【54】フレデリクさんとポーション講座
「お疲れさまですフレデリクさん」
畑で作業中のフレデリクさんに声をかけると、しゃがんだまま眩しそうに顔を上げて振り返ってくれた。
「アリスさん、どうしました?」
眩しそうにしていたので、私も同じ高さになるように一緒にしゃがむことにした。
「アンリエットさんが、ポーションの在庫聞いてます」
目線を同じにした事で、フレデリクさんの表情が和らいだ。
「初級だったら3日前に作ったのが倉庫に10本くらいですかね。後は昨日作ったものが作業部屋に13本ありますよ。中級は2本で上級は今はありません」
「ありがとうございます。それがポーションの原料ですか?」
在庫だけ聞いて戻ろうかと思ったけど、フレデリクさんの手元にある草が気になって聞いてみた。
「はい。この薬草と蒸留水で初級ポーションが出来ます」
「へぇ。この薬草で作れるんですね」
「見たことありませんか?」
「はい。無いです」
フレデリクさんは、薬草を茶摘みみたいに上の葉っぱだけ摘み取って私に見せてくれた。
少しだけ青みがかった緑の綺麗な葉。可愛いことにハートの形をしていた。
「まぁ、どこにでも生息している訳ではないですしね。この薬草も本当なら森にしか無いんですよ。許可を得てアルトー商会ではこうして育てていますけどね」
「薬草育てるのに許可がいるんですか?」
「ええ。ポーションの種類によって薬草も違うんですけど、一般的な効果の低い初級ポーションの薬草は、許可を得れば育てられるんです。効果の高い薬草は、協会や王家管理の元でしか育てられません」
「え? でも、たまにお店でも高いポーション有りますよね?」
「あれは冒険者ギルドに依頼して、中級用の薬草を森で取ってきてもらうんですよ。育てることは出来ないけど、森から取ってくる事は禁止されてませんから」
「色々と決まりがあるんですね」
「それと、僕が作れるポーションは中級までで、上級は仕入れなんですよ」
「上級は作り方が難しいんですか?」
「単純に、魔力が足りないんです」
フレデリクさんが、見せてくれた薬草を籠に入れ、片手を閉じたり開いたりしていた。
「知識はあっても、魔力が足りなければ作ることは出来ませんから」
「そうなんですね。知識があれば私にもポーション作れますか?」
話の流れ的に、深い意味もなく聞いてみた。ゲームでよくあるポーションが作れるってなんかすごいじゃない?
「アリスさんって、水属性か光属性に適性があるのですか?」
「ん?」
「え?」
あれ? またやっちゃった? 二人して頭に?を浮かべて見合ってしまった。
これはあれだ。作るのに属性が関係しているんだな、きっと。確か私、水魔法は問題なく使えたはず。
「あ、はい。水属性の適性はあるみたいです」
「じゃあ、理論上は上級までですね。後は魔力次第です」
「上級より上もあるんですか?」
「それより上だと光属性の方が作れる特級ですね。瀕死や欠損も再生することが出来ます」
「ひ、瀕死に欠損ですか……」
なんだか怖い話しになってきたな……。そう言うことが起こる事もあるってことだよね。
「まぁ、光属性持ちは希少性の高い属性ですから、だいたい分かった時点で神殿に登録されてしまって、外ではあまり見かけませんけどね」
何それコワイ。そういえば、まだ適性診断してなかったけど、どうなってるんだろう。
王都に来てからまだ一度も隊長さんと会っていないから、すっかり忘れていた。
色々と規格外らしいから、自分で神殿行かなくて良かったのかも……。慎重に行動しなきゃなぁ。
「ポーションとしては特級までありますが、一般に販売しているのは上級まで。特級は神殿にしかありません。たまに似た効果のあるポーションがダンジョンから出てくる事もみたいで、そういうのはギルドで買い取ったりして販売してるみたいですよ。さすがにうちでは特級の仕入れは出来ないでけどね」
次々にファンタジー用語が出てきて、コワイと思いながらもワクワクしてしまった。
ダンジョンやギルドもあるんだぁ。まだ王都観光も全部出来てないし、知らなかった。今度リュカに連れてってもらおうかな。
そんなことを考えていたら、フレデリクさんかゆっくりと立ち上がった。
「んー! ずっとしゃがみっぱなしだと、さすがに疲れますね」
「あ、すみません。長々と聞いちゃって」
体を伸ばしたフレデリクさんに、私も立ち上がり慌てて謝った。
「いえ、お話しは楽しいんで大丈夫ですよ」
「色々と教えてくれてありがとうございました。アンリエットさんに在庫伝えてきますね。ポーション作り頑張って下さい」
「アリスさんもお店の方頑張ってね。また何か聞きたい事があったらいつでもどうぞ」
「はい!」
「ポーション作りも興味があったら教えますから」
「ありがとうございます!」
ちょっと長く話しすぎてしまったかも。私はすぐに建物内に入ってカウンターに戻った。
「遅くなってすみませんでした、在庫聞いてきました」
カウンターに戻ると、アンリエットさんは店内で男性のお客様とお話し中だった。
「あぁ、アリス。ちょっときておくれ」
「はい」
呼ばれて行ってみてみれば、説明を受けていたのは知っている顔だった。
「おっ、アリスっち! 元気してた?」
「マルクさん!」
砦でお世話になった魔物討伐部隊のマルクさんだった。
「お久しぶりです、マルクさんもお元気でしたか?」
「おぅ、最近までちょっと忙しかったけど元気してたぜ」
「私もリュカのご家族に良くしてもらって、元気にしてます」
「そりゃ良かったな」
「マルクさん今日はどうしたんですか?」
久しぶりの再会だったけど、お店に来たってことは何か欲しいものがあったんだろうと、マルクさんに聞いてみた。
「彼女へのプレゼントを探してるんだってさ」
マルクが答えるより先に、アンリエットさんが暖かい目でマルクさんを見ながらそう言うと、マルクさんは少し照れながら頭を掻いた。
剃んなマルクさんを見て、ふと砦でのやり取りを思い浮かべる。
「あぁ! お手紙の!」
ポンッと手を叩いて、会話に出てきた彼女さんの事だと思い出した。
「今度ステイシーの誕生日なんだ。だから、何か贈ろうかと思ったんだけど、良く分かんなくてさ」
「脳内彼女じゃなかったんですね……」
「ん? ノウ? なにそれ?」
「な、何でもないです! 彼女さんへ誕生日プレゼント贈るなんて素敵ですね!」
小声を拾われて慌てて誤魔化した。本当に彼女さんいたんだ……。
「若い子のプレゼントなら、アリスが選んであげな。私よりいいだろうよ」
「えー、アンリエットさんもセンス良いじゃないですか!」
「年の近い子が選んだ方が確実じゃないか」
そんなこと言われても、こっちの常識が私にはちょっとハードルが高い気がするんですが……。そんなことは言えず悩んでいると、マルクさんがバッと両手を合わせて頼み込んできた。
「アリスっちお願い! 彼女も18なんだけど、いつもプレゼント外してて……」
「一体何あげたんですか?」
「えーっと……」
マルクさんさあさっての方向を見ながら苦笑いを浮かべていた。
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