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-21- 魔力解放


「あー、アリスちゃんが、いるだけでこの場が和むわぁー」


 夕食後、約束通り執務室に向かうと、隊長さんと、すでに来ていたエルさんがソファーに座って出迎えてくれた。


「隊長にも聞いたんだけど、魔力がうまく循環してないんだって?」

「よくわからないんですけど、なんか包まれてるって隊長さんは言ってました」

「私ではそこまでしか分からなかったんだ。エルの方がアリスの魔力を詳しく調べられると思うのだが」

「えぇ、そっち方面なら私が診てあげられるわ。アリスちゃん、早速だけどこっちに来て手をだしてちょうだい」


 言われて、エルさんの隣に座り手を差し出す。また手を繋ぐと思ったら、少し緊張してしまった。


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。リラックスしてね」

「は、はい」


 至近距離で美形と向き合うのに、緊張しない人はいないと思うんだけど……。と、口には出せないけど、若干ドキドキしながら目を閉じた。

 すると、隊長さんの時と同じ様に、暖かいものが体の中を駆け巡った。またしても鳩尾あたりで違和感を感じた。


「あら、本当ね。魔力はあるけど、膜が張ってるみたいになってるわ」

「膜ですか?」

「えぇ、そう言えば、アリスちゃんの世界は魔法は使えないんだっけ?」

「はい。魔法は作り話で、使える人はいませんでした」


 多かれ少なかれ、誰でも魔力は持っている。って言ってたけど、地球でもこうして包まれていただけで体の中にはあったのかもしれないのかな? 不思議な事もあるもんだ。


「どうする? これたぶん破れるけど、破っちゃっていい?」

「破れるんですか?!」

「えぇ、破ればアリスちゃんも魔法使えるようになると思うわよ」

「破っちゃってください!!」



 やったー! 魔法っ! 魔法っ! ファンタジーだぁー!



 魔法が使えるようになるのが嬉しくて、思わず目を見開いて即答してしまった。エルさんは目を丸くして驚いた後、隊長さんと一緒に笑い出した。


「ごめんなさい、あまりにも嬉しそうだったから。はじめて魔法が使えるよういなった子供みたいで」

「だって、しょうがないじゃないですか! 魔法なんてお話や映画の中だけで、本当に使えるようになるなんて、思ってなかったんですから!」


 子供みたいにはしゃいでしまって恥ずかしくなる。顔が熱くなるけど、手を握っているから隠すこともできずに顔を横に背けるしか出来なかった。


「エイガ? がなにか分からないけど、そんなに嬉しいなら良かったじゃない。この世界じゃ魔法が使えない方が不便だから、使えるようになるのは良いことよ」

「じゃあ、よろしくお願いします」 

「少し体が熱くなるかも知れないけど、そんなに心配無いと思うわ。魔力量もそこまで多そうな感じじゃないし。破くって言っても、私は手伝う感じだから、アリスちゃんもちゃんと集中してね、じゃあいくわよ」

「集中ですね! 分かりました!」


 エルさんがギュッと手を強く握り、目を閉じた。私も合わせて目を閉じて体の内に集中した。

 鳩尾にあった違和感が、じんわりと熱を持ち始め、茹で玉子の殻を剥がすような、ポロポロと剥けていく感じが体の中で起こっていた。

 少し、と言われていた熱が、だんだんと強くなり鳩尾を中心に身体中を侵食していく。

 最初はぬるま湯くらいだった熱も、だんだんといい湯加減くらいになり、さらにおばあちゃんが入っていた熱いお湯くらいになる。


「なんか、すごく、熱くなって……」

「あれ? アリスちゃん、ちょっと、これは……」


 殻を破く手伝いをしてくれているエルさんが少し焦るような声を出す。


「大丈夫なのか?」


 隊長さんも心配そうに聞いてくる。


「もうちょっとなんだけど、何て言うか、予想外っていうか」

「あ、熱いんですけどっ」

「ちょっとまってっ! ちょっ! ああ! もう少しゆっくりっ!」

「そ、そんなこと言われてもっ!」

「おい! 本当に大丈夫なのか?!」

「隊長っ、ちょっと黙って! アリスちゃん、少し上から押さえるような感じに出来ない?!」

「押さえる感じですか?!」

 

 次々に殻が剥がれていく感覚と一緒に、どんどん体の熱が上がっていく。もうほとんど熱いサウナ状態だった。頭から湯気でも出てきそうな程の熱に、エルさんも私も焦り出す。

 押さえる感じと言われ、よく分からないけど、漫画やアニメでよく魔法はイメージだって言っていた事を思い出す。

 鳩尾の中心がひどく熱く、胃が軋むように痛かった。とりあえずそこに集中して、「上から押さえる感じ、上から押さえる感じ」とブツブツ呟きながらイメージを膨らませていく。


「そう! その調子よ!」


 エルさんに誉められながら、溢れ出てくる熱を必死に押さえてみる。


「エルさん! ちょっと押さえるには、多すぎる、ようなっ」

「だよね! そうだよね! ちょっと隊長! 何でもいいから、魔法使って減らして!」

「今か!?」

「今以外ないでしょ!?」

「分かった」


 目を瞑っていてよく分かんないけど、ガチャガチャと窓が開く音がして突然ブワッと風が吹き荒れた。


「ちょっ! 隊長なんか威力上がってない?!」

「いや、そんなことはっ! それよりこの後はどうするんだ!?」

「私の手を取ってください!」

「分かった!」


 急に片手が外され、体の熱が繋いだもう片方の手から流れ出ていくのを感じた。


「っく!」

「ぐっ……」


 くぐもった二人の声が聞こえる間も、体の熱が繋いだ手を伝って流れていく。最後の欠片が剥がれ落ちパリンっと砕け散った感覚が広がったと思ったら、身体中を駆け巡っていた熱が、だんだんと鳩尾に集まってきて、ストンと収まっていくのを感じた。それと同時に、手から流れていた熱も消えていく。


「ふぅー……」


 ようやく落ち着きを取り戻した私は、深く息をつき目を開けた。すると目の前には、ぐったりとするエルさんと隊長さんの姿があったのだ。


「え?! エルさん、隊長さん?! 大丈夫ですか!」

「アリスちゃん……」

「はい?」

「あなた、すごい魔力量だったのね……」

「え? そうなんですか?」

「私でもちょっとキツかったわ……」

「なんか、すみません……」

「いや、見誤った私が悪いのよ、苦しかったでしょ。ごめんなさいね」

「すごい熱かったけど、もう大丈夫ですから。それにしてもどうなってたんでしょうか?」


 初めての体験で、何が何やら……。説明を求めると、エルさんは姿勢を整えて息をついた後に一から順に教えてくれた。

 私の中の殻を破いていく途中で、溢れ出る魔力の量が多いことに気がついたエルさんは、私の体が耐えきれなくなる前に、魔力を放出させることにしたらしい。でも、魔力操作なんて出来ない私は、強制的に魔力をエルさんと、一人では受け止めきれないと判断して、隊長さんに魔力を消費した状態にしてもらい、二人で私の魔力を受け止めた。ということらしい。

 ちなみに魔力の譲渡って、緊急時に自分の魔力を渡す事はあっても、人から受け取って他の人に流すってのも、まぁ普通じゃないらしく、それをやってのけるエルさんは凄いそうだ。耐えきれなくなったらどうなるなんて、怖くて聞けなかったけど、大事に至らなくて本当によかった。若干二名ほど、具合悪そうだけど……。


「一度に取り込んだから、魔力酔いしてるだけ。明日には良くなるから」


 と、エルさん談である。ほんと、感謝しかないです。



読んでいただきありがとうございました!

次の更新も、明日の18時となります。


もしよろしければ、応援よろしくお願いします(*´艸`*)

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