【65】属性判断
「ああ、そうだったね」
ぱぁっと、見るからに表情が明るくなるクロードさん。その笑顔を見たら、不安だった気持ちも少しだけ飛んでいった。この大人な子犬さんは、私の事を此処にいて良い存在だと認めてくれているようだった。そんな嬉しそうな顔を見ていたら、つられて私も笑顔になっていた。
「あー、そろそろいいかい?」
二度目の咳払いと共に、正面から居心地の悪そうな声が聞こえてきた。再びあわてて、今度こそ正面に向き直り、頭を下げた。
「も、申し訳ございません!」
「いいよ、こっちも落ち込ませるような事を言ったんだ。その様子だともう大丈夫なのかな?」
パッと顔を上げ、フィリップ様を見る。ニヤニヤと楽しそうに笑い私を視線を合わせてから、クロードさんに目をやり、再度視線を戻してきた。
その意味が、なんとなく、なんとなくだけど! 分かった気がして、恥ずかしさが込み上げてきて、思わず顔に手を当て俯いた。ち、違うんです、そういうんじゃ……。言いかけて言葉には出来なかった。というか、はくはくと口だけが動くが恥ずかしすぎて音に出来なかった。
「フィリップ様、アリスをからかわないで下さい」
「クロードが珍しく女性に優しいから、ついね。そっか、健気で良い子じゃないか」
「な、何を言ってるんですか。聞いていましたか? 私とアリスは友人ですよ」
「そう? ふーん」
嬉しそうに友人と答えるクロードさん。全然納得していない様子のフィリップ様。二人にはだいぶ温度差があるようだった。
ふーんって……、見た目の割に子供っぽさを感じるこの男性は、いったいどんな人物なのだろうか。聞くのが怖いような、聞かないといけないような……。
「時間もあまりありませんし、本題に入りたいのですが」
「あぁ、わかったわかった。属性判断だったね」
クロードさんも、フィリップ様も切り替えが早い。さっきの悪ふざけ? も無かったかの様に真面目な顔をしていた。
フィリップ様は、どこから出したのか、一枚のA3くらいの紙をテーブルに出した。紙の中央には丸い大きな魔方陣のような模様が描かれていて、四隅には小さめの魔方陣が四つ。そしてさらに、中央に手のひらサイズの文字びっしりの小皿に魔法石がひとつ乗せられた。
「ど、どこから出てきて……」
すごく不思議なことに、フィリップ様は何も持っていなかったのだ。着の身着のまま。なのに、ふっと次々と道具が出てきた。あまりの様子に思わず声が漏れてしまった。
「ん? アリスの世界にはこういうのは無いのかな?」
フィリップ様は、疑問に思った事が不思議だったようで、準備をしながら私にたずねてきた。
「あ、すみません。はい、魔法は一切無い世界でしたので……」
「そうか、それは大変そうだね」
「いえ、魔法は無かったのですが、科学がありましたから」
「なにそれ!? カガク?!」
準備の手を止め、フィリップ様がテーブルを飛び越さんばかりに前に乗り出してきた。
「フィリップ様! 落ち着いてください!」
クロードさんが両手を伸ばして、フィリップ様を止める。
「カガクって何?! 気になるじゃないか!」
「本日は、属性判断が先です。そのお話はまた次の機会になさってください」
「えー、クロード絶対に次とか遅いよね?」
「それは、フィリップ様次第かと思いますが」
「うっ……、絶対に機会を作ってもらうからな」
「お約束致します」
「アリスも、絶対にそのカガクとかいうのの事、教えてよね!」
「は、はい……」
まだ属性判断も始まってもいないし、何もないと所からものが出てきた説明も聞いてないが、はぁとため息を付きたくなるような状況だった。
「さぁ、準備だ整ったよ」
すらすらと紙に文字を足していたフィリップ様が、静かにペンを置きこちらに向き直った。
「そこまで調べる必要がるのですか?」
「生まれてから一度もやったことがないんだろう? だったら、一度に全部調べた方が良いじゃないか」
「信じてはいますが、くれぐれも……」
「分かってるよ。クロードにもアリスにも絶対に不利になら無いようにする。そもそも守る為のモノにするんだ。そんなに心配しなくても大丈夫だよ。僕を誰だと思っているんだい?」
「……」
誰なんでしょうかね? 小声でも聞こえてくる距離の話声を、私はなるべく聞かないように聞こえてない風に装った。クロードさんは信用してるし、そのクロードさんが信用してる人なのだ。悪い様にはされないだろう。しないで欲しい……。
出来上がったテーブルの上は、なんとも儀式的な雰囲気が漂っていた。別にスモーク焚いてるわけでも、部屋が暗いわけでもないけど。テーブルの上がとってもファンタジーな状態だった。
「私が良いと言ったら、アリスはそちらの小さい魔方陣に手を乗せて、少しずつ魔力を流してみてくれるかな?」
「分かりました」
そう言うと、フィリップ様は静かに目を閉じて小さな声でぶつぶつとなにかを呟いていく。それは、砦でエルさんたちが結界の魔法を施していた時と同じように、私には理解できない言語だった。
少しして、紙全体がうっすらと光り、フィリップ様が閉じていた目を開けた。
「アリス、手を」
「は、はいっ」
神秘的な光景に目を奪われていた私は、フィリップ様に名前を呼ばれあわてて紙の隅に
手を置いた。
「アリス、ほんの少しだ」
隣から囁くようにクロードさんが指摘してくれた。そう、ほんの少し。気を付けないといけないと、クロードさんから言われていた言葉だ。
王都に来てからも、日々の魔力操作は欠かしたことがなかった。時々リュカに見てもらいながら訓練だけはやってきたのだ。
私も目を閉じて、自分の中の魔力に意識を向ける。じんわりと暖かくなった真ん中から、細く少ない量の魔力を掌まで移動させ紙に染み込ませる様に流していった。
いよいよアリスの属性が判明されます!
といっても、もうほぼほぼ分かってますけどね(汗)
クロードさんと、お友達宣言やっと出来ました♪
なんか、お友達以上な雰囲気ではありますが、まだおともだちです(苦笑)
読んでいただきありがとうございます。
体調不良なのですが、精神的なものなのでなんとも言えず……
更新予定がハッキリとお知らせできなくてすみません(泣)
調子の良い日には更新していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します(。>д<)
ではまた~(*´∀`)




