異世界 ー見習い聖女ラーナー
聖女王トラキッチィナ3世の頃…
正聖女だったヤルタナはヤルタナ派を引いて
ドンドンと他の派閥を強引に潰していった。
中には自死にまで追い込むケースも有った…
ヤルタナの事を陰で正悪女と囁くモノもいた。
ヤルタナの生家は大農場主で、この国の食糧
を押さえていた。
ヤルタナが食糧部の長の頃に農場主に有利な
施策をドンドンと推し進めていた…
トラキッチィナ3世退位に際し、周りの反対を
押し切り次期聖女王をヤルタナに決定した。
裏では聖女王の座をお金で買ったなどと黒い
噂が流れていた…
ヤルタナが即位し聖女王ヤルタナとなり1年
が過ぎた頃…自身が強引に推し進めていた
施策を真逆の施策に強引に変更していった。
国民たちはこの変貌ぶりに驚くと共に歓迎した。
それからもヤルタナは国民にとっての悪法を
ドンドンと潰して行き国民たちから、絶大の
支持を受ける様になった。
この変貌ぶりに1番驚いていたのはヤルタナ
本人だった…
トラキッチィナ3世より金色のリボンを譲り
受けた時に…こう囁かれた
「アナタのその強引なトコロが私は大好きよ。
その強引さで、この国を良い方向へ導く事を
私は願います…」と
トラキッチィナ3世は微笑んだ。
あの時からだった…私の中で何かが変わったのは
…いや…ドロまみれの宝石から徐々にドロが剥がれ落ちていったと言う方が正しいだろう。
ヤルタナが即位して3年…国民は豊かになり
国は増々栄えた…人々はヤルタナを最高聖女王
と呼んだ。
あれから幾十年、私は今、次期聖女王を考えて
いる…
カシアスは頭脳明晰、クレイは権謀術数…
どちらも面白い娘たち…
でも、今1番面白い娘はラーナ…あなたね…
見習い聖女の朝は早い…まだ薄暗い、日が昇る
前に準聖女たちに叩き起される。
準聖女と言っても…除外と言われいる彼女たちは
正聖女にはなれない存在。彼女たちは3交代で
見習い聖女たちを監督する役目をさせられている。
「オラ!早く起きないと、ぶっ叩くゾ!コラ!!」
叩き棒で次々と寝ぼけている見習い聖女たちを
叩き起こして行く。そして、摺りキレたボロボロのシスター服に着替える。
叩き起された見習い聖女たちは昨夜出された
洗濯物を…洗濯板とタライで、洗う洗う洗う…
絞る絞る絞る…干す干す干す…
次は朝食の準備を手分けして行う
パンを焼く係りは…焼く焼く焼く…目玉焼きを
作る係りは…割って割って割って…焼く焼く焼く
サラダを作る係りは野菜を…切る切る切る…
お皿に盛り付ける係りは…盛る盛る盛る…
日が昇る頃には厨房を片付け、掃除係りと
買出し係りに別れてそれぞれの仕事をする。
掃除係りも正聖女たちの個室掃除係りと
お城全域係りに別れて、午前も午後も掃除
に明けくれる…
買出し係りは大きな荷車をみんなで引いて
街の朝市で必要な物を買ってドンドンと積み
込んでいき、重くなった荷車をみんなで押し
たり引いたりして帰って来る。
帰って来た買出し係りは昼食、夕食をひたすら
作る作る作る…
準聖女の除外たちは早朝と午前と午後の
3交代で見習い聖女たちにハッパをかける。
除外たちにも叩き棒でひたすら叩く者もいれ
ば、優しく声をかけるだけの者もいた。
見習い聖女の中には高齢者もいて、やはり動き
が周りより遅い…叩く除外はワザと大変な所に
高齢者を配置して、遅い遅いと叩き棒で叩いて
喜んでいた。
優しい除外は高齢者を楽な所に配置して、気を
使ってくれた。
ラーナは叩く除外によく叩かれた。高齢者や
要領の悪い者をよく庇ったからだ。
「あの〜どうしてワザとあのヒトたちを不向き
な所に配置するのかな〜」とラーナは意見した。
「うるさい!ワタシが監督官だ文句を言うな!」
バシ!バシ!バシ!…
「お前は一生…下水溝のドブさらい係りだ!」
バシ!バシ!バシ!…
こうしてラーナは他の作業が終わった後、1人
で下水溝のドブさらいをさせられる様になった。
夜…みんながドロの様に寝入った頃、やっと
行水をして寝床に入る…でも…
「ん〜寝るにはもったいないな〜…」
ラーナはいつもすぐに目を閉じず、頭の中で
想像をめぐらせる…その時だけが自由だった
からだ。
1番好きだったのは聖女アホンタレヤの話し
だった…小さい頃、おばあちゃんに聞かせて
もらった、おとぎ話だ…
でも、なぜか…結末が3つ有った…
1つ目は定番の結末で無事に種子を持ち帰り、
めでたし、めでたし。
2つ目は種子を持ち帰ったのだけれども、旅
の疲労で寝込んでしまい亡くなってしまう。
3つ目は種子と一緒に素敵な青年を持ち帰り
その青年と結婚をして…めでたし、めでたし。
「ワタシは〜3つ目が1番好きだな〜」
そんな事を想像していると、いつの間にか
眠っていた…そして朝になると叩き起される
…その毎日の繰り返しだった…
聖女王室…ヤルタナとラーナはテーブルを
挟んで向い合ってイスに腰掛けていた。
「願いが叶って満足かしら…」
「ワタシ〜夢だったんだ〜すごく嬉し〜」
「そして現実になった…でもね、夢が現実に
なって、それが幸せとは限らないのよ。」
「特にこの夢は過酷な事も有る…大丈夫かしら?」
「そうか〜アホンタレヤ様は過酷だったね〜」
「でも〜コレはワタシの事だから〜過酷になるかどうかは…ワタシが決める〜」
「ホホホ…アナタは面白い娘ね。」
ヤルタナはラーナと話していて、ラーナは
おっとりしているが、とても芯の強い娘だと
感じた、そして言いたい事は口に出して言う。
その上…楽天的だ…。
ヤルタナ自身がお嬢様だったので、この様な
人物と会うのは初めてだった…とても新鮮な
気持ちにさせられた。
「見習い聖女は辛かった?よく叩かれていたと
聞いているけれど…」
「アハハ〜叩かれる時はね〜凝っているトコロ
を持って行くんだよ〜気持ちいいよ〜」
「ホホホ…なんて娘かしら…でも、ドブさらい
はどう?辛くなかった?」
「下水溝がね〜キレイになっていくと〜嬉し
いよ〜」
「ホホホ…わかりました。アナタなら大丈夫
ね。『種子の旅』をお願いするわ。」
ヤルタナはテーブルの上に肩掛けバックと
手のひらサイズの本を出した。
「コレは国宝の品です。『種子の旅』を行う
にあたり、コレをアナタに預けます。」
バックは『マジックバック』仕様でかなりの物がドンドン入る便利なバックだ。
手のひらサイズの本は『知の書』で、困った時
に、1ページ目に困ってる事を書くと…
2ページにその答えが書かれている。と言う
コレも便利な本だ。
「うわ〜スゴイ〜コレ借りれるんだ〜」
「さあ次は『転着の儀』に移ります。儀式の間に移動しましょう。」
『転着の儀』とは転生者を到着させる儀式。
儀式の間にはすでに準備が整っていた。大きめ
の絨毯で3つの丸い不思議な紋様が刺繍されて
いるモノが敷かれていた。
ヤルタナは目を閉じ…手を合わせて
「イサダクテセサクチャウト…ヲ…シャイセンテニジブゾウド」ととなえた…
すると、あの絨毯の3つの紋様から眩い光の
柱が立ちあがり…薄っすらと人影が現れた。
そして、3人の転生者が到着した。




