聖女視点 いつか必ず仕返しをしてやろうと心に誓いました
「行け、古代君!」
私は古代竜に勝手に名前を付けて叫んでいた。
禍々しい真っ黒の竜だけど、古代竜だから古代君で良いはずだ。
古代君は絶対にやってくれるはずだ。
ガミラスにも勝てたし…………
私の心は期待に満ちていた。
「ギャオーーーー!」
古代君は天井に穴を開けると一気に飛び出してくれた。
一路オーガストを目指して。
私は古代君がオーガストなんかに負けるとは思ってもいなかった。
何しろこの王宮に昔からある神聖な古代竜の卵なのだ。
それを聖女様である私が孵したのだ。
絶対に勝てるはずだ。
私は勝利を確信していた。
古代君は赤い火の玉をオーガストに放っていた。
古代君、オーガストはいけとりにして良いわ。
殺すのはアデラインよ。
あの女、私の役割だったお米を最果ての地で作ってくれて『お米の聖女』なんて呼ばれて喜んでいるらしい。人の功を横取りしたなんて許さないんだから。
私もやはり最果ての地で米を作れば良かった。
アデラインを送り込むんじゃなかったわ。
そこが最大の失敗ね。
でも、何故最果ての地でしか米は作れないんだろう?
私にはよく判らなかったけど……
でも、あの憎き偽エセ聖女、絶対に許さない。
捕まえたら死ぬまで鞭うちしてやるわ。
ドカーーーーン!
でも、古代君の放った火の玉はオーガストにはじき返されてしまったみたい。
何しているのよ。
「遊んでいないでさっさとやっつけておしまい」
私が古代君に叫んだ時だ。
「死ねーーーー!」
オーガストが剣を振ってくれた。
凄まじい勢いで!
ドカーーーーン!
その瞬間だ。
私は古代君が一瞬で破裂するのが見えた。
本当に破裂したのだ。
「ギャーーーーーー!」
私の頭も破裂したのかと思ったほどの衝撃が襲いかかったのよ!
凄まじい衝撃が王宮を襲って、私は気を失っていたわ。
私が気付いた時、そんなに時間は経っていなかったと思う。
私は王宮の瓦礫の中に埋まっていたのよ。
私は頭を振ってゆっくりと立上がったのよ。
手も体も灰のようなものを被ったようになっていた。
「何なのよ。これは」
灰色のねちゃっとしたペースト状の物だった。
オーガストのソニックブレードが王宮の石材を一撃で灰と化してくれたのだと理解できなかった。
「まだ、生きていたのか?」
オーガストが剣を片手にこちらに向かってきた。
しめた、オーガストだ。
私はほくそ笑んだのよ。
「オーガスト様!」
私はオーガストに声をかけた。魅了に成功した時のように聖魔力を載せて!
「貴様は何者だ?」
「ひどいですわ。聖女メリンダです」
私は上目遣いにオーガストを見上げたのよ。必殺魅了の第一段階よ。
「お兄様!」
遠くでアデラインが何か叫んでいるみたいだったが、無視だ。
オーガストさえこちらに取り込めれば一発逆転だ。
ゲームのヒロインの力を見ていなさいよ。
「何をふざけた事を言うのだ。聖女は我が愛しの婚約者アデライン様だ」
オーガストが変な事を言い出してくれた。それも様付けなんだけど……どうしたの?
それに、アデラインはエセ聖女だ!
「何をおっしゃっているの? アデラインは『お米の聖女』でしょ。そんなのがいるかどうか判らないけれど、辺境の地に追放された悪役令嬢じゃない!」
「ふん、アデライン様はこの凶作の時に米を大切に育てられたのだ。あの姿こそ聖女にふさわしい。自らの欲望の事しか考えない灰色お化けの貴様とは違うぞ」
オーガストが私に反論してくれるんだけど……まだ、力が足りないみたいだ。
きれいな私が上目遣いで見て上げたのに……胸でないといけないらしい。
「何をおっしゃっているのです、オーガス様。アデラインのことなどもうよろしいですわ。それよりも早く私の胸に帰って来るのです」
私はアデラインにない大きな胸をオーガストに押しつけようとした。
しかし、だ! あろうことか、オーガストは私の自慢の胸をさっと躱してくれたのよ。
「きゃっ!」
私は思わず体勢を崩して転けてしまったの。
顔からぶつかってとても痛かったけれど…….
でも、これは計算通りよ。
私が転けたのを見て普通の男の子は助けてくれるはず。
そこで私の胸を押しつければ良いわ。
「酷い、酷いわ、オーガスト様」
鼻血を出した私は泣き真似をしてみた。
これで単純な男はイチコロだ。
「ふんっ、そのような灰色お化けに泣かれてもなんともないぞ」
でも、オーガストは普通の男ではなかった。
「何ですって!」
こうなったら仕方が無い。実力行使だ。
私は思いっきりオーガストに抱きつこうとオーガストの胸に飛び込んだのよ。
「ええい、寄るな汚らしい」
でも、私はオーガストの横張手で顔ごと張り倒されたのよ。
女を張り倒すか!
私には信じられなかった。
「きゃーーーー!」
吹っ飛ばされた私は地面に激突していたのよ。
目の前が真っ赤になって私は気絶していたのよ。
そのまま私は地方の修道院に送られた。
「何で、なんで、ゲームのヒロインがこんな目に遭わないといけないのよ」
その日も掃除をさせられながら私は文句を言っていた。
聞くところによるとオーガストとアデラインは兄妹にもかかわらず結婚して王朝を引き継いだたのだとか。
信じられなかった。例え義兄妹でも、結婚はいけないだろう。
シスコンオーガストの本領を発揮してくれたらしい。
でも、私はゲームのヒロインだ。
これは神の与えた試練なのよ。
「ここから絶対に復活してやるんだから!」
私は握りこぶしに誓ったのよ。
いつまでも前向きな聖女でした…………
まだまだ閑話書いていく予定です








