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【72】クロードさんの感想は?


「お待たせいたしました」


普段着とはいえ、日本じゃまず着なかったような服を着せられ、私はクロードさんの待つ部屋へと連れて行かれた。

 ソファーに優雅に腰をかけ、何か書類に目を通していたクロードさんが、メラニーさんの後ろに隠れるようにして入ってきた私をじっと見てきた。


「アリス?」


 なかなかメラニーさんの後ろから出てこようとしない私に、クロードさんが不思議そうにする。うぅ……、だって、恥ずかしいのよ……。


「お嬢様、大丈夫でございます。とても素敵です。きっとフェシュネール様も気に入ってくださいますよ」

「そ、そうでしょうか……」

「ええ、見てください、あのお顔を。早く見たくて仕方がないみたいですね」


 あのお顔とはどんなお顔なのだろうか? ちょっとだけ気になって、メラニーさんの背からちょこっとだけ顔を出し、クロードさんを見るとバッチリ目が合ってしまった。


「アリス? どうしたんだい?」

「わ、私、こういう服を着たことがなくて、ですね。ちょっと恥ずかしいというか、似合ってないんじゃないかな? と思うんですけど……」

「見せてはくれないのかい?」

「いや、そういう訳にもいかないですし、お、お見せしますけど、笑わないでくださいね」


 一度メラニーさんの後ろに引っ込んで、ふーと深呼吸を一つ。私は覚悟を決め、すっとクロードさんに姿を見せた。

 メラニーさんが選んでくれた服は、私が好きだと言った青色、正確には紺に近い青、ネイビーブルーのワンピースだった。普段使いと言うことだけあって、シンプルなんだけどとても上品で可愛らしいこのワンピース、オフショルの形ではあるものの、首から肩にかけての部分が黒のレースで品良く隠されていた。ウエストから胸元までリボンで編み上げられていてこれまた可愛い。冬なので長袖なんだけど、手首の部分がシャツの袖口みたいになっていて、ついているカフスがモノトーンのお花だった。スカート部分はストンとしているけど、まわったら結構広がるんじゃないか? ってくらい布が使われていて、裾にはフリルが付いていた。このフリル、実はさっき付けたんだよね……。背の低い私に合わせるために(ロング丈は歩きにくそうとボソッと言ったのを拾われてしまったとも言う)長すぎた裾にジョキジョキとハサミを入れ、手早くフリルを付け足してくれていた。


「ど、どうですか?」

「…………」


 クロードさんはふわっと優しく微笑んだまま、私を数秒見ていた。なんで何も言ってくれないのかな……、もしかして似合ってない? あれは笑ってるの? お、可笑しいかな?

 いつまで経っても言葉を発しないクロードさんに、私は不安になってきてしまった。


「クロード様?」


 メラニーさんの手前、様をつけて呼んでみると、クロードさんが一瞬にして戻ってくる。


「あぁ、すまない。とても良く似合っているよ。あんまり可愛らしくて驚いていたんだ」

「か、か、かわっ! 何言ってるんですか?!」


 アウトー! クロードさんが可愛いとか言ったら、反則ですから! そんな顔して言ったらダメなやつですからー!!

 ワタワタと赤くなった顔を両手で覆い隠して、私はクロードさんから顔をそらした。すると後ろからメラニーさんが嬉しそうに「良かったですね」と耳打ちしてきた。嬉しいやら恥ずかしいやらで、うぐぐと唸るほかなかった。




 メラニーさんに選んでもらった服が素敵だったので(か、可愛いと言ってもらえたんだから、きっと似合ってもいるのよね?)流行を知らない私は安心してオーダーの服もメラニーさんにお願いすることにした。


「では仕上がり次第お知らせいたします」

「よろしく頼むよ、そうだ……」


 クロードさんはメラニーさんに何か話していたけど、馬車で待っていた私には聞こえなかった。メラニーさんがちょっと驚いた表情をしたかと思えば、すぐに笑顔になったから、悪い話ではないんだろうけど。最後に見送られた際、目が合ったメラニーさんが凄くいい笑顔だった。買ってもらった服があまり高価で無い事を祈る私は、心の底から庶民だった。


「本当にありがとうございました。セリーヌちゃんのプレゼントを選びに来たのに、こんな素敵なお洋服を買ってもらっちゃって……」


 乗り込んだ馬車の中、改めてクロードさんにお礼を言った。何度言っても言い足りないくらい、素敵な服だったから。レースとはいえ、肩がスースーしてるのがちょっと落ち着かないけど、綺麗な服を着ると気分も上がるんだよね。


「アリスが気に入ってくれて良かったよ。注文した方の服が出来上がったら、また連絡する。フィリップ様とお会いになる時にでも着てくれると嬉しい」

「はい、そうします」


 私は再び洋服に手を滑らせ、その手触りも堪能すると、思わず笑みが溢れた。えへへ。クロードさんに買ってもらっちゃった。

 思うことは色々とあるけど、ただただ単純に嬉しかった。理由はどうあれ、クロードさんに貰ったのだ。推しからプレゼントとか、死ぬんじゃなかろうか?

 幸せ気分に浸っていると、馬車が次のお店に到着したらしい。ゆっくりと停車して扉が開かれた。先ほど同様クロードさんのエスコートで馬車を降りる。ただし今回はさっき以上にスカートに気を付けて。踏んだら大変!


 連れてこられたのは、綺麗な装飾品から可愛い小物までが並ぶ、素敵なお店だった。ここでもクロードさんは店主に挨拶をされ個室に通されそうになるが、今回はそれを断っていた。


「連れと妹のプレゼントを選びたくてね。色々と見て回りたいので、案内は結構だよ」

「かしこまりました。では何かご用の際はお呼びください」


 ここでもニッコリと微笑まれ、訳もわからず微笑み返しておいた。笑顔は良い、誤魔化しがきくから。わかんなくてもとりあえず笑っておけば、悪くはとられないもんね。


「さてアリス。君の才能に期待するよ」


 悪戯っぽく可愛くそんな事を言うクロードさんに、ちょっとドキドキしながら笑ってしまった。


「期待に応えられるように頑張りますね!」


 久しぶりに会ってるとはいえ、慣れるんだろうかこのドキドキ。イケメンめ、無駄にキラキラしちゃって尊い! 尊すぎるよ! もういっその事、開き直ってこの幸せを噛みしめるか事にするか……。

 スポーツ一筋で恋愛なんてしてこなかった私は、友達と一緒にアイドルとデートするなら、の妄想に花を咲かせていた事を思い出しながら、なんとなくそんな事を思っていたのだった。

 


読んでいただきありがとうございました!

今週もう一話更新します♪


ではまぁ~( ≧∀≦)ノ

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