【83】初めての採取
「お嬢ちゃん、どこに行くのかな? こっちの門は森に入る為の門だよ?」
いままでの経験から(主に幼く見られるから)門を出るのにすんなりいくとは思ってはいなかったけど、初心者用の服を着ていてもやっぱり警備の人に止められた。しっかりとした厚めの生地のパンツに皮のブーツ。シャツは自前の白シャツで皮のベスト。腰には鞘に入った短剣も下げていた。寒いのでマフラー、というかネックウォーマー(自作)も装備済みだ。お金が稼げるようになったら、是非とも暖かい装備がほしいところだった。いや、あんまり外出ないかもだけど。
「初級ポーションの素材を採りに、外に出たいんですけど」
「1人で行くのかい? 保護者や付き添いは?」
「いえ、いません。1人です。えっと、一応冒険者ギルド証と身分証を見せた方がいいですか?」
「あぁ、素材採取なら冒険者ギルド証でいい。見せてくれるかい?」
言われて、短髪大柄だけど優しそうな警備のおじさんに冒険者証を見せた。
「お、本当に冒険者なんだな。じゃあそこの板に冒険者証をかざしてくれ」
「はい」
言われたとおり冒険者証を板にかざす。するとうっすらと光り始めた。
「あの、これは?」
「あ? なんだお嬢ちゃん。外に出るのは初めてかい? これは、通行を記録する為の作業だ。出て行く時と戻った時に登録をして、人の行き来を管理してるんだよ」
なんか駅の改札みたい。
「じゃあ、帰ってくる時もこの門を通ればいいんですね?」
「そうしてくれ、じゃないと行方不明者としてギルドに報告しに行かなくちゃならなくなるからな」
「わかりました」
光が収まるとおじさんは板を覗いて少し驚いていた。何に驚いてるのかと私も覗いて見たら、名前と年齢が映し出されて。あぁ、年齢ね。
「初級ポーションの採取できる場所って、この門を出てあっちの方向で合ってますか?」
「あ、あぁ、それで間違いない。気を付けるんだぞ」
「はい、ありがとうございます。では行ってきます」
今更対応を変える訳もにもいかなそうに、若干引きつった笑顔で送り出された。まぁ、あのおじさんからしたら、私は十分お嬢ちゃんだろうけどね。
「えっと、ここら辺のはずなんだけど……」
森に来る前に冒険者ギルドに寄って、ミラさんに薬草の採れるポイントもいくつか聞いてきた。その際に、しっかり出るかもしれない魔物の情報もゲットしつつ、ついでに多めに採って依頼も受けてしまえば、ちょっとしたお小遣いになるかと思って、いくつかわかりそうなのも受けてきた。準備は万端なのだ。
この方向であってるのはさっきのおじさんから聞いたし、間違いないはずんだけどあのハート型の草が見つからない。もっとわかりやすくワサワサと生えてるもんだと思ってた。
『あっちじゃない?』
森の入り口付近でしゃがみ込みながら薬草を探していると、リゲルがポンッと現れて茂みの向こうを指差した。
「リゲルわかるの?」
『んー、なんとなく?』
なんとなくかぁ。とは思ったけど、リゲルの、精霊のなんとなくだからもしかしたら当たりかもしれないと思い、私はリゲルが指差す茂みの方を見た。
「一応身体強化かけとくかな」
久しぶりの強化。結局循環は欠かさずやってるけど、強化の方はやってなかった。だって、こうして森に1人で入るとは思わなかったから。
「えっと、身体に魔力を纏わせて……」
全体的に魔力で覆い、隙間ない感じに密着させるとキュッと絞まる感じがした。
「よし、成功!」
軽く手足を動かしてかかり具合を確認する。やっぱり軽くて良いなぁ。
「じゃあ周りに気を付けながら行きますか」
ガサガサと腰くらいある茂みをかき分け、進むこと数歩。大して深くも無かった茂みの向こう側は、所々にあのハート型をした薬草が生えていた。
「なんだ、本当にあと少しだったんだ。リゲルありがとね」
『どういたしまして』
言いながら私の肩に座ったリゲルが、満足げな顔をしていた。
「だいたい10株くらいで5本作れたけど、練習するのにたくさんほしいところだよね」
『いっぱい採っちゃっても大丈夫なの?』
「フレデリクさんが、成長が早いって言ってたから、根っこから採らなければ大丈夫じゃないかな?」
『でも、ここだけじゃ足りない?』
「んー。もうちょっと欲しいところだよね」
当たりを見回せば、2,3株生えてるとことがチラホラ。たぶん全部とっても多分20株も無い。それに管理してる薬草と違って、時間も昼過ぎだし若葉が良い状態なのかも怪しい。中級の素材用は諦めた方が無難かな。
「とりあえず、ちょこちょこ採ってちゃおっか」
『ボク、他にも無いか探してみるよ』
「ありがとう! 助かる! でもあんまり奥には行かないでね」
『わかった! ボクがんばる!!』
いや、あんまり奥には行かないでと言ったんだよ……。張り切ってるリゲルに釘を刺すのもかわいそうな気がして、リゲルを意識しながら採取を始めることにした。だいたいどこにいるか検討がつくから遠くに行きすぎないように、私が注意することにした。
「野生の薬草って、お店の薬草とはちょっと違う気がする」
サクッと1株採取して、まじまじと観察する。お店の薬草はもう少し色が薄くて優しい感じがしたけど、こっちのは少し色が濃いきがする。
「あ、あってるよね?」
若干不安になりつつも、一応ギルドで見せてもらった薬草図鑑と同じ「色」と「形」をしていた。図鑑はカラーじゃなかったから、こんな些細な違いはわからない。多分合ってるはず……。
「フレデリクさんに鑑定教えて貰えば良かった」
鑑定なんて便利な魔法、絶対に取得したい魔法の一つだよね!
「んー、どうしたら判るのかなぁ」
悩みながら薬草をじっくりと見つめ、知りたい知りたいと強く願っていたら、突然頭の中に言葉が浮かんできた。
「ん? サクス草。初級のポーションの原料として広く知られている。その若葉は中級ポーション作成にも使われる。比較的光りの多い場所に生息。根を残せば10日くらいで新しい葉が付く……」
言葉にしてから、思考が停止する。……もしかして鑑定出来ちゃった? ってか、名前あったんだ……。
「やばい……、教えてもらわなくても出来てしまった。こ、これは、クロードさんに報告かな……」
そろそろ自分が規格外だって事をちゃんと自覚した方が良いのかもしれないと、心底思うのであった。
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来週も2回更新します!
ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ




