-37- 魔法を使ってみた!
「威力や火力を上げれば、攻撃魔法となる。対象を炙る焦がす燃やす燃やしつくすと、色々とやり方はあるが、アリスの魔力量からすると、全部出来てしまいそうだな……」
「燃やしつくすとか、怖いですね……。言葉だけ聞いても私はけっこうイメージ出来ちゃうので、気を付けます」
「見てもいないのにイメージできるのか……」
だって、炙るや焦がすは普通に想像できる。燃やすも、キャンプファイアしたことあるし、燃やしつくすなんて、ごみ処理場の見学やおじいちゃんの葬儀で火葬場に行ったことがあるから、そういう火力なんだとイメージできる。魔力量が多いみたいだから、たぶん出来ちゃうと思うと隊長さんに言えば、物凄く心配そうな顔で見られてしまった。そうでなくても、魔法を題材にしたアニメや映画なんかも見てきたわけで……。もしかしてと思ったけど、これが私のチート部分じゃなかろうかと思ってしまった……。
でも、冒険者として魔物を倒してーなんて、やりたいとは思わないけど……。できればのんびりスローライフの方が良い。
知らないところでやられるのは心配だと、出来そうな魔法を片っ端からこの場でやってみることになった。ただし、威力は半分程度に。
「本当に、魔法が無い世界にいたのか?」
「はい……」
「気分が悪くなったりはしていないのか?」
「えっと、ちょっと疲れました……」
「使いづらい魔法は無かったのか?」
「と、特には……」
どんどん魔法を試していく中で、隊長さんの眉間のシワがどんどん増えていった。訓練所もあちらこちら地面が盛り上がっていたり、的や打ち込み台なんかも傷だらけで焦げてたり。壁も所々剥げちゃったり……。自分でもちょっとやりすぎちゃったかな? って感じはしていた。でも、隊長さんは構わずにやって良いって言うし……。
『あなた、本当にこっちの人間じゃないの?』
『アリス凄いねー! 魔法少女みたい!』
途中からフィーやリゲルがピアスから出てきて、一緒に見学をしていた。そして私の魔法をみたフィーは、違うと分かっていても言ってしまいたくなるような事だったらしい……。そしてリゲル、魔法少女は恥ずかしいからやめてほしいです……。
結果的に私が使った魔法は、風で的を射抜いたり、吹っ飛ばしたり、切り刻んだり。爆弾みたいに地面を爆発させたり、的を炭にしたり。水でも的を貫通できたし、燃えちゃった的を大量の水で消していたり。とかとか……。
「すみません! さすがにやりすぎでしたよね! 直せるかな?! これじゃダメですよね!」
あせって爆発させてしまった地面を、手を突いて平らになるイメージで魔力を流せば、ボコボコだった地面がうねって元に戻っていた。
カマイタチ的な事を試した壁は、濡れて泥になった土を塗りながら乾燥させちょっと強めに魔力を流せば元通り。
水浸しの地面も、水分を抜くように水だけを浮かせ蒸発させた。
さすがに炭になったり穴が開いた的は直せなかったので、新しいものと交換ですかね? と隊長さんに話しかけると、信じられない物を見るように、目を丸くして固まっていた。
「あ、あの……、的壊しちゃってすみませんでした……。あ、ここでのお給金出るって聞いたんですけど、弁償するので引いてください。あ、でも、足りなかったら働いて返しますからっ!」
全然反応が返ってこなくて、心配になってきてしまう。やらかしてしまった感じがすごいする。
『この子、全属性使えるわね……』
「あぁ、そう、みたいだな……」
フィーと隊長さんの会話の中の【属性】に反応して、そーっと覗き込むように隊長さんに話しかける。
「属性って、調べられるんですよね? 王都で調べてもらえるってジェロームさんに聞いたんですけど……」
「アリスが知りたいのなら属性診断に必要な人物は私が用意するから、王都の教会には行かないでくれ!」
食い気味に隊長さんが声を上げた。ビックリしたけど、わざわざ調べに行かなくてもいいなら、お願いしちゃおうと「わかりました」と言えば、少しほっとしたみたいでやっと表情が和らいだ。
「それにしても、これだけ攻撃魔法が使えるとは……」
「使えるだけですよ、実際に戦うなんて事になったら、きっとうまくいきませんよ。戦争や戦う事なんて、私の日常にはなかったですから。今は出来そうなことを何も居ないところで使ってるだけです」
魔物に追いかけられ、咄嗟にとった行動は逃げることだった。魔法の存在を知らない時だったからとはいえ、同じ状況になって冷静に魔法を発動することが出来るとは思えない。傷付ける覚悟も殺す覚悟も全然ないんだから。
そんなことを考えていた私は、いつもより声のトーンが下がって、気分が落ちていた。
「だからたぶん、私には逃げる方があってるんだと思います。ちょっと転ばせてその隙に逃げるとか、壁作って閉じ込めてる間に逃げるとか。そんなのがちょうど良いんだと思います」
「そうか、そうだな。アリスがそういうのなら、この結果は誰にも言わないようにする。使えると知れば、出きると思われるだろうからな」
「はい。本当にすみません。もしもの時はなるべく邪魔にならないように、そこは頑張りますから……」
使えるのに使わない。使いたくない、使う覚悟がない事を、隊長さんはわかってくれた。すごく甘えた考えかもしれないけど、地球のしかも平和な日本から来た私には、この危険な攻撃の魔法は使えそうにない。ちょっと工夫して生活に取り入れたりは可能かもしれないけど、暴走しない限り自分の意思では使えない気がしたのだ。
「大丈夫だ、ちゃんと守るから」
ポンッと頭に手をおかれ、優しい声と笑顔が降ってきた。動作も気持ちもちょっとくすぐったかっしドキッとしたけど、この人がいれば大丈夫な気がして安心できた。それと同時に、王都に行けばあまり会えなくなると思うと、少し寂しい感じもしてしまった。私を助けてくれて、優しくしてくれて、注意してくれて、心配してくれて……。みんないい人ばかりだけど、中でも隊長さんはちょっと種類が違う気がしていた。その種類がどんな種類なのかは、まだ良くわからなかったけど……。
落ちていた気分も隊長さんのおかげで持ち直していた。持ち直すどころか、急上昇だ。落ちたり上がったり、私の心は世話しない。
「よっ、よろしくお願いします」
突然の頭ポンに熱くなって赤くなっているだろう顔を隠すために、深くお辞儀をして深呼吸をする。姿勢を戻してエヘヘと隊長さんに笑ってみせると、隊長さんはさらに優しく微笑んでくれた。
ボンっと音まで聞こえてきそうなくらい一気に体温が上がり、誤魔化しきれないほど動揺してしまう。
「そ、そろそろジェロームさんのお手伝いしてきますっ! 色々と教えてくれてありがとうございました!!」
早口に感謝を伝え、訓練所を走って出ていく。部分的に足を強化していた事を忘れて、壁に激突しそうになったけど、気合いでのりきり一気に廊下を走り抜けた私は、落ち着かなくなった心臓を静める為に胸元の服をぎゅっと掴んで隊長さんに言いたくても言えなかった言葉を心のなかで叫んだ。
その笑顔はダメですっ! 破壊力が今までと段違いですっ! 頭ポンからの笑顔とか!私をキュン死にさせる気ですかっ!!
肩にのったリゲルが不思議そうにこっちを見ていたけど、パニクった私には全然気が付けなかったのだった。
やっと、アリスの規格外の能力を書けました。ここまで来るのにだいぶかかってしまいましたが、まだまだ発展させていくつもりです。恋愛要素もだんだんと出せていければ良いなぁと。
次回更新 6/10 夕方頃です(^-^)/




