↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/100

-13- 訓練所で走り込み

※【地面に刺さった杭】を【打ち込み台】に変更しました。


 リュカと執務室の前で別れた後、私は厨房に戻ると既に一段落していたところだった。洗い物を手伝ってから、ジェロームさんに朝食を貰い食べた後、5刻までの間に向かったのは、建物の中央にある天井が無い吹き抜けの訓練所だった。


「今日も良い天気!」


 中庭にしては広い、周回して走るには良い広さだった。

 入ってすぐ横に訓練所らしく武器やら防具が置かれている倉庫の入り口と反対側にベンチがあり、そこから左側に棒に縄が太く巻き付けられた打ち込み台が地面に刺さっていて、右側には弓道の的みたいなのが壁沿いに5つ程並んでいる。中央は広く場所があけられていた。

 私は隊服の上着をベンチに置き腕まくりをすると、部活の時と同様準備運動を始めた。

 こちらに来て翌日﹙話し合いの後﹚から勉強開始。3日目からお手伝いを始めたけど、朝の手伝いが終わると5刻に戻ってくるリュカを待つ間が暇になった。

 10年以上体を動かすことが日常だった私が、何もせずにいられる訳がない。3日目の夜には、隊長さんにお願いして訓練所を使わせてもらえることになったのだ。

 30日くらいの遠征で、順番にお休みも取ってるらしいんだけど、この時間から鍛練する人はいないみたいで、私一人だった。昨日走ってみて思った。この服走りづらい。



 よし、誰もいないし来る気配もないな。



 キョロキョロと辺りを確認してズボンの裾を膝下くらいに折っていく。多少はマシになった。そして、ストレッチをした後に、ダッシュ10本・反復横飛び・バック走なんかをして、体が温まってきた所で腕時計のストップウォッチ機能をオンにする。

 ふーっと深呼吸をしてから、ゆっくりとスタートしる。だいたいぐるっと一周で100メートルくらいだから、今日は5キロ目安に50周走ろう。

 そう思い、周回だけを気にしながら走り込んでいく。



 49……。



「50! はぁーっ! 終わりーっ」


 スピードを徐々に下げならが、クールダウンの為に一周を歩いてから、ストップウォッチを止めてみた。00:25:42。長距離は得意じゃないので、そんなに頑張らない程度で走っていた。

 まぁ、記録を出すためのランニングじゃなくて、体を動かすための運動だし。もう少しゆっくりと、ジョギング程度に落としてやっていこう。時間余ってるし……。


「暑ーい!」


 ベンチに座りながら、1つ開けていたシャツのボタンをもう1つ開けてから、真ん中をつまんでパタパタする。厨房でもらったお水を飲んで、残りをいつもの癖で頭からかけてしまった。

 

 

 ヤバっ、トレーニングウェアじゃなかった!



 慌てて持ってきていたタオルで濡れた頭と体を拭いていると、バサッと頭からちょっと重たい布がかけられ、視界が暗くなった。


「え? 何?!」

「君は何て格好をしているんだ!」

「ひゃっ! すみませんでした?!」


 反射的に謝り布の隙間から声の主を見上げた。あ、これマントだ。それに隊長さん怒ってる……?


「戻りの隊が来る前に、着替えてくるんだ!」

「ひゃいっ!」


 あまりの怒声に、クルッと向きを変えて出入り口に向かう。途中でマントを返そうと振り向いた。


「あのー、このマントは……」

「いいからそのまま行きなさい!」


 振り返り見えたのは、隊長さんの背中だったけど、耳が真っ赤だった。何であんなに真っ赤なんだろう? と、指摘されて事を思いだし、自分の格好を確認してみると……。

 腕まくりをはセーフだとして、あ、足かな? 出しちゃまずいんだっけ? ん? うわぁーー! シャツ透けてる!

 マントの前をしっかりと握って、私は慌てて訓練所を出たのだった。





「またしてもやらかしちゃったなー」


 砦内にある浴室を使わせてもらってから﹙しっかりと使用中の札は掛けさせてもらいましたよ﹚部屋に戻り、寝台に横たわりながらため息をつく。シャツ透けるとか、あっちでもこっちでも恥ずかしいわ……。

 ふと、隊長さんがかけてくれたマントが目にはいった。返しに行かなきゃなと、椅子に掛けていたマントを手に取った。


『……ア…………ス』

「ん?」


 耳元で何か聞こえた気がした。


『……アリ……キ…………ルノ』

「え? なに?」


 さっきより少しだけ音が増えた。


『アリス……コエ……ノ?』

「え、なに?! こわっ!」


 確実に【アリス】と呼ばれた事を理解して、一気に怖くなる。だってこの部屋には私一人しかいないのに。隊長さんのマントをぎゅっと抱え込んで辺りを見回すけど、やっぱり誰もいない。


『アリス! 聞こえるんだね!』

「キャーッ!」

『ヤダヤダ、怖くないよ! そんなに怖がらないでよ!』

「何で誰もいないのに声だけ聞こえるの?! ホラーなんですけど!」


 私はたまらずしゃがみこんで、マントに顔を埋めた。


『ホラーだなんて、ボクお化けじゃないよっ!』

「じじじゃあ何で声だけ?! 幻聴かな?! 疲れてんのかな?!」

『そんなの知らないよー。せっかくアリスとお喋りできると思ったのに……』


 聞こえてた声がだんだんとしりすぼみになる。


『……うっ、……うっ、……うぇーんっ!』


 怖い怖いと思っていた声が泣き声になり私は戸惑った。声質からしてまだ幼い。なんだか、小さい子供を泣かせた気分だった。


「あ、いや、なんかごめん、ね?」

『わぁぁぁーー! アリスが冷たいよーっ!』

「いや、冷たいと言うか、ビックリしただけでね……、本当にごめんね!」


 マントは抱きかかえたまま、頭だけを上げて辺りを見回す。やっぱり誰もいないし……。


『……うっ、……ホントに? ……ホラーじゃないよ?』

「本当に、ホラーだなんて言ってごめんね!」



 そこ気にするとこなんだ……。



隊長さん、いつから見てたんでしょうね?


読んでいただきありがとうございました!

次の更新も、明日の18時となります。


もしよろしければ、応援よろしくお願いします(*´艸`*)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。