序章 第3話 祝福の鐘は世界に鳴り響く
ダンジョンは世界中に存在しており、定期的に間引かないと、モンスターが溢れます。
それは、前触れもなく訪れた。
街中の誰もが、同じ瞬間に、同じ音を聞いた。
テレビの前でも、電車の中でも、工事現場でも、病室のベッドの上でも――
音というより、それは頭の内側に直接響くような感覚だった。
空気を震わせるのではなく、意識そのものを震わせる、澄んだ鐘の音。
人々は反射的に空を見上げた。
雲ひとつない青空に、うっすらと白い光が滲むように広がっていく。
まるで空自体が鐘の形をしているかのように、その光は幾重にも波紋を描き、
そして――白い羽根のようなものが、静かに降り注ぎ始めた。
触れても、何も残らない。ただ光の粒のように舞い落ち、地面に着く前に溶けて消えていく。
世界中の空に、同じ光景が広がっていた。
そして、声が響いた。性別も年齢も感じさせない、ただ荘厳とだけ言える声。
あらゆる言語で、同時に、あらゆる人間の意識に直接語りかけてくるようなその声は、こう告げた。
「――六甲山ダンジョンにて、最終エリアへの挑戦を確認しました」
「ハンター、真神幸一郎が、試練を突破したことを、ここに祝福します」
「なお、六甲ダンジョンは、待機状態に移行します」
世界中で、時が止まった。
史上初めて、ダンジョンが「クリア」された。
人類がダンジョンという現象と向き合い始めて幾星霜、
誰もが可能性としては信じながらも、
心のどこかで「本当にできるのか」と疑い続けていた、
その扉が開かれた瞬間だった。
交差点の大型ビジョンの前で、通行人たちが足を止め、
空を見上げたまま立ち尽くしていた。
ニュース速報のテロップが慌ただしく画面を埋め尽くし、
スタジオではアナウンサーが台本にない言葉を探して口ごもっていた。
「――ま、真神、幸一郎……?」
誰かがその名前を、確かめるように呟く声が、あちこちで聞こえた。
聞いたことのない名前だった。
少なくとも、ダンジョン攻略の第一線で活躍していた著名なハンターたちの中に、
その名はなかった。各国の攻略協会にも、記録上位のランカーにも、該当する人物は見当たらない。
それなのに、世界で最初にダンジョンを踏破したのは、その、誰も知らない名前の人間だった。
――真神幸一郎とは、何者なのか。
その問いが、この瞬間から、世界中を駆け巡り始めた。
空から降り続ける白い光の粒は、しばらくの間、
まるで世界そのものが祝福を捧げるかのように、
静かに、絶え間なく降り注ぎ続けていた。
はぃ、主人公名
真神幸一郎ですね…




