【60】久しぶりの隊長さん
やっと!
前日のお風呂はちょっと念入りになってしまったのは仕方ないと思う。さらには、朝食後の自身へのクリーン魔法も念入りだったりする。
洋服もお店に出る時は、制服みたいにいつも同じおとなしめのワンピースなんだけど、今日はちょっとコジャレた風なやつにしてみた。
フレアスカートは生地がたっぷり使ってあって揺れる度にフワッと膨らんでくれたし、トップスは白シャツなんだけど、そでは裾に向かって膨らんでて形が気に入ってた。清潔感も大事だし、シンプルなんだけどお気に入りの一着だった。
だってね、砦にいた時は隊服だったし、初めて会った日は制服血まみれ。今考えても残念で仕方ない。
隊長さんに借りている時計を見ると、後数分で2刻半だった。私はあわててコートをつかんで部屋を出た。
「わぁ!」
「ひゃっ!」
部屋を出たらリュカがノックするところだった。
「ごめんっ」
「あぁー、ビックリした。どうしたの?」
「隊長が来たから呼びに来たんだ」
「え?! もう!」
時計を見てもまだ時間前。さすが軍人さんというか。5分前行動だったか!
「へぇー……」
「な、なに?」
リュカは一歩引いて、私を上から下までじっと見て、ニヤニヤした顔をしてきた。
「いや、いいんじゃない? いつもより可愛いみたいだし」
「べ、べ、別に! そんなことないし! お店じゃないから違う格好してるだけだし!」
リュカのにニヤケ顔のせいだ。流すことが出来ずにテンパってしまった。
「ほら、早く早く! 隊長待ってるよ!」
「リュカ! からかわないでよ! もぉー!」
とりあえずリュカの肩をポカスカ叩いてから、急いで階段を下りた。もう、変に意識しちゃうじゃんか!
一階に下りると、開店前だった事もあり裏の入り口でアンリエットさんと話す隊長さんがいた。久しぶりの隊長さんに、心臓が跳び跳ねる。く、苦しい……、ってか、久々に眩しい……。
「あぁ、アリス来たかい」
悶えている私に気がついたアンリエットさんが、生暖かい目でこちらを見ていた。
「お待たせしてしまって申し訳ございませんっ」
「やぁ、久しぶりだねアリス」
「は、はい、お久しぶりです」
これまた久々に聞く隊長さんの声。もう私はクラクラしてきて立ってるのもやっとだった。
「では行こうか」
「は、はい」
「アンリエット殿、では失礼する」
「はい、クロード様、アリスをよろしくお願い致します」
アンリエットさんは隊長さんに深くお辞儀をしていた。
アンリエットさんの横を通りすぎる時に、小声で「頑張ってきな」と激励まで頂いてしまった。ちょっとドキッとしたけど、その激励は今日会うもう一人の対応に対して。だと思われる。リュカなんかは、面白がってガッツポーズとかしちゃってるけどね……。
「行ってきます」
リュカとアンリエットさんに挨拶をして、私と隊長さんは家をでた。
先を行く隊長さんに着いていくと、お店の前に立派な馬車。朝早いこの時間では、目に止める人もいないけど、ちょっとビックリしてしまった。
手慣れた風に隊長さんは、待っていた御者に目配せをして馬車の扉を開かせた。
「さぁ、アリス」
馬車に乗り込むため、隊長さんが私に手を差しのべてくれる。一瞬反応に困って固まってしまった。これは、エスコートだろうか……。
ニコリと良い笑顔で先を促す隊長さん。これは手を取らねばならないシチュエーションだろう……。私は観念して大きく深呼吸してから、隊長さんの手を取った。
「あ、ありがとうございます」
その様子に満足した様に、隊長さんがさらに微笑んだ。やめてー! 久しぶりな上に、これ以上は耐えられない!!
熱くなる顔を隠す為に、足元を見る風を装って俯きながら馬車に乗り込んだ。
馬車の中も豪華だった。いや、普通の馬車の内装なんて知らないけど、たぶん豪華なんだと思う。深い赤の手触りも座り心地も良さそうな座席に、壁もカーテンも同系色でまとめられていて、所々キラキラと輝いている。エフェクトがかかってるとかそういうんじゃなくて、事実宝石か何かが填まっているのだ。
三人はゆうに座れそうな座席の左右どちらに座ったら良いかもわからなかったが、考える間もなく右側に座ってしまった。
するともちろんの事ながら、隊長さんも馬車に乗り込んでくる。さすがに隣ではなく、向かいの座席に。ご対面である。
二人が乗り込むと、御者さんが扉を閉めてくれた。
しばらくすると、馬車が揺れて動き始めた。車に比べたら少し揺れはするけど、とても静かで快適だった。やっぱり貴族が使う馬車は良いものなんだろうな。と座席のクッションをポフポフしていると、正面から堪えきれなかったのだろう笑い声が聞こえてきてハッとした。
「こちらの暮らしにはもう慣れたか?」
「は、はい。リュカの家族はとても良くしてくれています……」
顔から火が出そうな勢いでアッチッチだったけど、そうやら隊長さんはその事には触れないでいてくれるらしい。
「それなら良かった。帰還してから事後処理が忙しく連絡も出来なくてすまなかった」
「いえ! お仕事は大事です! 私は大丈夫でしたので、お気になさらずに!」
「そう言ってもらえると助かる」
隊長さんに謝られて、あわてて手を振り否定した。アンリエットさんに教わったことなんてさっぱりとすっぽ抜けて優雅のゆの字も無い。
あ、と動きを止めて両手を膝の上に置き、しずしずと畏まる。
「どうかしたか?」
「い、いえ。無作法でした。すみません……」
「……」
俯いていると、隊長さんも黙ってしまった。なんとなく、なんとなくだけど、空気が落ちた気がしてそーっと視線を隊長さんに向けると、なんとも寂しそうな顔をしている隊長さんがいた。
「た、隊長様?」
以前は【さん】付けだったけど、アンリエットさんに【様】と直した方が良いと言われ、言い換えたのだけど、ものすごくシュンとされてしまった。なんだそれ?!
「アリス……」
「は、はい」
「とても丁寧な言い方を学ばれたのだね」
「はい、アンリエットさんに、少しだけですが教えていただきました」
「そう……」
だからなんで!? そんな顔されなくちゃいけないの?! ダメだった? おかしいのかな!?
隊長さんは、とっても残念そうというか、悲しいというか、心なしか肩まで下がってしまって見えた。
「お、おかしいでしょうか?」
「いや、大丈夫。ただ……」
「ただ?」
しょんぼりした隊長さんが、ちょっと眉を歪めてまっすぐ私を見ていった。
「アリスにそう畏まられると、寂しいきがするね」
久しぶりの隊長さんに、テンパり気味のアリスでした(*>д<)
次回更新ですが、週明けに予定が詰まっているので、申し訳ないのですが中ば頃になります。
毎日更新できなくてすみません(汗)
ではまた来週~( ≧∀≦)ノ




