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【63】豪華なレストラン


「クロード様」


 カタンっと馬車がゆっくりと停車して、御者の人が扉越しに声をかけてきた。

 もう着いたのかと思うと同時に、緊張してきた。たぶん偉い人にこれから会う。どう気を付けるかもわかんないけど、失礼のないように気を付けよう……。

 御者さんの声を聞いて、リゲルもフィーもお互いのピアスに入っていく。


 移動時間がどのくらいだったのか、ちょっと分からないくらいの濃密な時間だった。馬車の中だったけど、砦の隊長さんの執務室にいる時の感じで、とても懐かしかった。


 ガチャリと馬車の扉が開かれ、眩しい朝日が入り込んでくる。


「アリス、行こうか」


 そう言ってクロードさんは、私に手を差しのべてくれた。ちょっと緊張だかなんだか分からなくなりながら、グッと気合いを入れてクロードさんよりもの手を取った。


「はい……」


 先に降りたクロードさんに続いて、私も馬車の階段をゆっくりと降りる。日本ではまず出来ない体験にドキドキだ。まるでお姫みたい……。なんて、ほんのり顔も熱くなる。

 ふわふわした気持ちでいると、クスッと笑い声が隣から聞こえてきた。


「わ、笑いましたね……。」

「すまない。あまりにも可愛らしくて」

「か、かわいって! あ、あんまりそういうこと言わないで下さいよっ」


 ほんのりが、一気に温度を上げた。


「気を付けよう」


 気を付ける気があるのかないのか、クロードさんは楽しそうに笑いながら、手を取ったまま先を促した。それにしたがって先を見ると、なんとも豪華なレストラン? の入り口が私たちを出迎えてくれた。


「すご……」


 思わず漏れ出た感想に、あわてて口を押さえる。そろーっと隣を見上げれば、口元がわずかに震えているクロードさんが見えた。


「しょ、しょうがないじゃないですか! こんな立派なところ、見たことも来たことも無いんですから!」

「私はなにも言ってないよ」

「顔が笑ってます!」


 日本にはもちろん、リュカのお店の近隣にもこんなお店はない。もっと庶民の食堂的なお店しか見たことなかったのだ。一生のうちに一度だって入ることの無いだろう店だ。


「ここの店は我が家が出資していてね。多少の融通が効くんだよ」


 我が家。出資。投資家さんですかね? 店構えからして、そううとうなお家なんでしょうね

……。

 ちょっと気が遠くなりそうな話だった。ついこの間まで学生だった私が(卒業し損ねちゃったけど……)そんな話しを聞くなんて、驚きの人生である。


 融通が効く。と言うお店の扉がゆっくりと開き、中から執事風の初老の男性が姿を表した。


「いらっしゃいませ、フェシュネール様」


 フェシュネール? 執事風のおじさまは、クロードさんをそう呼んで、深く頭を下げた。初めてクロードさんの名前を知りました。クロード・フェシュネール。そう言うらしい。

 

「こんな時間にすまない。私のわがままを聞いてくれてありがとう」

「勿体ないお言葉です。到着早々申し訳ございません。すでに奥の部屋でお連れの方がお待ちでございます」

「もうか?! ごほん、それはすまない。では急ごう」


 私丸無視ですかね? まぁ、どんな挨拶して良いか分からないし、自分の立場も分からないのでいいんですけど……。

 深くお辞儀をしているおじさまを見ていると、頭を上げるタイミングでパチッと目があった。

 目が合うなんて思っても見なかった私は、あわてて会釈程度のお辞儀をすると、スッと視界が遮られた。クロードさんが私とおじさまの間に入ったのだ。


「こちらでございます」


 なに? なんで目の前に入ってきたの? 不思議に思うも、何も無かったかのようにおじさまは、先を歩いて私たちを目的の部屋まで案内し始めた。

 レストランなんだけど、内装がすごく綺麗だ。敷かれた絨毯で足音は消され静かだし、その絨毯の刺繍の模様が複雑で綺麗としか言いようがない。土足で歩いている事に罪悪感がわいてくるけど、きっとこっちにはクリーンの魔法があるし、もしかしたら汚れが付かないように何か魔法でも施されてるんじゃなかろうか。便利な世界だ。

 下もすごいが、上もすごい。天井も高くて解放感がある。エントランスホールにはきらびやかなシャンデリアが、自分が主役のように存在を主張していた。

 入り口の奥は、テーブルが余裕の配置でいくつも並べられていたが、おじさまが案内してくれたのは、そちらではなく右に続く通路の方だった。エントランスのシャンデリア程ではないけど、等間隔にそのミニ版みたいな証明が廊下を華やかにしていた。

 広さ十分な個室の扉が数部屋続き、突き当たり一番奥の部屋まで案内された。


「こちらでございます」


 クロードさんと一緒に扉の前で立ち止まり、開かれるのをただ待つ。ごくりと喉を鳴らしてしまうほどの緊張感が私を襲った。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」


 私の心情を察してか、優しい声が上から降ってくる。目線だけ上にあげ、クロードさんと視線が合うと案の定あの優しげな笑顔が見えた。

 ふよふよと口元が緩んでしまう。止めて! 今その顔されれると真面目な顔出来ない!

 緊張を和らげようとしてくれてるんだろうけど、別の意味でどうしようもなくなってしまう。すーっと大きく一度深呼吸をしてから、ぐっとお腹に力を入れ重心を保った。


「アリス? 戦いにでも行くのかい?」


 気合いを入れているのに、茶化してくるクロードさん。私はムッと眉間にシワを寄せてクロードさんを怒った。


「止めてくださいっ、こっちは真剣なんですからっ」


 おじさまが居る手前、クロードさんにだけ聞こえるくらいの小声だ。


「少しは、緊張が溶けたかい?」


 緊張とは別のなにかが、大変な事になってますけどね! 自分の感情が忙しくて、処理がなかなか追い付かない。スーハースーハー深呼吸を繰り返していると、クロードさんからも、極力こちらを気にしない風にしてくれていたおじさまからも、笑われてしまった。


「クロード様のせいですからね……」

「ア、アリス……」


 他の人が居る前では、これでいいのだ。わざと様を付けてちょと拗ねてやると、クロードさんは少し困り顔で笑うのを止めてくれた。


「よろしいでしょうか」

「あ、あぁ」


 すっかり元通りのおじさまは完璧である。何も無かったかのように、扉を叩いて中に居る人物にこちらが来たことを告げた。


「フェシュネール様が到着いたしました」


 返事は無いが、一拍置いて扉を開けるおじさま。扉が開ききると、クロードさんが先に入り、私も後を追う形で中に入っていった。

クロードさんのフルネーム、やっとでました。

クロード・フェシュネールです。

モルガンさんや、フランクさん、エルさにも、もちろん家名はありますが、いつでてくることやら……。

名前って、難しいですね(・ωく)


次回更新は週明けです☆

ではまた来週~( ≧∀≦)ノ

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