怒りのあまりお兄様は暗黒竜もろとも王宮を消滅させました
「何でこんな所に暗黒竜が……」
「やばい、逃げないと殺されるぞ」
「すぐに逃げろ!!」
領主や騎士達が騒ぎ出した。
早速背を向けて逃げようとする気の早い領主もいた。
「静まれ!」
お兄様がそんな貴族達に叫んでくれた。
その大音声に、思わず領主達の動きが止まる。
まあ元々主力のダンブリーズ騎士団の連中は暗黒竜を見てもびくともしていないのだ。
それもどうかと思うけれど……騎士団の面々はお兄様を信頼しきっているんだろう。
「高々暗黒竜の一匹二匹で騒ぐな!」
お兄様がそう叫んでくれた。
そんな事を言えるのは古代竜を5匹も倒したお兄様くらいよ!
普通は古代竜一匹で下手したら国が滅ぶんだから!
騎士団一つでも対処出来ない。
現にお父様も領地の騎士団では相手にならなかった。
まあ、北の砦にいた本体のダンブリーズ騎士団ならなんとかなったかもしれないけれど……
呼びの部隊では相手にならなかった。
「俺が相手になってやる」
暗黒竜を倒した事のあるお兄様はそう言うと暗黒竜を睨み付けた。
手は早速に宝剣に伸びているんだけど……
「おおおお、さすが暗黒竜を退治されたことのあるオーガスト様」
「暗黒竜ごときではびくともされませんな」
お兄様の声にバージルとセバスが感心してくれた。
「そう言えばダンブリーズ公爵様は暗黒竜を倒されたことがあるとか」
「それも一撃で」
「暗黒竜も全く相手にならなかったとのことでしたな」
貴族の領主達も落ち着いてきた。
「ふん、俺のアインを害しようという暗黒竜など一撃で処分してやるわ」
お兄様の目が爛々と輝いているんだけど……いや、暗黒竜は私に襲いかかろうとなんてしていないって……止めて、そんなことしたらお兄様の怒りが一オクタープ上がるから。
そんな事になったらこの地は大変なことになる。
「いや、ちょっとお兄様、手加減してよ」
でないと王都が一撃で灰塵と化す。
私が慌てて止めようとした。
「さすが聖女アデライン様!
敵である王都の民の事まで気にされるとは」
「王都の民も泣いて喜んでおりましょう」
セバスとバージルが両手を上げて感激してくれるけれど、貴方達も止めなさいよ!
でないとこの王都が一撃で破滅してしまうでしょ。
口に出したらお兄様が更にやる気になるかもしれないから、出さないけれど……
「ちょっとお兄様。ここはダンブリーズ騎士団に任せて……」
私はなんとかお兄様を止めようとした。
お兄様の全力に比べたら、ダンブリーズ騎士団が相手した方が被害は少なくて済むはずだ。
「ドラの助、アインは頼んだぞ!」
お兄様は私の言う事なんて聞いていなかった。
いや、獲物を騎士団に取られると勘違いしたのかもしれない。
「御意」
いきなり現れたドラちゃんを見て周りの領主達はぎょっとしていた。
でも、私はそれどころではなかった。
立派な王宮の白い壁から顔を出した暗黒竜がお兄様を睨め付けた。
「ほおおおお、やる気か、化け物!」
お兄様が宝剣を抜き放って暗黒竜を睨み返した。
お互いの視線がぶつかりバチバチと火花を飛ばしているようだ。
「ちょっと、ドラちゃんお兄様を止めてよ!」
「アイン様、男には止めてほしくない時もあるのです」
ドラちゃんも見当違いのことを言って私を邪魔するんだけど……
「ギャオー!」
暗黒竜が叫んでお兄様を徴発してくれた。
本当にこの暗黒竜も馬鹿だ。
黙っていたらお兄様も見逃してくれたかもしれないのに……猟師を徴発する熊みたいだ。
素直に逃げれば良いのに!
真に強い者は自分よりも強い者を見たら一目散に逃げ出す者なのだ。
かかってくるなんて獣と同じだ。
そう言えば暗黒竜も獣だったか……
私が馬鹿なことを考えていた時だ。
暗黒竜が大きな口を開いた。
赤い火球がお兄様目がけて放たれたのだ。
火球はお兄様を目がけて一直線に飛んでくる。
お兄様が剣を抱えた。
「皆伏せろ!」
バージルの声とともに皆伏せる。
「アデライン様!」
ドラちゃんが私に覆い被さってくれた。
火球がお兄様に到達する寸前でその火球をお兄様が宝剣で跳ね返したのだ。
ドカーン!
火球の起こした風圧がこちらにも襲いかかる。
「ギャッ!」
少し反応の遅れた領主達が風圧に弾き飛ばされた。
お兄様が弾き飛ばした火球が王宮の城門に激突した。
ドカーン!
凄まじい爆発が起こる。
その爆発の終わった後には城門は消滅していた。
「俺のアインに手を出そうとするなど、もう許せん」
お兄様が完全に切れていたんだけど、いや、今の攻撃はお兄様を狙ってしたものだって!
私を狙ってなんていないから!
私は私を庇っているドラちゃんの下で心の底から叫んでいた。
お兄様は剣を上段に構えた。
「お兄様手加減して!」
私は必死に叫んだ。
「甘い!」
お兄様が私に言い返してくれた。
戦いに手加減したらこちらがやられるとかなんとかお兄様はいつも言うのだ。
でも、無制限でお兄様の力を放出したら本当に王都なんてこの世から消滅するのよ!
「死ねーーーー!」
その瞬間、お兄様のソニックブレードが放されていた。
お兄様を起点にして凄まじい暴風が暗黒竜目がけて放たれた。
ドカーーーーン
「ギャーーーー!」
暗黒竜の断末魔の声が聞こえたような気がした。
私はあまりのことに目を向けられなかった。
爆発が収まり、粉塵が消え去った後だ。
そこにあった王宮はきれいさっぱり瓦礫となっていたのだった。
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凄まじい酷暑ですが、皆様命だけは大切になさってください。
クーラーはつけられるように!
クーラー無しの部屋で書いている古里より………………
次回は明朝完結です。
お楽しみに!








