第4章 第112話 第二回深層装備適性評価
第1回の深層装備適性評価から、しばらく後。WHAの施設には、再び世界各地からトップハンターたちが集められていた。
前回との一番大きな違いは、その人数だった。
「増えたな」
幸一郎が候補者一覧を眺めながら呟く。そこには各国の攻略記録保持者や、世界ランキング上位に名を連ねるハンターたちが並んでいた。
「第1回は、そもそも真神さんが所有する装備を他のハンターが使用できるのか、それを確認する意味もありました。実戦投入が可能であることまで確認できましたので、今回は対象を広げています」
レイチェルの説明に、幸一郎はもう一度一覧へ目を落とした。
「自分から来たいって言ってる人もいるの?」
「多数います。その中から攻略実績、現在の到達深度、パーティ構成、安全管理などを基準に候補者を選定しました」
「じゃあ、それでいいんじゃない?」
幸一郎にとっては、それ以上でもそれ以下でもなかった。
第1回の評価会は、世界各国から代表を集めた催しではない。真神幸一郎という一人のハンターが、3つのダンジョンから持ち帰り、長い間へ放り込んでいた大量の装備。それらが他者にも扱えるのかを確かめる、極めて限定的な試みだった。
だが、その試みは予想以上の結果を生んだ。適合者が現れ、装備は実戦へ持ち込まれ、それまで100階付近で停滞していた攻略記録が次々と塗り替えられた。そして新たな深度へ到達したハンターたちは、そこで新しい問題を発見して地上へ戻ってきた。
ならば、次は対象を広げればいい。
それが第2回だった。
参加者の中には、第1回では声を掛けられなかった著名なトップハンターが数多く含まれている。そして、その中には日本人ハンターの姿もあった。
◇
「ようやく、俺たちにも順番が回ってきたか」
評価開始を待ちながら、一人の日本人ハンターが並べられた装備へ視線を向けて呟いた。独り言に近いものだったが、隣にいた海外のハンターがそれを聞き取った。
「ようやく?」
「ああ。第1回には日本人が一人もいなかったからな」
「私もいなかったが」
「……え?」
思わず振り向いた日本人に、男は周囲を示した。
「彼もいなかった」
「俺もだ」
「彼女も」
「呼ばれてないわね」
言われて改めて見回してみれば、そこには何度も国際ランキングや攻略記録で名前を見た顔がある。その多くが、第1回の評価会には参加していなかった。
「第1回に呼ばれたのは、世界のトップハンターのごく一部だったんだろう?」
「それは……そうだが」
「なら、なぜ日本ではあれほど騒いでいたんだ?」
悪意のない疑問だった。それだけに、日本人ハンターはすぐには答えられなかった。
「日本人が一人もいない、日本が外された、真神が日本を避けている。こちらでも日本のニュースが少し流れていた」
「……真神には、日本で色々あったからな」
「それは知っている。だが、それと今回の評価会は別の話じゃないのか?」
別のハンターも会話へ加わった。
「俺の国からも第1回には誰も呼ばれていないぞ」
「私のところもよ。そもそも国家代表を選ぶ会じゃないでしょう?」
それは、少し視点を変えれば当たり前の話だった。第1回に招かれなかったトップハンターの方が圧倒的に多い。だが日本国内では、「世界のトップハンターの一部が選ばれた」という事実より、「その中に日本人が一人もいなかった」という事実の方が大きく扱われていた。
「日本は、少し真神を意識しすぎているんじゃないか?」
「……どういう意味だ?」
「何でも日本との関係に結びつけているように見える。日本人だから優遇される。日本人だから冷遇される。どちらにしても、真神にとって日本が特別だという前提だろう?」
日本人ハンターが黙る。別の男が、少し考えてから肩をすくめた。
「良くても悪くても、自分たちは特別扱いされると思ってるんじゃないか?」
「……悪くても?」
「恨まれているから外された。それだって特別扱いだろ?」
その言葉には、すぐに反論できなかった。
優遇されることだけが特別扱いではない。自分たちは特別に嫌われている、特別に恨まれている、だから他国とは違う扱いをされるはずだ。それもまた、自分たちは相手にとって特別な存在であるという前提に立った考え方だった。
「……自意識過剰だったってことか」
「国全体で?」
「笑えねえな……」
「まあ、過去が過去だ。気にする理由がないとは言わない」
海外のハンターはそう言って、目の前に並べられた装備へ視線を戻した。
「でも、お前たちは来た」
「ああ」
「なら、今はそれでいいだろう」
日本人ハンターも装備を見る。
「……そうだな」
少なくとも、ここへ来ることを決めたのは彼ら自身だった。
◇
やがて評価が始まった。
「前と同じだけど、合わないと思ったら無理に使わないで」
参加者を前にした幸一郎は、それだけ言って少し考えた。
「あと、壊さないで」
「装備を?」
「いや、自分を。装備はいっぱいあるから」
「真神さん」
横にいたレイチェルが静かに口を挟む。
「装備も可能な限り破損させないでいただけると助かります」
「ああ。それも」
何人かから笑いが漏れた。
第1回とは違い、今回は参加者も深層装備についてある程度の情報を持っている。高性能だからといって扱えるとは限らない。使用者を選ぶものもあれば、適合しても出力を制御できないものもある。複数を一組として初めて本来の能力を発揮する装備もある。
評価が始まれば、やはり結果は様々だった。剣を握った瞬間に拒絶される者がいた。普段とはまったく違う種類の武器に妙な適性を示す者もいた。組になった装備の片方にしか適性がなく、頭を抱える者もいる。適合そのものには成功しながら、出力が高すぎるため現時点での実戦使用を見送られた者もいた。
「……3本目も駄目か」
「次いけば?」
「軽いな」
「いっぱいあるし」
「俺、武器に嫌われる才能でもあるのか?」
「それ才能っていうの?」
そんなやり取りも交わされる中、日本人ハンターの一人にも適合する武器が見つかった。刀に似た形状ではあるが、日本刀そのものではない。何度か振り、魔力を流し、出力を確かめる。
「……これならいける」
「振らされる感じは?」
「ない。出力は高いが、制御できそうだ」
担当者が結果を記録していく。その様子を見ていた別の日本人ハンターが、少し迷った末に幸一郎へ声を掛けた。
「真神さん。一つ確認していいか?」
「何?」
「俺たちは日本人だ。それでも、この装備を借りて構わないのか?」
幸一郎は首を傾げた。
「なんで?」
「いや……日本人だからだ」
「知ってるけど」
「…………」
「国籍で武器の相性変わるの?」
「いや」
「じゃあいいじゃん」
それで終わった。
少し前まで日本国内で何日も議論されていた問題は、本人の前では数秒しか持たなかった。
近くで聞いていた海外のハンターが、日本人を見る。その口元が僅かに緩んでいた。
「……何だよ」
「いや?」
「言いたいことあるだろ」
「特には」
「絶対あるだろ」
今度は周囲から笑いが起きた。
第2回の評価はその後も続き、全員とはいかなかったものの、新たに複数のハンターが深層装備の貸与候補となった。国籍も所属も様々であり、その中には日本人も含まれている。
最初に呼ばれたかどうかなど、装備には関係なかった。
◇
第2回評価の終了後、WHAはその結果を公表した。
複数の国と地域からトップハンターが参加し、その一部が新たな深層装備の貸与候補となった。その中には日本人ハンターも含まれている。
それだけの発表だった。
だが、日本国内ではそうはいかなかった。
『第1回では日本人ハンターが一人も招待されなかった深層装備の適性評価ですが、今回、ついに日本人ハンターも参加しました!』
朝の情報番組には、大きな文字が躍った。
『真神幸一郎氏と日本――関係改善の兆しか!?』
第1回ではゼロ、第2回では参加。ならば、その間に何かが変わったのではないか。
『WHA側の姿勢が軟化したのでしょうか?』
『真神氏自身に心境の変化があった可能性もあります』
『日本側が対話姿勢を見せたことが影響したのでしょうか』
どれも確認された事実ではない。だが、分かりやすい筋書きではあった。
そして、その日の昼。第2回評価に参加した海外トップハンターの一人を、日本のテレビ局が取材した。
『今回、日本人ハンターが初めて深層装備の評価に参加しました。このことについて、どう受け止めていますか?』
「どう、と言われても……別に?」
記者が一瞬止まった。
『第1回には、日本人が一人もいませんでした。しかし今回は参加しています。真神氏、あるいはWHAと日本との関係に変化があったと感じませんでしたか?』
「なぜ?」
『なぜ、と申しますと……』
「私も第1回には呼ばれていない」
『……はい?』
「今回参加した者の中には、第1回に呼ばれていないハンターが大勢いる」
記者が資料へ目を落とした。確かに、世界ランキング上位者や各地域の攻略記録保持者の中にも、第1回に参加していなかった者は多い。
『しかし、日本人は第1回には一人も――』
「私の国からも一人もいなかった。だが、私の国ではニュースにもならなかった」
記者が黙る。欲しかった答えとは、少し違っていた。
『日本では、第1回に日本人が招待されなかったことについて、真神氏の過去との関連を指摘する声もありました。海外でも、そのように受け止められていたのでしょうか?』
「いや。むしろ、なぜ日本だけそんなに騒いでいるのかと思った」
『……と、いいますと?』
「第1回は各国代表を選ぶ場ではないだろう? 真神の持っていた装備を他のハンターが使えるか確認するところから始まった。なら、最初から世界中のトップハンターを集める必要はない」
『しかし、日本は真神氏の母国でもあります』
男が一度、瞬きをした。
「それが?」
『え?』
「それが、今回の装備評価と何の関係がある?」
『真神氏は日本人です。日本との間には複雑な経緯もあります』
「それは知っている」
『でしたら――』
「だから、日本人が呼ばれなければ日本への報復だと?」
『そういう見方もあります』
「今回呼ばれたら、今度は関係改善?」
『その可能性について――』
「忙しいな、日本は」
近くにいた別の国の記者から、小さな笑いが漏れた。
「評価会でも似た話になった」
その言葉に、日本人記者の表情が変わる。
『評価会で、ですか? ぜひ詳しくお願いします』
「日本のハンターが、第1回に呼ばれなかったことを気にしていた」
『やはり!』
「だから言った。私も呼ばれていない、と」
『…………』
「他にも大勢いた。日本では、自分たちだけが呼ばれなかったような騒ぎ方だったからな」
『では、日本国内の受け止め方が過剰だったと?』
「過剰というより……少し、自分たちを特別だと思いすぎているように見えた」
『特別?』
「日本人だから優遇される。日本人だから冷遇される。どちらにしても、真神が日本を特別に扱うことを前提にしているだろう? 良い意味でも、悪い意味でも」
記者は何も言えなかった。
「恨まれているから外された。それも特別扱いだ」
『ですが、実際に真神氏は日本で――』
「過去の話をしているんじゃない。今回の評価会の話をしている」
男は静かに記者を見る。
「何でも日本との関係に結びつける必要があるのか?」
質問が止まった。
だが、ここで終わればまだよかった。
『では今回、日本人ハンターが参加した際、真神氏は何か反応を?』
「あった」
記者の目が輝く。
『何と!?』
「日本人ハンターが本人に、日本人である自分たちが装備を借りても構わないのかと確認した」
『真神氏は!?』
男はその時を思い出したのか、とうとう笑った。
「『国籍で武器の相性変わるの?』」
『…………』
「それだけだった」
その日の夕方、日本の情報番組には朝とは違う文字が並んだ。
『海外トップハンターが指摘――“日本は自分たちを特別だと思いすぎている?”』
そして、その隣にはもう一つ。
『真神幸一郎氏「国籍で武器の相性変わるの?」』
朝まで掲げられていた『日本との関係改善の兆しか!?』という文字は、いつの間にか綺麗に消えていた。
◇
もっとも、テロップを消したところで、それまでの論調まで消えるわけではない。
その夜。件のインタビューを扱った情報番組では、スタジオに何とも言えない空気が漂っていた。
『――という発言でした』
画面には海外トップハンターの言葉が表示されている。
『日本は、自分たちを特別だと思いすぎているように見えた』
「いやあ……なかなか厳しいことを言われましたね」
司会者が困ったように笑う。
「ただ、これは少し違うんじゃないですか?」
コメンテーターの一人が口を開いた。
「真神さんは日本人ですよね。それに日本で起きた過去の事件もある。日本側が真神さんと日本との関係を気にするのは、ある意味当然だと思うんですよ」
何人かが頷いた。
だが、隣にいた専門家が少し考えてから口を開いた。
「……今の発言そのものが、指摘されているのではないでしょうか」
「え?」
「『真神氏は日本人なのだから、日本を特別に考えるはずだ』。今、そういう前提でお話しされましたよね?」
「いや、でも母国ですよ?」
「はい。それがなぜ、個人所有の装備の適性評価で、日本人を優先する理由になるのでしょう?」
「…………」
スタジオが静かになった。
画面には第1回と第2回の参加者の比較が表示される。第1回に参加していなかった著名なトップハンターは、日本人だけではなかった。
「第1回にある国のハンターがいなかったとして、それをその国への報復だとは誰も考えなかった。しかし日本人が一人もいないと分かった瞬間、日本では『日本が外された』という議論になった」
「過去の経緯があるからでは?」
「もちろん、それが連想の原因でしょう。ただ、真神氏が日本人を装備評価から排除するよう求めた事実は確認されていません」
さらに画面が切り替わる。
日本人への装備貸与禁止――なし。
真神幸一郎による日本人拒否――なし。
日本の研究機関への異鉱物提供――あり。
六甲山での日本人ハンターの活動制限――なし。
第2回深層装備評価――日本人参加。
「こうして並べると……我々の方が気にしすぎていたようにも見えますね」
「でも、真神さんが日本に複雑な感情を持っていることまで否定するのは違うでしょう?」
「誰も否定していません。そこは分けて考えるべきです」
「分ける?」
「真神氏が日本で経験したこと。それについて現在どう感じているか。そして、深層装備を誰に貸すか。すべて別の問題です。ところが私たちは、真神氏が何かするたびに『これは日本への報復なのか』『これは日本を許したという意味なのか』と解釈しようとしている」
「つまり……何でも自分たちとの関係に結びつけている?」
「海外ハンターが指摘したのは、そこでしょう」
もう一度、先ほどの映像が流れた。
『良くても悪くても、自分たちは特別扱いされると思っているように見える』
『恨まれているから外された。それも特別扱いだ』
「これ……結構、刺さりますね」
女性アナウンサーが呟いた。
「優遇されると思うことだけが、特別扱いを期待することじゃないんですね」
「そうですね。『自分たちは特別に恨まれているはずだ』という考え方も、相手の人生における自分たちの重要性を大きく見積もっているという意味では、同じ構造です」
「でも実際、恨まれてはいるんじゃ……」
「だから、それと今回の評価会は別の話です」
「あ、はい」
スタジオに小さな笑いが起きた。
「そして、もう一つ話題になっているのが、こちらです」
司会者が次の画面を示した。
『真神幸一郎氏の回答――国籍で武器の相性変わるの?』
「…………」
数秒の沈黙の後、司会者が吹き出した。
「いや、まあ……そうなんですけど!」
「正論ですね」
「正論なんだけど!」
スタジオにも笑いが広がった。
「我々、何週間も議論してきたんですけど」
「本人は一言ですね」
「『国籍で武器の相性変わるの?』」
「はい」
「……変わりませんね」
「変わりません」
再び笑いが起こった。
だが、その後、司会者は少し真面目な表情へ戻った。
「今回の件で考えさせられるのは、我々が真神さん本人に確認できていないことまで、真神さんの気持ちとして語っていなかったか、というところでしょうか」
「そうですね」
「日本を恨んでいるはずだ。日本を避けているはずだ。逆に、日本人だから日本を優先するはずだ」
「どれも、本人がそう言ったわけではありません」
「……勝手に決めていた?」
「少なくとも、そういう部分はあったと思います」
それは、この国にとって少々耳の痛い話だった。
かつて17歳だった少年の言葉を聞かず、周囲が彼について勝手に答えを出した。8年後、世界的なハンターとなった男を前にしても、自分たちはまた、本人が何を考えているのかを本人抜きで決めようとしていたのではないか。
違うのは、今度はそれを世界の側から指摘されたことだった。
◇
放送終了後、ネットで最も拡散されたのは、難しい議論ではなかった。
『国籍で武器の相性変わるの?』
『今年一番強い正論きた』
『変わりません』
『日本「真神は我々を許したのか!?」』
『真神「国籍で武器の相性変わるの?」』
『日本「まだ我々を恨んでいるのか!?」』
『真神「国籍で武器の相性変わるの?」』
『万能回答にするなw』
『海外勢にも笑われてたの草』
『草じゃねえよ。結構恥ずかしいぞこれ』
笑いから始まった反応は、やがて海外ハンターのもう一つの発言へと移っていった。
『「良くても悪くても特別扱いされると思ってる」←これ一番痛くない?』
『痛い』
『優遇を期待するのが特別扱いなのは分かる』
『冷遇されると思うのも特別扱いってのは盲点だった』
『「真神は日本を恨んでるから日本人を外した!」って、要するに「俺たちは特別に恨まれてる!」だからな』
『書き方w』
『でもそういうことだろ』
『第一回呼ばれてない海外トップ勢「俺も呼ばれてないけど?」』
『日本「え?」』
『やめろ』
『これが一番恥ずかしい』
もちろん、反発する声もあった。
『いや、真神が日本で何されたか考えろよ。日本との関係を気にするのは当然だろ』
『それは誰も否定してない』
『実際、日本に思うところはあるだろ』
『あるだろうな』
『じゃあ日本外しって考えるのも普通じゃん』
『「そうかもしれない」と「そうに違いない」は別だろ』
『しかも今回については本人が日本人拒否してない』
『異鉱物も日本に来てる』
『六甲山にも入れる』
『第二回の装備評価にも日本人いる』
『じゃあ何を根拠に日本人拒否って言ってたんだ?』
『第一回にいなかったから』
『海外トップ「俺もいなかった」』
『強すぎるからやめろ』
やがて、別の角度からの指摘も現れ始めた。
『なんかこれ、昔と同じことしてない?』
『何が?』
『本人に聞かずに「真神はこう思ってる」って周りが決めてるところ』
『あ』
『17歳の時も周りが勝手に決めた』
『今度は「日本を恨んでるはず」「日本を許したはず」「日本を特別に考えるはず」』
『…………』
『海外の人に指摘されるまで気づかなかったの普通にキツい』
『でも本人に毎回聞くわけにもいかんだろ』
『聞けないなら断定すんなって話では』
『それだ』
『真神が日本をどう思ってるかなんて真神にしか分からん』
『少なくとも武器貸す時は国籍見てないことだけ分かった』
『武器「お前嫌い」』
『日本人「日本人だからですか?」』
『武器「知らん」』
『真神「国籍で相性変わるの?」』
『武器にまで国際政治背負わせるなw』
そして話題は、第2回評価会に参加した日本人ハンターたちへ移っていった。
『で、日本勢は装備見つかったの?』
『何人か貸与候補入り』
『おお』
『普通に評価されて普通に通ってるじゃん』
『特別扱いなし』
『冷遇もなし』
『それでいいんだよ』
『第一回に呼ばれなかった事実は変わらん』
『海外組が先行してるのも変わらん』
『だったら追えばいい』
『本人たちが行くって決めて、自分たちで行って、普通に評価受けた』
『それでいいじゃん』
『海外勢に追いつけるかな』
『知らん』
『即答w』
『でも追いつけるかどうかは、やらなきゃ分からん』
『今度は日本勢が何Fまで行くか楽しみだわ』
第一回に日本人がいなかった。その事実は変わらない。海外のハンターたちが先に深層装備を手にし、実戦経験を積み始めたことも変わらない。真神幸一郎が日本で経験した過去も、なかったことにはならない。
だが、それらすべてを一つにつなげて、彼の行動の意味を勝手に決める必要もなかった。
『結局さ』
『ん?』
『真神にとって日本が特別かどうかじゃなくて』
『うん』
『日本がいつまで自分たちを特別だと思ってるかの話だったんじゃね?』
『…………』
『それ以上言うな』
『海外ハンターがもう言った後だぞw』
『でも第二回には日本人もいる』
『いるな』
『だったらもういいだろ』
『次は結果で話せ』
『それな』
『日本勢、頑張れ』
『追いつけ』
『海外勢も待ってくれないぞ』
『待つ必要ないだろ』
『全員進め』
第1回に呼ばれた者も、第2回から加わった者も、日本人も、それ以外も。
誰かが誰かを待つ理由などなかった。
真神幸一郎が一人で登った道へ、最初はほんの数人が足を踏み入れた。その人数は、もう増え始めている。
そして増えた者たちは、幸一郎の後ろに並んで歩く必要もなかった。それぞれの装備を手に、それぞれの仲間と、それぞれの問題を見つけながら、自分たちの足で先へ進めばいい。
世界はもう、その方法を覚え始めていた。




