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【74】込み上げてくるもの


「ただいま戻りましたー」

「お帰りアリス。まぁまぁ、素敵なお洋服だね! クロード様からかい?!」

「アリスちゃんお帰りー! どうしたのその服! とってもきれいだね!」


 クロードさんに送ってもらい帰宅した私は、キッチンで夕飯の仕度をしていたアンリエットさんとアミラちゃんに声をかけると、出掛けた時と服が違う事に気が付いたようで、目をキラキラさせた二人に質問責めにあってしまった。


「こ、これはですね、えっと……」


 説明しようとしてちょっと考え込む。フィリップ様に会う為なんだけど、それって言ったらまずいよね……。どうしよう、服を貰う理由なんて思い付かないよ。プレゼント選びのお礼、なんて釣り合わないし……。

 考え込んでしまった私を見て、アンリエットさんが少し心配そうにこちらを見てきた。


「アリス……」

「これはですね! ちょっと成り行きで!」

「成り行きで服を頂いたのかい?」

「わかってます! 私と身分が合わないことは……。クロード様もそういう意味では無くてですね、大丈夫です!」


 アンリエットさんが心配してくれる理由もちゃんと分かっている。私の世界と違って身分制度が重要なのも色々と読んで知ってるし、クロードさんはお友達。それ以上は望んじゃいけないって。だから、アイドルとデート気分ではしゃいじゃっただけだから。


「アリスはしっかりしてるみたいだから、あまり心配はしていないけど、後で辛くなるような事はしないことだよ」

「はい……」


 本気で私の心配をしてくれるアンリエットさん。でも、そんなんじゃないんだけどなぁ。


「まぁ、のめり込まない程度に想うのは勝手だけどね。クロード様は顔が良いから」


 いたずらっぽく笑うアンリエットさんに、私もつられて笑ってしまった。


「ですよね。クロード様って、凄く美形ですよね! そんな人と一緒にお出掛けできて、今日はラッキーでした!」

「アリスちゃん良いなぁ。私もクロード様すきー! かっこいいもん! お兄ちゃんってば、いつもずるいよね」


 アミラちゃんが同意するようにクロード様を誉める。そして、リュカ()を妬む。


「ま、まぁ、そこはね、お仕事だからね」

「そうだけどー、でもでも、たまにくるフランク様も好きよ? ちょっとたよりなさげだけど、いざとなったら助けてくれそうだし、そのギャップがいいのよねー。レダさんもヴァルゴさんも、ポールさんもみんな好き!」

「アミラは討伐部隊のみんなが、本当に好きなんだねぇ」


 アミラちゃんの頭を撫でながら、アンリエットさんが優しく笑った。久しぶりに聞いたみんなの名前に、自然と私も笑顔になる。


「みんないい人ばっかりだよね!」

「うん!」




 もう少しで夕飯が出来上がると言うことで、先に着替えてきなと、アンリエットさんに言われて私は三階の借りている部屋へと上がっていった。


「はぁ、今日はなんだか疲れたなぁ」


 ぱふっとベッドに座り、一息つく。たぶん超偉いフィリップ様と会ったのが一番緊張したけど、クロードさんがからかってくるし、なんだか仔犬だし、洋服貰っちゃうし。それにしても、セリーヌちゃんプレゼント喜んでくれると良いなぁ。


 そんな事を思いながら、サラサラと触り心地が良いスカートをなでていた。クロードさんに貰っちゃった……。1人になった途端に素直に嬉しさが込み上げてきた。だんだんと顔が緩んでいき、口角が上がってくる。


「学校じゃ、あんなにかっこいい人いなかったもんなぁ」


 ふいについた言葉で、クロードさんの優しい笑顔が脳裏によみがえる。


「きゃーー! あの顔はダメだよ! キュン死にするよ! て、て、手まで握られちゃったし!」


 そのうち足までバタつかせ、浮かれるあまりベッドに勢いよく倒れ込む。


「ダメ! ダメよ愛星! クロードさんは絶対に手の届かない人! お、お友達なんだから!」


 友人認定の身分の高い人。私は自分に言い聞かせるように、その事実を口にする。口にしてすぐに仔犬なクロードさんが頭を過って、またしても悶えてしまう。


「あれは反則! いつもかっこいいのに、仔犬っぽくなるとか、ギャップ萌えがハンパ無い!!」


 うつ伏せになりながら、バシバシと枕を叩き気持ちを発散させていく。この気持ちを共有できるだろう友人は、この世界にはいない。ちょっと寂しかったけど、浮かれている気持ちは嫌いではなかった。


「はぁ、はぁ、久しぶりにはっちゃけちゃった」


 ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着けていく。でも、落ち着いたそばからクロードさんの顔が浮かんできちゃって、どうにもならずに、バタバタとベッドの上でもがいていると、コンコンと控えめにノックがあった。

 ビックリして慌ててベッドから飛び起き、扉へ向かう。


「アリス? 母さんがごはんだって」


 どうやら帰宅したリュカが呼びに来てくれたみたいだ。


「ご、ごめん! すぐ行く!」


 扉越しにリュカにそう言うと、私は急いでいつもの普段着に着替え……ようとして固まってしまった。あ、これコルセットつけてたんだった。1人じゃ脱げないかも……。


「リュカ? まだいる?」

「ん? なに?」

「ごめん、アンリエットさん呼んできてもらってもいい?」

「母さんを?」


 1人じゃどうにもならない服を前に、どう言い訳をしようかと頭を悩ませる。事情を知るリュカに相談しようと、そっと扉を開けた。


「あのー、リュカさん。ちょっとご相談が……」

「うわぁ! アリス、すごい気合いはいった格好だね。あれ? 今日は隊長と属性調べに行くって言ってなかったっけ?」

「気合いって、別に私がいれた訳じゃないんだけどね……。うん、調べてもらったよ」

「え? それじゃぁ、その服、隊長から? 何々?! 属性調べに行って、服? なにそれ?!」


 ちょっと楽しそうにリュカが色々と突っ込んでくる。いや、そんなこと私が聞きたいんだけどね……。


「ちょっとその事でご相談が……」


 そう言って、リュカを部屋へと招き入れようと扉をさらに開いた。


「廊下じゃちょっと……」

「いや、さすがにまずいんじゃ……」


 リュカも男の子。女の子の部屋は入りづらいらしい。


「でも、聞かれてもまずいって言うか……」

「じゃぁ、僕の部屋に、って、同じか……」


二人して困ってしまった。それより、呼びに来てくれたんだから、急がないとまずい。


「もう緊急事態って事で!!」

「え! アリス!? ちょっと!」


 慌てるリュカを無理矢理部屋へと引っ張って、扉を閉めたのだった。



アリスさん、壊れてきてますね。思い出してキャーキャー言っちゃう気持ちは、昔昔私にも経験があります(笑)

それにしても、課題山積みで頭いたいです(苦笑)


今週もう一話更新します!平日のうちに!!


ではまた~!

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