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-11- 厨房のお手伝いと頼まれごと


「すまない嬢ちゃん、ジョムカの皮剥き頼めるか」

「はい、すぐにやります!」


 ジョムカはじゃがいもみたいな野菜だった。形はメークインみたいに細長い。じゃがいもより少しねっとりしていたけど、味はほぼじゃがいもだ。ジェロームさんに言われ、作業台にあったジョムカを流しで洗い皮を剥いていく。

 ピーラーが無いのは残念だけど、5日間でナイフでも剥けるようになった。


「アリスさんありがとう。助かるよ」

「いえ、こっちはやるのでメディさんはジェロームさんに次の指示もらっちゃってください」

「ありがとう」


 ジェロームさんと一緒に厨房で働くメディさんは、そそくさとジェロームさんの元へ向かって行った。

 朝のこの時間はとても忙しい。次から次へと食事に来る隊員さんにお料理を出さなければならないからだ。しっかり食べてもらって、討伐頑張ってもらわなくちゃ!


「嬢ちゃん、それが終わったら隣にあるピぺを細長く切ってくれるか?」

「わかりました!」


 ピぺはピーマン。パプリカみたいな味で、カラフルではなくやっぱり緑だった。野菜はあっちもこっちも似たり寄ったりで、わかりやすくて助かった。

 10個以上あったジョムカの皮剥きが終わり、ピぺをチンジャオロースの時みたいに細く切っていくと、ガヤガヤと厨房の外が騒がしくなってきた。


「ジェロームの旦那ー、朝飯くださーい!」

「出来てるヤツから持ってきな!」

「ありがとうございます!」


 大きな鉄鍋を振るいながら、ジェロームさんが大声で対応していた。

 ここ数日、毎朝こんな感じ。魔物の討伐部隊だって言うから、もっと殺伐とした雰囲気かと思いきや、町の食堂みたいにみんな朝から明るく元気だった。


「おっ、アリスちゃんだ!」

「さっきは水場にいたのに、もうこっちか?」

「旦那ー、こき使いすぎじゃね?」

「アリスちゃんも文句言った方がいいぞー」

「うるせーぞ! こっちは30人以上の飯作ってんだ! そんなこと言うならお前らが手伝え!」

「私ぜんぜん大丈夫ですっ! みなさんありがとうございます!」

「お前ら浮かれてんぞゃねーぞ! 本人もこう言ってんだ! さっさと飯食って魔物狩ってこい!」

「ひゃーこえー! アリスちゃん頑張ってねー!」

「はい! みなさんも怪我に気を付けて頑張ってください!」


 話し合いの後、討伐隊が戻ってきたタイミングで私の事が隊のみんなに知らされた。

 村の娘設定の私は、迷った森の中で魔物から逃げてきた。もう村には戻れない。と説明をしていくうちに、ハラハラと涙を流したり鼻を啜ったりと、【もう戻れない﹙かもしれない﹚】の部分しか合ってない嘘を信じてくれる隊員さん達を前に、なんとも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 こっちに来た翌日に吊るしてあった制服に関しては、目敏く見つけてくれたエルさんによって速攻で回収されていた為に、他の隊員さんの目には晒されなかった。着ていた服はボロボロだったので隊服をそのまま借りているていである。


「ジェロームさん、終わりました!」

「ありがとうよ! 後はそこにあるサラダを盛ってカウンターに出してくれ」

「はーい!」


 ピぺをメディさんに渡して、並べたお皿に次々に盛っていく。それを二皿づつ手に取ってカウンターに並べていくと、スッと目の前に影が落ちてきた。何かと思って見上げると、そこには副隊長のオルガンさんが立っていた。


「オルガンさん! おはようございます!」

「ああ、おはよう」

「今日も討伐頑張って下さいね!」

「お前はいつでも元気だな」

「え?」

「いや、何でもない。後で隊長に朝食を持っていってもらえないだろうか」

「あ、はい。これ出し終わったら持っていきますね」

「よろしく頼む」


 初対面で親近感を勝手に抱いてしまった私は、オルガンさんと合うとちょっとホッとする。本当はもう少し話をしたいんだけど、必要最低限の事しか喋らない人みたいで、さっきみたいにボソッと呟くみたいな事を言われると、ちょっと嬉しくなるのだ。



 お兄ちゃんは元気かなぁ……。



 決まって兄を思い出して少し寂しくもなるけど……。


「ジェロームさん、これ終わったらオルガンさんに隊長さんの朝食頼まれたんで、行ってきていいですか?」

「いつもはメディに持っていかせるんだが、隊長も嬢ちゃんが持って行った方が喜ぶだろうから、行ってやれ」

「もー! 何言ってるんですか! 誰が持っていっても一緒ですよっ」

「アリスさん、すみませんっ。オレ手が離せないんでよろしくお願いします!」


 奥から世話しなく動いてるメディさんが申し訳なさそうに言ってきたもんだから、ジェロームさんがニヤニヤしてたけど何も言えなくなってしまった。

 いたたまれなくなって、急いでカウンターにサラダを並べると、食器棚からトレイを出して食事と飲み物を並べた。


「行ってきます……」

「おう、行ってこい!」


 ニヤニヤ笑顔で送り出され、食堂を出た私は隊長さんのいる執務室へ足早に向かった。

 扉の前に来てから、はて困った。トレイで両手が塞がっている。どうしたものかとノックせずに声をかけようとした時、突然扉が開いた。


「いらっしゃいアリス」

「うわっ、ビックリした!」


 中から隊長さんが出てきて驚いた。なんで分かったんだろう?


「びっくりさせてごめん、朝食かな?」

「はい、オルガンさんに頼まれて持ってきました」

「ありがとう、中に運んでくれるか?」

「はい」


 開かれた扉から中の入り、テーブルの上にトレイを置いて出ていこうとした時、事務机の上に詰まれた大量の書類が目に入った。


「うわぁ、凄い量……」

「ああ、もう少しで遠征も終わりだからね。報告する書類が多いんだ」

「大変ですね」

「魔物相手にしてる方がよっぽど楽だよ。でもこの報告書が無いと、情報不足で今後の討伐に影響がでてしまうからね」

「じゃあ、今隊の人たちが戦えるのって、隊長さんのおかげなんですね」

「え?」

「だって、毎回こうしてきちんと情報を整理して、対策してるから大きな被害にも合わないんですよね?」


 私が来てからだけど、死者は0だ。大怪我だってそうそういない。


「そ、そうなのか?」

「絶対にそうですよ! 隊長さん、凄いです!」


 書類から目を離して隊長さんに向き直ると、ちょっと困り顔の照れたような顔をした隊長さんがいた。

 


 その顔アウトー! 破壊力抜群です!




お兄ちゃん、いつか出てくるかな?


読んでいただきありがとうございました!

次の更新も、明日の18時となります。


もしよろしければ、応援よろしくお願いします(*´艸`*)

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