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-15- 異世界の精霊


「そうだ、隊長さんにマント返しに行かなくちゃ」

『あのキラキラして人のところに行くの?』

「キラキラした人って、ここの砦の隊長さんで、クロードさんって言うんだって」

『ふーん、クロードって言うんだ』

「リゲルは隊長さんの前ではお喋りしないでね」

『えー、ダメなの?』

「こっちじゃ精霊って珍しいんだって。いきなり話して取られちゃったら嫌だもん」

『うん、絶対におしゃべりしない……』


 素直でよろしい。私はマントを丁寧に畳んで抱えると、胸ポケットにいるリゲルをそっと触ってから部屋を出た。



 ここまで来たはいいが、さっきの事を思い出して執務室の扉の前でちょっと躊躇う。一度深呼吸をしてから、よし! と気合いをいれてノックをした。


「アリスです」

「入れ」

「し、失礼します」


 そろーっと扉を開けて中に入ると、いつものように隊長さんは机の書類と戦っていた。


「どうした?」

「さっきはありがとうございました。お借りしていたマントを返しに来ました」

「あぁ、そこのソファーに置いといてくれ」

「はい」


 隊長さんは書類を書いたり揃えたりと、忙しそうでこちらに視線を合わせることなく答える。恥ずかしかったからいいんだけど、ちょっと寂しいな……。


「お茶でも持ってきましょうか?」

「いや、後少しで休憩だからな、その時でいい」

「そうですか……」

『アリス、悲しい?』

「なにか言ったか?」

「いえっ! な、何も言ってません!」



 リゲルのバカ! 何でしゃべっちゃうかな?!



 焦って胸ポケットをさっと手で覆うと、隊長さんは不思議そうにこちらに顔を向けてきた。


「何か聞こえたような気がしたんだが……、ん?」


 私をじーっと見る隊長さん。あれ? 視線がもう少し、上? 頭の上ら辺を見ているのかな? 気になって私も上を見上げてみた。


「何これ?」


 私の頭上にはフヨフヨと漂う光がひとつ。


「精霊……」

「え? これが精霊さん?」


 隊長さんが目を丸くして光を見つめていた。当然私の目も真ん丸だった。


『ねぇアナタ、連れてきてるんでしょ?』

「はい?」

『そこよそこ、胸のあたりにいるでしょ?』


 光がフラーっと私の胸元に降りいてくる。ドキッとして思わずポケットを押さえ込んだ。


『隠してもムダよ、分かるんだから』

「……」


 光から目をそらし、隊長さんを見た。隊長さんは驚いた様子でこちらを見ているだけで何かを言ってくる気配もない。ハァーと観念して胸ポケットからリゲルの入ったピアスケースを取り出すと、そっと蓋を開け漂う光にピアスを見せた。


『こ、こんにちは?』


リゲルが喋った途端に、ガタッと椅子が倒れる音がしてビックリする。音のする方を見ると、隊長さんがさらに驚いた様子でピアスと私を交互に見ていた。


『私はフィー。あなたは?』

『ボクは、リゲル』

『リゲル? 聞いたこと無いわ』

『そんなこと言われても、リゲルはリゲルだもん……』

『だもんって、どこから来たの?』

『えっとね、地球ってとこ』

『地球? 地球って、じゃあ、あなた渡ってきたのね?』

『地球知ってる? 渡るって? なんかね、力一杯叫んだら、来ちゃったの』

『とんだおこちゃまね、あんた……』

『おこちゃまっていうなー、ずーっとずーっと長い間お空の上にいたんだよ、ボクおこちゃまじゃないもん!』

『おこちゃまじゃないなら、世間知らずね』

『もー! ヤダ! フィー意地悪! アリス閉めて!』

「あ、はい」


 怒ったリゲルに言われ、ピアスケースの蓋を閉める。


『あ、ちょっと待ちなさいよ! アナタも勝手に閉めないでよ!』

「いや、だってリゲルが嫌がってるし

……」

『まだ聞きたいことあるんだから!』

「じゃぁ、リゲルの機嫌がなおったらで」

『なんでそうなるのよ! 普通精霊がお願いしたら、嫌がる人なんていないのよ?!』

「そんなこと言われても、私精霊さんの扱いなんて知らないし、リゲルの方が大事だし。フィーだっけ? すごく偉そうでちょっと……」

『何よ何よ! あの夜アンタが助けを呼んだから、私がクロードに伝えてあげたのに!』


 怒っているか、光はブンブンと早く私の回りを回っている。目が回るから止めてほしいんだけど、それよりも気になる言葉を聞いてしまった。


『フィーが呼んでくれたの?』


 ケースの中からリゲルの声がした。内容からして閉めっぱなしでする話ではないだろうと、蓋を開ける。


『そうよ! すごい大きな声で叫ぶから、急いでもらったんだから!』


 なんと、私が助かったのは、この精霊さんのお陰だったのだ。


「あ、ありがとう、助けを呼んでくれて。なのに酷いこと言っちゃってごめんね」

『ボクもありがとう。アリスを助けてくれて』

『わ、分かればいいのよ……』


 フヨフヨとピアスケースの横に降り立ち、リゲルと一緒に並ぶフィー。


『でも、ボクおこちゃまじゃないからね』


 リゲル君。やっぱり気にしてるんだね……。


『悪かったわね、バカにして……』


 ちゃんとお礼を言えるし、謝れる。うん、精霊さんって素直で良い子だね。


 それにしても、急いでもらったって言ってたけど、隊長さんにも感謝しなくちゃね。


「隊長さんも、急いで来てもったみたいで、本当にありがとうございました」

「え、あぁ、あの時は本当に早かった」

「早かった?」

『急がないと危なかったから、飛んだの』

「飛んだ?」

『そう、ビューンってね』


 精霊さんって擬音が多いの?


 恐る恐る隊長さんを見ると、若干顔が青ざめていた。


「ビューンって……」

「私も初めてだったよ。空を飛んだのは……」


 本当に物理的に飛んできてくれたようだった。いや、マジで感謝しかないです。



余談ですがフィーはアリスをアナタって呼んで、リゲルをアンタと呼びます。


読んでいただきありがとうございました!

次の更新も、明日の18時となります。


もしよろしければ、応援よろしくお願いします(*´艸`*)

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