【55】マルクさんのプレゼント選び
10/27 硬貨の単位をひとつ増やしました。銅貨100円程度。
「ぬいぐるみとか、香水とか、ブレスレットとか、かな?」
一見すると普通のプレゼントにも聞こえるが、外していると言うことは何かが違うと言うことだろう。詳しく聞いてみれば、ぬいぐるみはどうやらまじないなんかに使われるちょっとコワイ感じのやつで、香水は店員に進められるまま買った彼女の好みとは違ったものだったとか、ブレスレットら数珠みたいな服装と合わせるのが大変そうなやつだったらしい。
「マルクさん。ちゃんとリサーチしてます?」
「え? サプライズだから嬉しいんじゃないの?」
サプライズ。確かに聞こえは言いかもしれないけど、相手が嬉しいかどうかは謎である。
「サプライズは確かに良いかもしれませんけど、好みに合ったモノでなければ喜ばれませんよ?」
「そうなの?!」
心底驚いた様子のマルクさんにこっちがビックリである。ダメだなこりぁ……。
「彼女さん、どんな方ですか?」
「聞いてくれる?!」
聞かなきゃ選びようがないんで仕方なく、嬉しそうに惚気までたっぷりと彼女の事を聞く羽目になったのだった。
「どう? 何か良い感じのありそう?」
「んー、そうですねぇ……」
マルクさんから聞いた彼女さんの情報からすると、どうやら見た目は可愛い系らしいけど、持ち物は可愛いものよりシンプルで上品なものが好きそうだった。
店内で小物類を置いてある商品棚に向かい、どれなら良いかな? と、物色してみる。
「無難なものはハンカチとか髪飾りとかなんでしょうね。マルクさん、そういうの贈ったことありますか?」
「贈ったこと、無いです……」
若干しょんぼりするマルクさんに、それならと髪飾りの置いてある棚に移動する。
「贈り物の場合、色とかって重要ですか?」
ふと、隊長さんは髪色と同じピアスを付けていたなと思い、マルクさんに聞いてみた。
「んー、大抵恋人の場合は自分の色を贈るのが一般的かな」
「そうなんですね。じゃあ今回はマルクさんの色を入れた髪飾りでいってみましょうか」
そう言って、数ある髪飾りの中から、マルクさんの髪の色と同じ石の入った物を3点チョイスしてみた。
「私としてはここら辺がオススメなんですけど、マルクさん的に彼女さんに似合いそうなのつて、この中にありますか?」
「どれも同じように見えるんだけと……」
3つの髪飾りをジーッと見ながら、マルクさんがボソッと呟く。
「それ、絶対に言っちゃいいけないヤツですからね……」
「あー、はい……」
ポリポリと頭をかくマルクさんを横目に、3つの髪飾りを棚から取り出し、近くの台に置いた。
「彼女さんの髪の色は、薄いオレンジですよね。マルクさんの色は赤と青なのでこの3つを選んでみました」
どれも同じ。と言ってしまうマルクさんに変わって、どれも違うと言うことを口で説明する事にした。
「まず一つ目です。これは草の蔓がモチーフの流れるようなラインが特徴的な、銀製の髪飾りです。所々に木の実をあしらった、シンプルでいて複雑さを兼ね備えた感じになってます。木の実の色に赤を使っているので、色味的にも問題な良いですね」
それを手にとって、マルクさんに渡す。するとふーんと角度を変えて髪飾りをじっと観察していた。
「次にこれです。これは銅製なんですが、葉をモチーフに青のストーンを一つ一つはめ込んだものです。ストーンのカットも繊細で、土台の色とも良く合うと思います」
マルクさんは続いて紹介された髪飾りも、手に取り観察を始める。
「最後がこれです。金製で小ぶりな花なんですが、花びらが幾重に重なりあって繊細で、中央に青の石が大小大きさを変えてあしらってあります。大きさ的にも派手になりすぎず、普段使い出きる髪飾りです」
最後のひとつを手に取ったマルクさんは、んーっと唸っては目をつぶって悩んでいた。きっと彼女さんを思い浮かべて悩んでいるんだろう。
「ち、ちなみに、アリスっちのオススメは?」
遠慮がちに聞いてくるマルクさんに、スッとひとつを手に取った。
「オススメは、銀製の蔦のやつですかね。シンプルかつ繊細で、マルクさんの特徴的な赤い髪色で、彼女さんの薄いオレンジと合わせても負けないと思います。お値段もお手頃かと……」
値段を含めて、一番似合いそうな髪飾りを選んでみた。銅製は安いし、金製はお高めだ。マルクさんの懐具合が分からないけど、手が出せない金額ではないと思うけど……。
「……最後のヤツって、ちなみに値段は?」
最後に紹介した金製の髪飾りが気になったのか、小声で値段を聞いてきたマルクさん。私もちょっとマルクさんに近づいて小声で答えてあげた。
「金製のは、銀貨3枚です。ちなみに、銅製のは大銅貨5枚で、銀製のは銀貨1枚です」
日本円で計算するとだいたい、大銅貨1枚が1000円。銀貨1枚が10000円だ。ちなみに、銅貨は100円くらいだった。銅製5000円、銀製10000円、金製30000円って感じかな?
マルクさんは銀製と金製の髪飾りをじーっと見比べて、ものすごく悩んだ表情をしていた。お財布の中身と相談中なのだろうか……。そっとマルクさんの側から離れて、一人にしてあげることにした。
「どうだい? よさげなのはあったかい?」
「アンリエットさん。一応髪飾りを3つ提案してみました。後はマルクさんの感性とお財布事情だけだと思いますよ」
ちょっと笑いながらそう答えると、アンリエットさんも笑いながら「そうかい」とマルクさんに優しい視線を向けていた。
二人で生暖かい視線を向けていると、ガバッと頭を上げて、マルクさんが髪飾りを1つカウンターまで持ってきた。
「決まりました?」
にっこり笑顔でマルクさんに聞くと、ちょっと顔を赤らめながら、髪飾りをカウンターに置いてコクリと頷いた。
「これにする……」
カウンターに置かれた髪飾りは銀製のものだった。
「ありがとうございます。プレゼント用に包むんで、お会計はこちらで」
アンリエットさんに会計を任せて、髪飾りを受け取りちょっと可愛くラッピングしてあげた。最後にラッピング用の青いリボンを結ぶ時に、気に入ってもらえますように……。と願いを込めて仕上げると、カウンターでアンリエットさんと笑い合っているマルクさんに、商品を手渡した。
「リボンは青にしておきましたよ、喜んでくれると良いですね」
「ありがとうアリスっち。相談にきて良かったよ」
「いえいえ、お話聞いて選ぶのも楽しかったですし、お買い上げしてくれてありがとうございました」
「またプレゼント選ぶとき、よろしくね」
「今度来るときは、少しはリサーチしてきてくださいね」
「わ、分かった。頑張ってみるよ」
最後には苦笑いになったマルクさんだったけど、プレゼントも決まって嬉しそうだった。
お店の入り口までお見送りして、私はマルクさんとお別れをした。
「そうだ、言い忘れてたけど」
「なんですか?」
なにやらにやにやとした表情のマルクさん。気持ち悪いから辞めて欲しい。
「隊長が、近々会いに行くって」
「はいぃ!?」
マルクさんの言葉に目が丸くなる。ビックリして心臓が止まるかと思った。
「なんだったかな? 話があるらしいよ? 手紙を書こうと思ったらしいんだけど、公式に手紙を出すと重苦しくなるしって悩んでたから、俺っちが言付け頼まれんだ」
「えっ? えっ?」
手紙の出し方に公式とかそうじゃないとかあるの?! ってか、会いに行くって、急すぎない?!
「かしこまった訪問とかじゃないみたいで、ふらっと寄るだけだからって。先触れは必要だろうからって。詳細はたぶんリュカが今日聞いてくると思うよ。んじゃ、俺っちは伝えたからねー」
「は!? え?! マルクさん?!」
「またねー!」
ヒラヒラと手を振って、今にもスキップしそうな勢いのマルクさんは、これから彼女のもとに行くのだろう。そんな人が私の問いかけに足を止めるはずもなく、颯爽と去っていったのだった。
隊長さんが来るの!? なんで!? え?! いつ!?
今朝、アンリエットさんとルアンダさんに指摘されたばかりの私は、分からないとは言いつつも、かなりテンパっていた。だって、あの、顔面偏差値がものすごく高い人が来るんだよ! 接点がほとんど無くなってたのに! いや、リゲルとフィー繋がりって、十分な接点だよね……。そうだよ、きっとそっち関係だよ。こっち来てから二人とも会えてないしね。たぶんフィーが会いたいとか、ツンとデレを発揮して隊長さんにお願いしたに違いない。でなきゃ会いに来る理由が見つからないもん。忙しい人なのに、優しいなぁ。
なんて、自分に会いに来る理由を自分なりに考えて、無理矢理バクバクの心臓を沈める努力をするのであった。
マルクさん。意外と女心が分からない人だったんです。
うまく行くことを願って♪
では、更新はまた週明けに~( ≧∀≦)ノ




