【62】会う人はどんな人?
かお、カオ、顔……。私の顔……!
「か!顔ですか?!」
かぁーっと一瞬で顔が熱くなる。ひぇーっ!
「アリスが苦手に思っているのも分かっているのだが、久しぶりにそう反応されると……」
反応するとどうなんですかね?! クロードさんは、頬を赤くしていまだにこちらを見ない。そんなクロードさんを見て、ドキドキが止まらない。
「べ、別に苦手とかでは、無いんですけど……。すみません、なかなか治らなくて……」
「いや、段々と慣れてくれればいい」
「は、はい……」
ぺちぺちと頬を叩いてふぅーっと深呼吸をして、私は何とか落ち着こうと努力した。
なんとも微妙な会話だ。お店で働いてて分かったんだけど、やっぱりこっちの人って基本的に顔面偏差値が高い気がする。作りが外人風だからかなぁ。この中に私がいるって違和感半端無いけどね……。まぁ、映画好きの私としては毎日が刺激的で嬉しいんだけど。
その中でも、クロードさんは一番私の好みだったりするわけで。しかも、恩人で親切で精霊っていう繋がりもあったりで、どうしても他の人たちとは違った感情なんかが入ってきちゃうもんだから、いまだにドキドキは収まらない。
推す存在としては、とてもじゃないけど治らないと思う。ごめんなさい。
「今日、この後会う方なんだが」
「あ、はい。属性を調べてくれる人ですよね?」
「そうだ、それと精霊の件に関して報告すると言ってた方でもある」
「それって、クロードさんの知り合いですよね?」
「あぁ」
んん? クロードさんがその知り合いを方って呼ぶってことは、クロードさんよりも偉い人なのかな? そんな人と知り合いって、クロードさんはどんな位置にいる人なのかな? 私が会っても大丈夫なのかな?
『それって、あいつよね? えっと、フィリップ!』
フィーも知っているのか。リゲルと話していたのを中断して、クロードさんの肩に戻ってきた。必然的にリゲルも私の肩だ。
「もしかして、フィーの事も話したんですか?」
「もちろん話してある」
「なんかすみません。報告義務は無いんですね? 私たちのせいでバレることになったみたいで」
「そう言う訳ではないのだがな……」
「え?」
「いや、アリスが気にする事はない」
なにか言ってたけど、よく聞き取れなかった。気にしいなくて良いって言うけど、ちょっと申し訳ない……。
「フィーはよかったの?」
『私? 別にどっちでも。名前は初めて知ったけど、あいつクロードの近くによくいたから、わりと見たことあるのよ』
「そ、そうなんだ」
クロードさんの表情が心なしか困っているように見えるのは、気のせいだろうか?
まぁ、クロードさんより偉いだろう人を【あいつ】呼びしちゃうもんだから、心中複雑なのだろう。精霊は階級とか気にしないんだろうな、きっと。
「まだこちらの事あまりよく分かってないんですけど、なんかすごい人? なんですか? 私なんかの為に、時間作ってもらっちゃって本当に大丈夫だったんですか?」
どんどん不安になっていく。クロードさんの知り合いって時点で、かなり安心要素が高いんだけど、それにしたって身分高そうでちょっと怖い。
「特殊案件だからね。アリスは何も気にしなくて良い。事情を聞いて、むしろ喜んで時間を開けてくれたよ」
「た、確かに特殊も特殊ですけど、喜んでって……」
違う方向で、ちょっと怖くなる。
「色々と聞かれるだろううけど、国のためと言うか、興味の方が強いのだと思う。あまり構えなくても大丈夫だ」
「はぁ」
ぽんっとこっちにやってきてしまった私は、自分の立ち位置も分からなくて、ものすごく宙ぶらりんな存在なのだ。ほら、ラノベとかだと、使命が! とか、 開拓! とか、聖女だとか勇者だとか、悪役令嬢だったり、いろいろとあるけど、そんな神託も受けてないし、連れてきたのはリゲルだし。
今回は何かの分岐点になるんじゃないかな? と思ってる。自分の属性知って、上手くこっちでもやれること増やしていこうかな? って。
そんな風に自分の中で考えていたら、ひょいっとフィーが私の目の前まで飛んできた。
『そういえば、アリス』
「なに?」
『あなたちょっと太った?』
「え!? はぁ?! そ、そうかな!? 確かにアンリエットさんのご飯美味しいんだけどっ。そ、そういえば最近全然走れてない……。やばいかも。このままじゃデブまっしぐらかな……」
ババっと体を覆うように腕を回して、あちこち触りまくった。確かにあちこちお肉付いてきたかも……。衝撃的な事実を確認していたけど、この馬車にはもう1人乗っている事を思いだしピキッと固まった。
ギギギっと固まった首と目線を、正面のクロードさんに向けると、ほんのり赤くなった顔で
「アリスはそのくらいの方が、いや、もう少し食べてもいいと思う……」
そんなこというもんだから、絶対この人まだ私が成長するって思ってる! 18なんて、もうそんなに上には伸びないんだから!
「た、食べてもって、私もうそんなに背は伸びませんから!」
ちょっと怒り気味で怒鳴ってしまった。確かに身長は伸びないかもしれないけど、ささやかな胸は成長するかもしれない……。
「いや、分かっているっ、アリスは成人しているのだろう。ちが、そうじゃなっ、……すまなかった。アリスは、その、少し痩せすぎだと思っていた。だから、今のままでも十分いいと思う……」
あわてて訂正するクロードさんは、よほど焦ったのか、口調も少し崩れていた。
「確かに試合に向けて減量したり、体重管理したりしてた時期でしたからね。そりゃ痩せてましたよ……」
「そんなにハードな訓練だったのか? アリスは努力家なのだな」
「いや、真面目に取り組んではいましたけど、一応優勝目指してたんで……。でもそうですね。もう大会も出れなかったし、少し見直す良い機会かもしれませんね」
ハードな人生突入しちゃったけど、ハードな練習しなくてよくなった訳だし、これからっていうのはちょっと望み薄いかもしれないけど、もう少し食べて適度に運動すれば、出るとこ出るかもしれないし……。
私の機嫌が戻った事で、クロードさんも落ち着いてきたみたいだった。
「どこか走れる場所無いかなぁ……」
窓の外を見ながら、なんとなく走れそうな場所がないか探してみるけど、王都の中にそんな場所は無く、ランニングしてる人ももちろんいない。生活に慣れるのと、仕事を覚えるので、すっかり忘れていたけど、走ることを思い出した私の頭の中は、その事でいっぱいだった。
は、走りたいなぁ……。うずうずとしている最中も馬車はカタコト進んでいた。どこに行くのかな? なんて始めは思ったけど、何処であろうと私の知っている場所では無いことだけは確かなので、気にするのを止めた。
目の前には格好いいクロードさん。周りをチョロチョロとするフィーとリゲル。なんと幸せ空間なんだろうか……。私は走る計画を少しだけ端に追いやって、しばらくその光景いを堪能していたのだった。
読んでいただきありがとうございました!
次の更新は明日です(*≧∀≦*)




