-35- 【閑話】少女?とクロード
1ヶ月目記念
書きたくてタイミングを逃していた、クロード視点です。
少し長めです。
私はクロード・ウィンテール。魔物討伐部隊の隊長をしている。幼少期から他者より精霊を良く目にしていた私は、精霊の事が好きだった。この世界で精霊の存在は幸福の証とされ、調べれば調べるほどにその存在を愛しく思えるようになる程に。しかし好きになる一方、学生時代に偶然に助けた精霊に色々な助言をされ、少し女性不信になりかけたこともある。
精霊のお気に入りとして、この時期からの友人の間では有名だった。そして、その助言に関して同情的な言葉をかけられることも多々あった。
そんな中、ある日いつもの様に精霊がフラッと現れ耳元で囁かれた言葉に、私は人生を大きく変えられることとなる。
『いつかあなたにとって大事な人がこの世界に現れるわよ』
そう聞かされ、女性不信気味だった私はいささか信じられないと思いながらも、いつかはそんな存在の人が現れるのかもしれないと、男女もわからないその人を待ちわびるようのなった。
まさか、本当に【現れる】とは思っても見なかったのだが……。
少年時代に言われたことも、戦争と魔物の討伐という殺伐とした時間を過ごすうちに段々と薄れていったが、あの日あの時、久しぶりに聞いた精霊の言葉で一気にその存在を思い出す。
『あっ! 来た! あなたの大事な人! あれ? 何か助けを呼んでる? わぁっ! 早くしないと食べられちゃうみたい! ここから少し東に行った草原辺りよ!』
突然の事はいつもだったが、その言葉も一瞬理解に苦しむ内容だった。
あわてて砦を飛び出して行った私になんとかついてきたのが、執務室で報告をしていたフランクで、たまたま廊下を走り去る様子を見ていたリュカは訳もわからずフランクに待機を命じられていた。
「隊長! どうしたんですか?!」
「人命救助だ! 詳しい説明は後だ! 今は急ぐ!」
『早く早くっ! あぁっもう遅いわよ!』
あせる精霊の言葉で、私もあせっていた。ちゃんとした準備も出来ず、それでもなんとか保護の付与されたマントと胸当てと剣だけを引っ付かんで出てきた私は、走りながらそれらを装着しながら足を動かす。途中強化もしたが、それでも精霊は『遅いっ!』と急かす。しびれを切らした精霊に強制的に飛ばされたのはこのすぐ後だった。
「た、隊長っ?!」
急速に加速され、身体強化をしていなければ体が悲鳴を上げているところだった。
『ほら! あの草むらの途切れたとこよ!』
「っく!」
なんとか歯を食い縛りスピードに耐えると、あっという間に精霊の言う場所に降り立つ。飛んでいるときから大きな気配が伝わってきていた。降り立つと同時に草むらから人が飛び出して来て、私にぶつかったが、強化中の為にたいした衝撃でもない。
「ぎゃっ!」
立ち上がろうとするその人を言葉だけで留まらせた。
「動くなっ!」
目前で迫り来る魔物は、今期の討伐でその多くを倒してきたシルバーウルフだった。目は赤く興奮していて口からは涎をダラダラと滴し、獲物が目前から消えてもなお、そのスピードは落ちなかった。
剣を手に取り更に腕の強化も施し、体を落として固定し剣を前に突きだす。
「はぁっ――――!」
グァ――――――っ!!!!
冷静さを失ったシルバーウルフは、草むらから姿を表すと同時に構えていた剣先にその額を貫かれた。
シルバーウルフの力が抜けきるまで油断は出来ず、深く突き刺さる剣をひねりトドメをさす。
大量の血が流れだし、突然大きな悲鳴が真下から聞こえ、すぐに静まった。
「しまった!」
あわててシルバーウルフを脇に倒し、飛び出してきた人物の生存を確認しようとして、手が止まる。
「しょ、少女、か……?」
血や涎まみれになってしまい、顔は良くわからなかったが、着ている服が少し変わっていた。それでも、成長途中と思われる胸の膨らみや、男性の服とは違う淑女なら着ないであろう丈の短すぎるスカートから、その人物が少女であると思われた。
「隊長! いきなり飛んでくとか、どんな魔法ですか?!」
この世界に飛行魔法は無い。せいぜい風を操り落下の衝撃を和らげる程度だ。それなのに、突然人が空を飛んで行けば、フランクも驚くはずだ。走ってきたフランクは、息を切らしながら私の側までやってきた。
「シルバーウルフですか? うわぁー、一突きとかスゲー。でも人命救助ってもしかして襲われてたんですか? って……、女の子?」
シルバーウルフを見た後、私の肩越しに見えた人影に、フランクが不思議そうに呟いた。
その視線から隠すように身に付けていたマントを少女にかけ、申し訳程度にしかならないが、袖口で顔にかかった汚れを拭ってやった。
「なんでこんなところに女の子が?」
「私にもわからない。精霊がここにいると……」
「あぁ、隊長お気に入りの精霊ですか」
「……どちらかというと、逆だ……」
別段精霊を好む人は男女ともに多い、隠すこともない事だったが、気恥ずかしさから隠すように呟いた。
「とにかく私は一度戻る。魔物の処理を頼めるか? すぐに戻るがこのままと言うわけにもいかないからな」
「あー、リュカに待機するように言ったので、あいつに任せても平気だと思います。弟妹が多いから、対応も問題ないかと」
「わかった」
フランクにこの場を頼み、少女を抱きかかえ砦に向かう。フランクのためにも早く戻らねばならない。シルバーウルフの血に他の魔物が集まってきてしまうかもしれない。
しかし意識は自分の腕の中にいる小さな少女の向かってしまう。
この子がそうなのか……。
若い頃に精霊に告げられた【大事な人】それ以外の情報は何も貰えていない。私にとってどう【大切】なのかは分からなかった。いくら気まぐれと言っても、精霊が悪意を運んでくることはなく、嘘も言わない。受け取る側が解釈を間違えさえしなければ。
この場合の【大切な人】とは、どういう事なのだろうか……。
走りながらぐるぐると回る思考に頭を悩ませながら砦に着くと、入り口で待っていたリュカが驚いた様子で駆け寄ってくる。
「森で少女を保護した。部屋に運ぶのでみててやってくれ」
空いている部屋を用意させ少女を寝かせると、後を頼んで私はフランクの元へと戻った。
魔物の処理を終えその場を洗い流していたフランクに声をかける。周りに魔物がいないことを確認し戻ろうとした時に、草むらにふよふよと光る塊をみつける。
『これ、あの子のよ。持っていってあげたら?』
近づくと精霊が鞄らしき物の上に漂っていた。いつもはふと居なくなる精霊が、ここまでしてくれることにも驚いた。フランクが荷物を持ち、砦まで戻るまで二人とも何も言えなかった。
この鞄も、あの服も、まったく見たことの無い作りだった。あの少女はどこから来て誰なのだろうか……。そればかりが頭を占めるのだった。
翌日に事情を聞けば、信じられないことばかりが告げられた。てっきり幼いかと思えば成人していると言う。異世界から来たなどと、普通であれば信じられないが、見たこともない服装や持ち物、読めぬ文字に子供でも知っているはずの常識の欠如。加えてこちらの精霊の存在。信じるしかない状況に、私を含めその場にいた皆が納得をするしかなかった。
この出会いが精霊に関してだとは思っていたが、まさか異世界から精霊と一緒に来ていたとは、それも驚きだった。さらには、自分自身が精霊と契約することになるとは、なんという幸運だと、それだけでも私にとって彼女が特別なのだと思わずにはいられなかった。
そして、そんな状況をあまり悲観することなく、くるくると表情を変え世話しなく動き回る彼女に自然と自分も笑顔になっていた。
自分の身分も立場も気にせず、媚びた様子もなく話しかけてくれる。時々あわてた様子で去っていったり恥じらう姿も見られたが、どうやら私達の容姿が彼女のいたニホンというところでは違うらしく、気後れするそうだった。どうりでエルやオルガンにも顔を赤らめていはずだ。それを聞いた私が安心した気持ちになり、それと同時に自分は何て心が狭いのだと自嘲した。
そんな彼女は、会えば何かしらの問題が発生していたり、行く宛の無い、私にとっての【大切な人】を保護しよう決めていたのに、自分で居場所をみつけてきたりと、違う意味でも目が離せない。この世界で生きていかねばならないだろう彼女の力になりたくて、リュカに先を越されたのは少々あせったが、手放すつもりはもちろんなかった。多少の無理はあったかもしれないが、断れない言い方をした自覚はあるが、責任と精霊を理由に会う約束を取り付けることも出来た。
女性不信気味だった時とは考えられぬ程に、自然と彼女の事を可愛いと思える自分に驚きながら、精霊が言った【いつか大切な人が現れる】と言う言葉の意味を真剣に考え始めようと思ったのだった。
クロードのソワソワの理由がやっと書けました(*´艸`*)
まだお互い、ちゃんとした恋愛には発展していませんが、ふんわりとそっちの方向は向かってきたかな?と思います(#^.^#)
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