【77】冒険者ギルド
翌日、ドキドキしながらフレデリクさんと一緒にギルドに足を運んだ。そりゃもうドッキドキよ。なんてったって、あの有名なギルドなんだから。まぁ、登録って言っても冒険者になる訳じゃないけどね。
「楽しそうですね」
隣を歩く私を見て、フレデリクさんが話しかけてくる。
「わかります? なんかドキドキしちゃって。冒険者になる訳じゃないけど、やっぱりちょっとは気になるんで」
よほど顔に出てたみたいで、無駄だと思いつつも両手で頬を押さえながら口角が上がるのを止めてみる。
「まぁ、危険な仕事ではありますけど、雑用なんかのお手伝い的なものや、王都周辺の薬草採取なんかもありますからね。全部が全部危険ってわけでもないんですよ」
「そうか。初心者がいきなり魔物と戦うなんて、大変ですもんね」
「登録したての人用に、簡単な依頼もありますし、興味があれば見てみるのもアリですよ? あまり危険なものはお義母さんに怒られてしまいますけどね」
心配性のアンリエットさん。きっと私が魔物と戦うなんて言ったら、絶対に反対するんだろうなと、フレデリクさんと笑ってしまった。砦からの帰り道で、守られながらも魔物と戦ってくれた団員さんたちは、本当に凄かった。怖くなって途中からほとんど目をつぶっていて見れなかったけど、やっぱり日本の温室育ちにはキツいものだった。
「さぁ、ここが冒険者ギルドですよ」
お喋りをしながらだったけど、歩いて体感15分くらいで冒険者ギルドに着いた。フレデリクさんに言われ目の前を見ると、三階建ての大きな建物だった。入り口は扉がなく開放的になっていて、行き交う人がみんなファンタジーな装いをしていて、まるで何かのアトラクションみたいだった。
「大きな建物ですね」
「ここは王都ですからね、ギルドも大きいんです。都市の大きさによってギルドの建物なんかも変わってきますし様々ですね。では入りましょうか。中は広いですし人も多いので、絶対に私から離れてはいけませんよ?」
「わかりました。しっかりついていきます」
あれかな? 離れたらテンプレの展開かな? 絡まれちゃうヤツ?! 私強くもないし、絶対にフレデリクさんから離れないようにしなくちゃ!
ワクワクとドキドキ、それにちょっとだけビクビクしながら、先を歩くフレデリクさんから離れないように、私は冒険者ギルドの入り口をくぐった。
「わぁ、すごい……」
中に入ると、テーブルセットが置かれた一画や、壁一面の掲示板、カウンターが二ヶ所に分かれて設置されていた。そして、人人人。楽しく談笑している人や、真剣な顔で話し合っている人もいる。パッと見、冒険者っぽい人と私たちみたいに普通の格好をしている人もちらほら見られた。
「アリスさん、こっちですよ」
「すみませんっ」
離れないようにと言っていたそばから離れてしまう。あわててフレデリクさんの元に駆け寄り、すぐ後ろに付いていく。絡まれなくて良かった。
「こんにちわ。ポーションの納品と依頼をお願いします」
「こんにちわ、フレデリクさん。いつもありがとうございます」
慣れた様子でカウンターにいる女性に話しかけたフレデリクさんは、持ってきていたポーションを取り出して並べていく。今日は初級中級を10本づつだった。ん? 今の量をどこから出した?
「本当にありがとうございます。フレデリクさんのポーションは安定していて助かります。依頼はいつもの中級用の薬草ですか?」
「いえ、いつも書いとりありがとうございます。はい、薬草の採取依頼です」
「では、こちらに記入をお願いします」
女性はテキパキと用紙を出し、買取りのポーションの金額を計算していく。無駄の無い動きに好感がもてた。ポニーテールにした薄ピンクの長い髪が動く度になびく。キリッとしてて働く女性ってかっこいいよね。何て思ってしまう。そう言えばと、20本ものポーションをどこから出したのかが気になってフレデリクさんに近寄った。小ぶりのバッグしか持ってなかったはず……。
「フレデリクさん、そのバッグ、ポーションが入る量がおかしくないですか?」
依頼書を書いていたフレデリクさんが、手を止めて私を見てくる。
「アリスさん、見るのは初めてですか? マジックバックですよ。見た目より多く物が入るんです」
マジックバッグキターー!! 顔に出ないように意識はしたけど、目は見開いてしまったのがバレバレだったみたい。フレデリクさんと、受付の女性にも笑われてしまった。
「可愛らしいお嬢さんですね、アナベラの代わりに入った子ですか?」
「そうなんです。まだ子供も産まれたばかりなので、こちらでもお世話になると思います。その際はどうぞよろしくお願いします」
アナベラの代わりに入った事はけっこう知られているのかな? アルトー商会が有名なのは分かってたけど、情報は色々と飛び交ってるらしい。
「リュカの紹介でお世話になっています、アリスです。よろしくお願いします」
「リュカくんの知り合いだったのね、私はここの受付のミラよ。よろしくね」
にっこりと優しく微笑んでくれたミラさんは、私の頭に手を伸ばしてナデナデしてくれた。あー、またかぁー……。
「ミラさん……」
私とミラさんを交互に見ながら、フレデリクさんが困った表情を浮かべていた。分かるよ。分かりますよ、フレデリクさん。やられてる私が一番痛いですよ。
「今日はお勉強ですか? 時間があれば色々とお教えしますよ?」
「いや、あの……」
「ミラさん、今日はアリスさんの登録をお願いしようと思いまして」
「お店のお手伝いだけじゃなくて、お使いまでするんですか? 偉いですね!」
キラキラとした目が、私に注がれものすごく居たたまれない。しっかりと働いてるつもりだけど、お手伝い扱いかぁ。
「悪気はないと思います……」
「はい、初対面の方はいつもこうなので、大丈夫です……」
こそこそとフレデリクさんと話してしまう。幼く見えるのは仕方ないんだと、もう諦めたよ。
「まさか! 冒険者になるのですか?!」
「いえ、アリスさんは私が来れなかった時に代わりにお願いできるようにと、お義母さんがてすね」
「あぁ、そうですよね! 10才を過ぎれば登録できるとはいえ、危ない依頼はお勧め出来ませんよ!」
ビシッと人差し指を目の前に出され、ちょっと引いてしまう。この人、私が成人してるって知ったらどうするんだろう……。呆れて笑顔がひきつってしまった。
「ミラさん、小さい子とかわいい子が大好きなんですよ……」
「はぁ……」
出来るお姉さんなんだろうけど、少し残念な部分もあるらしい。
「では、早速登録しましょう。分かる範囲で良いのでこちらに記入をお願いします」
サッと登録用紙を出されて一瞬止まってしまった。こっちの文字はまだ書けないけど、リュカと筆記で勉強してた時は、勝手に変換されてたから大丈夫なはず。変な単語を書かなければ……。
構えてたけど、何て事はない。名前と年齢、出身地を書くだけだった。そして、出身地は書いても書かなくてもいいらしい。
先日のクロードさんとフィリップ様との面会で、色々と隠さなきゃいけない事を相談しておいて良かった。嘘だらけで申し訳ないけど、訳ありの人も登録出来るみたいだし、犯罪さえ犯してなければいいんだって。
【名前:アリス 年齢:18 出身地: 】
記入した用紙をそーっとミラさんの前に差し出すと、ニコニコした笑顔が段々と青ざめていく。そして、ひきつった笑顔が私に向けられ、私もつられて苦笑いをミラさんに向けたのだった。
平日のうちに更新できて良かったです(。>д<)
どんどん話を進めていきたいなぁと思う今日この頃。
来週も頑張ります!
ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ




