【84】森と男の子
出来ちゃったものは仕方がない。とりあえず、誰もいないし言わなきゃバレないし。サクサク採って早く帰ろう!
とりあえず見えているサクス草を下から10センチ程残して刈り取っていく。刈り取ったものは布を広げて綺麗に並べ包んでおく。
「あっちもあるわね」
次々に場所を変え、見える範囲で採れた薬草は18株。「ふー」と一呼吸しながら立ち上がると、リゲルを探すのに意識を外に向けた。
『リゲルー? どこにいるの?』
念話を使って見当たらないリゲルに声をかけた。少しした後にリゲルの返答があった。
『アリス? こっちにたくさんあったよ!』
『たくさんあるの? やったね! ちょっと待ってて、今行くから』
リゲルの気配を探りながら、森を進んでいく。ここら辺はまだ人の出入りが多いみたいで、ちゃんと歩いていける道が出来ていた。結構進んで来ちゃったけど、帰り道は向こうよね。見失わない様に気を付けとかなくちゃ。
ガサガサと茂みが動いて、ドキッと心臓が跳ねた。
「な、何!?」
ここら辺、魔物は少ないんじゃ無いの!? いや、少ないって事はゼロじゃないって事か!! 初エンカウントか?! とドッキドキで茂みを見つめていると、そこからひょっこり現れたのはフワフワの茶色い髪の毛に葉っぱを数枚付けた男の子だった。
「なんだぁ……、男の子かぁ」
ほっと胸をなで下ろし緊張が解けていく。男の子はガサガサと体を捩って茂みから完全に抜け出すと、パンパンと服に付いた汚れを落としていた。
「こんにちわ」
「うわぁ! びっくりした!」
「あ、驚かせちゃってごめんね」
急に声をかけたからか、男の子は見事に飛び跳ね驚いた顔を見せた。背は私と同じくらい? だけど、見た目10歳くらいのまだ幼さの残る男の子。なんで森なんかに?
「迷子?」
「はぁ?! んなわけあるか!」
「ひゃっ! ごめんなさい!」
男の子に思いっきり怒鳴られ、びっくりして反射的に謝った。
「依頼で森に来てるんだよ! お前だってそうなんじゃないのかよ」
「依頼? あぁ! 君、冒険者?」
「他に何があるってんだよ!」
「ですよねー……」
目の前でプリプリと怒る男の子。このくらいの年の子って、子供扱いされると怒る子いるよねー。
「ちっ、ここも無いのかよ……」
男の子は、辺りを見回して悔しそうに呟いた。
「あ、もしかして薬草採取依頼? ごめんね、ここら辺の採っちゃったから」
「……別に。早い者勝ちだから文句言わねーよ」
「あ! あっち! あっちの方にあるみたいなんだけど、行かない?!」
私の提案に男の子が目を丸くする。
「いいのかよ」
「え? 何が?」
「何がって、そんなこと教えていいのかよ」
「だって、依頼受けてきてるんでしょ? 無かったら困るじゃない」
「! それは! お前も一緒だろ?! なのに何で教えてんだよ!」
今度は私が目を丸くする番だった。そうか、私が教えたら私の分がなくなると思ってるんだ。
「別に良いよ? 私はここで採れてるし。依頼って言うわけでもないから」
「依頼じゃないのに採りに来たのか?」
「うん。私は薬草作る方のに、練習したくて採りに来たの」
「薬草作れるのか?!」
え? 結構簡単に作れたけど、そんなもんじゃないの? あ、属性とか関係あるんだっけか。
「えっと、うん、まぁ。まだ練習中だけどね……」
「いいなぁ……」
「い、行こうか! えっと、あっち!」
呟くように聞こえた声が心なしか沈んで聞こえて、あわてて話題を変えようと聞こえないフリをしてリゲルの気配がする方を指差した。
「あぁ、ありがとう」
「ううん、どういたしまして」
ここからは少しだけ距離があったソコに向かうのに、リゲルに姿を消してもらうように念話を飛ばした、
『リゲル? 今から行くけど、ちょっと男の子と一緒に行くことになっちゃって、悪いんだけど見えなくなるようにしといてもらっていいかな?』
『ん? 男の子? いいけど、どうしたの?』
『なんか、薬草採取の依頼受けた子みたいなんだけど、こっちにあったの全部採っちゃったから、そっちに案内することになって』
『わかったー。見えないようにしとくねー』
ほっとしていると、隣からの視線に気がついて顔を向けると、案の定男の子と目があった。
「なに? なんかついてる?」
「いや、急に黙るから」
「ごめんごめん。場所を確認するのに集中してたの」
「間違ってないならいい」
ちょっとぶっきらぼうだけど、さっきお礼も言ってくれたし、悪い子ではないんだろうなぁ。
「私、アリスって言うの。あなたは?」
「……オレはジャン」
「ジャンくんいくつ?」
普通に疑問に思った事を聞いただけだったんだけど、睨まれた。何故だ? ちょっと強く睨まれたから、ひきつりつつも笑顔を向けてみた。すると、はぁとため息をつかれた。何故だ?
「……11」
「11才で冒険者かぁ。すごいね!」
「すごくねーよ! 冒険者になってもう1年なのに、全然ランクも上がらないし!」
うぉっ、なんかスイッチ押しちゃったかも……。
「そ、そうなんだ。ランクあげるのも大変なんだね……」
会話が途切れる。サクサクと進んでるけど、沈黙が痛かった。リゲルの気配を探ると、あと少しの所まで来ていた。
「ごめん、八つ当たりした……」
「え? 全然気にしてないよ?! むしろごめんね? 無神経なこと聞いて」
小さい声で謝られ驚く。
「最近うまく行かなくてちょっとイライラしてたんだ」
「そうだったんだ。そういう時期もあるよね。私も経験あるから分かるよ」
「お前でもそうなのかよ」
「そうだよ? 頑張ってる時ほど空回りしちゃってうまく行かないことたくさんあったよ」
タイムが延びずに落ち込んだ事なんて、よくあった。サッカーやってた時も、頭では分かっていても体がうまく使えない時だってあったし。
「たくさんって、お前いくつだよ」
ジャンくんはちょっと笑いってそう言った。あー、またか……。私はいったいこの世界でいくつに見られているのだろうか……。
「……じ、じゅう……じゅうはちです……」
ピタッとジャンくんの足が止まる。ついでに顔も固まる。
「はぁ?!」
「だよね! だよね! 見えないよね! 知ってる!」
もう、年齢の札でも下げて歩こうかと思うんだよ。もう、ね。化粧でもした方がいいかな?!
「全然見えねー……」
ボソボソと心の声が聞こえてますよジャンくん。
「ご……」
「ご?」
下向いて口ごもってモジモジし始めたジャンくんは、ぎゅっと目をつぶって下げていた手をグッと握っていた。
「ごめんなさい!」
「ひゃいっ!」
大声でビックリして変な返事になってしまった。
「お、オレ。年上の人に、し、失礼な事言って……」
「あー、いいよ? そこも気にしてないよ?
よくあることだし」
「よくあるって……」
「こんな見た目だからね。実年齢より下に見られてばっかだしね。それに謝ってくれたでしょ? それで十分だよ?」
「で、でも……」
ジャンくんの中で、なにが引っ掛かるのか分からなかったけど、私は気にしていない。それでいいと思う。
「ほら、見えてきた! 早く薬草取りに行こう!」
うつ向くジャンくんの手を取って、ちょっと開けている場所まで引っ張っていった。
新キャラ・ジャンくん。頑張って動いてもらいますo(^o^)o
読んでいただきありがとうございます。
今週もう一話更新頑張ります!
ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ




