【73】押しに弱い私
店内で見るものは、どれもこれも素敵で思わずため息が出るほどだった。アンリエットさんには悪いけど、やっぱり貴族街にあるお店だけあって、品揃えの質は高そうだ。
私はクロードさんから聞いたセリーヌちゃんの容姿や性格なんかを元に、良さそうなものを探していき、いくつか候補をしぼった上でお店の人にも意見を聞きつつプレゼントを選んだ。どうか気に入ってもらえますようにと、願いを込めて。
「今年はきっと喜ばれるに違いないな」
「セリーヌちゃんに喜んでもらえるといいんですけど……」
ラッピングを待つ間、二人で会話をしつつ店内を見て回っていると、クロードさんが嬉しそうに言うもんだから、私は少し不安になって来てしまった。本当にあれで良かったかな?
『大丈夫よ、セリーヌならああいうの好きそうだもの』
『キラキラしてて凄く綺麗だったもんね』
ピアス越しにフィーとリゲルも念話を飛ばしてくる。
みんなに太鼓判を押してもらえて、私も少しだけ自信が出てくる。
「ならいいけど。もしまた怒られちゃったら、私のせいにしてくださいね」
「そんなことにはならないと思うよ」
「お待たせいたしましたフェシュネール様。こちらでよろしいでしょうか?」
お店の人が綺麗にラッピングした箱を持ってきてくれた。見ると、四角い小箱をリボンでくくり、上でお花みたいにくくられていた。凄い、これどうなってるんだろう? クロードさんはそれを見て小さくうなずくと、店員さんは箱を上品な袋に入れて店の入り口まで運んでくれる。おぉ、良いとこのお店の対応だよ。
ちょっとの事に感動しながら、私はクロードさんの後に続いてお店を出る。
「いつもすまないね、ありがとう」
「いえ、またのお越しをお待ちしております」
店員さんは外で待っていた御者の人に袋を手渡すと、私たちに深々と頭を下げ見送ってくれたのだった。
なんだか、色々と勉強になりそうな体験もできて、予想以上に楽しかった。アンリエットさんとお店って、庶民向けなんだけどたまに偉い人とかも来るんだよね。
プレゼントも選び終わり、楽しい時間はあっという間に終わりを告げる。帰宅のため再び馬車に乗り込み、リュカの家まで送られる事となった。
「今日はありがとう。おかげで助かったよ」
「こちらこそ、お忙しい時に色々とありがとうございました」
服の事で午前中の事をすっかり忘れていたけど、今日のメインは属性判断だったんだよね。
そういえば、と、書かれていた数値が気になっていたことを思いだし、聞くなら今しかないかな? と思って、クロードさんに訪ねてみた。
「あの、属性判断の結果なんですけど、出ていた数値って、一般的にはどんな感じなんですか?」
「数値かい? あぁ、すまない。結局ろくな説明も無かったね。そうだね、一般的な人で力や属性値は2~3といったとこだろうな。騎士や冒険者、魔法師などは訓練されているため、5~6程度。極めると10にまでなる」
えっと……、MAX10ですか……。確か攻撃力と防御力は3とか4だから普通で、俊敏性と適応力はかなり高いと。属性に至ってはカンストですか……。
「ちなみに魔力の量は……」
周りに多いと言われていた私の魔力保有量は確か1200を越えていたはずで……。
「この国で一番多い者が1000あるかないかだったと記憶している。エルでさえ800を少し越える程度だ」
エルさんで800! あの人魔法師だよね?! 専門の人で800で一番多い人よりも多い私って……。
「気づいたかと思うが、今の生活を続けたいのなら、あまり他言しない方が身のためだよ」
「はい。十分に気を付けます……」
フィリップ様が保護するって言うわけだね。規格外だとは思ってたけど、リゲルありきだと思ってた私は、その数値に驚きと戸惑いを隠せなかった。
「今からでもフィリップ様に願い出るかい?」
不安が顔に出ていたみたいで、クロードさんが心配そうに聞いてきた。その顔を見て私は、ぐっと気持ちを引き締める。
「いえ、大丈夫です。こっちに来てから誰かに頼りっぱなしなんで、少しは自分でどうにか出きるようにならないとダメかな? って。今以上に気を付けて、頑張ります」
能力値がわかって怖くなった部分もあるけど、魔法って魅力的な事も出来るようになったし、そうなってくるとやりたい事もたくさん出てきてちょっとワクワクしていた。お仕事も楽しいし女子会だってまだやってない。守ってもらえるのは安心だけど、自分の可能性ももっと知りたかった。
「私はアリスの味方だから」
クロードさんが真剣な顔で私を見てきた。その真剣な眼差しに心臓が跳び跳ねる。
「あ、あの」
「なんだい?」
前々から不思議に思っていた。クロードさんは何かと私に優しすぎるんじゃないか? って。保護した責任とか言っていたけど、もう十分にその責任は果たしてもらってるし。これ以上迷惑かけると嫌われそうだし、それは凄く嫌だった。ドキドキする心臓をギュット押さえながら、私はうつむき加減でクロードさん思いを伝えた。
「クロードさんは、何か責任を感じて私を気にかけてくれているようですが、もう、十分ですよ? とっても助かりましたし、おかげさまで生活も不自由無く出来ています。これ以上クロードさんにご迷惑をおかけするのは……」
突然異世界から来て、フィーに言われるがまま私を助けて、手助けまでしてくれた。成人まで後数年だったけど、もうそんなに子供じゃない。ちょっと早くに社会に出たと思えば、なんとかやっていけそうな感じだった。
言いながら、チラッとクロードさんを伺えば、片眉を寄せなんとも切なそうにこちらを見ていた。
うぉっ! 出たな仔犬顔! これが出ると絶対に何か押しきられるんだよねぇ……。
「私のしている事は迷惑かい?」
「いえ! 違います! 私が迷惑をかけたくないんです! クロードさんはいつも色々としてくださるからっ」
「アリスにしてあげてることなんて、ほとんど無いじゃないか。迷惑をかけられてるなんて思ったこともない」
「何言ってるんですか! 助けてくれたし、相談にものってもらって、必要なものまで用意してくれて、忙しいのに内緒でフィリップ様に属性判断まで頼んでくれたじゃないですか! それに、こんな素敵なお洋服まで……、私、クロードさんに、返せるものが何もないです……」
今までこの人がしてくれた事には感謝しかない。そんなことを力説すれば、自分がクロードさんのしてあげられることなんて、何にもないとに気が付いて気持ちが落ちた。
「見返りが欲しくてやっているわけではないよ。アリスがアリスのままでいられる手助けがしたいだけだ。それに」
それにと、クロードさんは先ほど受け取った紙袋を指差し
「私にとって最大の難関を、手伝ってくれたじゃないか。これ以上のお返しはないよ」
笑いながらそう言ってくれた。
「でも、それじゃあっ」
「でもも、それもないよ。アリスは知らないんだ。セリーヌの恐ろしさを……」
笑顔が真顔に早変わり、眉間にシワまで寄って顔をしかめたクロードさんがおかしくて、つい笑ってしまった。
「私はアリスに助けてもらっている。他の人には頼めない案件なんだよ。これでお互い様。ということではダメかい?」
クロードさんが右耳を軽く触った事で、他の人には頼めない理由がわかってしまった。女の子のプレゼントを選ぶのに、安心して助言を求められる女性がいないのだきっと。
それと、クロードさんの「ダメかい?」に私は弱い。
「そ、そういうことなら……」
「良かった。アリスに断られたら、これからどうしようかと思ったよ」
心底安心した様に、クロードさんの表情が明るくなった。
「困ったことにならない事が一番だけど、困ったことがあれば遠慮無く頼ってくれ。その代わり、私も困った時は頼らせてもらうよ」
「はい、わかりました。あ、早速で申し訳ないんですが、フィリップ様とお会いする時は、助けて欲しいです……」
「それはこちらからお願いすることだからね、むしろそれも助けられてるのはこっちだよ。ほら、お互い様だ」
クロードさんのしてくれることに対しての対価が低すぎると思う。フィリップ様との面会はあちらの希望だけど、クロードさんは巻き込まれただけだと思うんだけどなぁ。なんだかんだやっぱり押しきられることのなってしまった。
でもさすがにフィリップ様案件は私1人じゃ荷が重すぎたので、そこは遠慮無く頼らせてもらうことにしたのだった。
読んでくださってありがとうございます(*´▽`*)
次も頑張ります!
ではまたぁ~( ≧∀≦)ノ




