種籾の芽出しをするために池を作ることにしました
米の種籾を家畜の餌用だけど、集めるのには成功した。
巨大な倉庫の中に入りきらずに外にまで出ている。
「何だ、アイン、米が食べたかったのか? 炊いてやるぞ」
「止めてよ、お兄様! 大切な種籾なんだから」
私は鍋持ってきて炊き出ししそうになったお兄様を慌てて止めた。
それは確かにご飯を食べたいけれど、これは大事な種籾なのよ。
今は一粒でも大切よ。
いくら私が欲張りだからって食べるなんてとんでもない。
食べるのは秋まで我慢するのよ。
私は自分自信に言い聞かせた。
種籾はある程度集まった。
でも、ここからが本番だ。
最初のクライマックスの田植えまでやることは山のようにあるのよ。
種籾が揃ったら次は種籾を芽出しする。
これが2週間くらいかかる。
そして苗代作って苗を育てる。これが一ヶ月くらい。
その間に湿原を開墾して田んぼにしないといけない。
畦も作らないといけないし水路や水門もいる。大河の治水も並行してしなければ、下手したら田に公平に水が行き渡らないと言う最悪なことになってしまう。
そして、代かきするのよ。代かきとは田んぼに水を入れて耕す事よ。
そして最後のクライマックスに田植えをするの。
ここまでが初期にやることで一番大変な事よ。
これを5月末までにやらないといけない。
ここまでやるのが大変なのよ。
これをやるには多くの人が必要になるはずだ。
お兄様がいくら体力お化けでも限度かあるはずだし、果たしてうまく出来るんだろうか?
私はこれから必要なことを書きだして、お兄様とセバスに見せた。
「次は、種籾の芽出しか? 川の横にデカイ池でも造るか?」
「えっ、箱に入れるんじゃ無くて?」
お兄様の意見に私が尋ねた。
「水に2週間位浸すんだろう? そんな箱が沢山あるか?」
「確かにこれだけの種籾を浸す箱なんてここにはそんなにないわ」
お兄様の指摘に私は認めた。
さすが脳筋なだけでなくて成績優秀なお兄様だわ。
もう私が書きだしたものを頭の中に入れるなんて……
そうか、聖女のところで勉強して頭に入れたんだろうか?
聖女が私とは別のところで米を大量に作って、だぶつく米の前に唖然として立ち尽くす私の未来の情景が垣間見えた。
いやいやいやいや、決してそんな事にはならないはずだ。
聖女にチート能力があって米の品種改良が出来て、水をほとんど使わなくても作れる新種の米を作り出せるならばいざ知らず、王都の周りには冷害が発生するはずなんだから。
それに聖女にそんな能力があれば冷害に強い小麦の新種を作れば良いだけだ。
この南部の最果ての地は最果ての地だけあって冷害の影響を受けないはずなのよ。あっても大したことはないはずだ。
私を断罪追放してくれたあのむかつく聖女に絶対に頭を下げさせてやるんだから!
「無ければ造るしか無いだろう」
そうだ、今は芽出しをどうするかだ。私はお兄様の言葉に私は現実に引き戻された。
「でも、お兄様そんなに大きな池なんてお兄様一人で掘れるの?」
「別に掘らなくても良いだろう。セバス、どこか、良い土地はないか?」
「さようでございますか」
セバスの手には作られた周辺の地図があった。
この地に私が追放されると聞いて、セバスが公爵家の陰を動員して簡単な地図を作らせていたそうなのよ。
さすが我が公爵家の陰は優秀だわ。
「この川が蛇行といるここのところはどうですかな。ここに堤を築いて川の水を流し込めば簡単な池ならばそんなに手間暇はかからないのでは」
セバスが説明してくれた。
「セバス、凄いわね。公爵家の執事って土木工事にも精通していなければいけないの?」
私が尊敬の目でセバスを見ると
「アデライン様。そのようなことはございません。私は若い頃、修行と称して父から公爵領のグリーの付く村の開墾をしたことがあるのです」
「えっ、あの穀倉地帯の?」
私は公爵領の穀倉地帯と言われたグリーノック村の事は聞いたことがあった。それを若い頃セバスが絡んでいたとは知らなかった。
「さようでございます。水を一山越えた、トロサックス湖から引くのが難事業でして」
「だから、治水事業はセバスに任せておけば大丈夫だぞ」
セバスの言葉にお兄様が太鼓判を押してくれた。
あのグリーノック村の開拓をセバスが噛んでいたのなら本当に治水はセバスに任せられる。
計画はセバスがして、それを脳筋のお兄様が工事したら、全部上手くいく。
いや、でも、それじゃあ私の活躍するところが全くないじゃ無い。
それでは意味がないじゃない!
「私も手伝うわよ」
私が主張したら、
「じゃあ、アインは俺の応援をしてくれ」
「応援って何よ。私も土魔法で頑張るわよ」
私が主張したら、
「アイン、お前のやる気は判ったが、アインの土魔法って土ポコだろう。堤は最低でも高さが一メートルは無いといけないんだぞ」
お兄様が指摘してくれた。
「土ポコって何よ。一センチくらいは盛り上がるわよ」
私は言い張った。
お兄様は昔から剣術が得意で魔術もある程度使えた。
期待の次期領主だった。
でも、私は剣術なんてからっきしで、魔術もお兄様が土ポコって言ってくれたけれど、本当にポコって1センチ位山に出来るくらいしか出来なかった。
口さがない家臣や親戚はダンブリーズの役立たずと言い放ってくれた。
お父様の腹違いの兄で領地の代官をしているエイブラム伯父様なんて、
「アデラインは剣も魔法も使えないなんて本当にダンブリーズの恥さらしだな」
とお兄様の前で言い放ってくれて、怒り狂ったお兄様にボコボニされていた。
さすがにお父様がお兄様を注意していたが、それ以来伯父様は王都の私の前には現れなくなったけれど……
それ以来、皆はお兄様を恐れて私の悪口を言わなくなったけれど……
まあ、公爵家では私が役立たずなのは相変わらずだ。
お兄様は「お前は俺の横にいてくれるだけでいい」とか訳の判らない事を言ってくれたけれど、私はお兄様におんぶに抱っこな役立たずのままでは絶対に嫌だ。
一人でやると言うお兄様に頼み込んで私も手伝うことにしたのよ。
確かに堤防作りはお兄様だけの方が効率が良いかもしれないが、
「絶対に土魔術で手伝うんだから!」
私はやる気満々だった。
脳筋で圧倒的に力のあるお兄様に対して、土ポコのアデライン、果たしてアデラインは少しは役に立てるのか?








