。もしかして……。
『部屋に置いてあるピアスにも、何か入ってたりする?』
『うん! あっちはねー、飴とかねー、チョコとかねー、美味しいの入ってるの』
もじもじと照れたように答えるリゲル。ってか、チョコとか全然食べてないや。一個くれないかな……。あ、賞味期限とか大丈夫なのかな?
『く、腐らないの?』
『腐らないよ?』
時間も止まるのか。すごいな、私のピアス。いや、もうリゲルのピアスだよね。知らない所で、ピアスがマジックバッグ的なものになっていた。
『薬草出す?』
『いや、今出したらどこから出した? って話しになっちゃうからいいや。部屋に戻ったらお願いします』
『わかったー』
残念だけど、今回はギルドに持っていくのを諦めるしかなかった。次に採りに行ったときに、まとめて出すことにしよう。
「早めにギルドに行くか。話していればジャンも起きるだろう」
「そうだな、こんな所で足止めして悪かったな。ジャンの事もよろしく頼む」
「言われなくてもちゃんとするさ」
ランディさんは深く頭を下げてヤニックさんたちに頼み込んでいた。ランディさんとジャンくんって仲良いのかな? 一緒に門を潜って私たちだけが先を進んでも、ランディさんはジャンくんから目を離さなかった。
そんなランディさんにお辞儀をして、私はヤニックさんたちの後に続いて冒険者ギルドに向かったのだった。
読んでいただきありがとうございました!
年内最後の更新ですo(^o^)o
6月から連載開始して、二部からは更新ものんびりになりましたが、あっという間に半年で年末で今年も終わりです。
足を運んでくださった方、読んでいただいた方、ブックマークしてくださった方、評価してくださった方。本当にありがとうございます。
まだまだ物語は続きますので、来年もどうぞよろしくお願い致します。
年明けは、一週間だけお休みいただいて、それからまたがんばります((o(^∇^)o))
ではまた来年~( ≧∀≦)ノ




