聖女視点 ついに古代竜の卵を孵しました
「変ですな。普通は灰になるはずなんですが」
大司祭が首をかしげてくれたが、
「そのようなことは別に良いではありませんか? 問題は敵の大軍をどうするかだと思うのですが」
殺したドラキュラなんかもはやどうでも良い。それよりも敵の大軍をどう処理するかだ。
「さすが聖女様。よく本質を掴んでいらっしゃいますな」
大司祭は褒めてくれたけれど、褒められても戦況はどうにもならないわよ!
私は大声で叫びたかった。
「まあ、敵を葬り去る最終手段はあるのだが、そこは聖女殿のお力を借りねばならないと思うが大司祭はどう思う?」
陛下が思わせぶりに発言された。
「左様にございます。こうなればもうあれの力を借りるしかございません」
大司祭が大きく頷いてくれたんだけど、何のことなの?
私にはよくわからなかった。
「何をするというのですか、父上?」
エドワード様が私に代わって陛下に尋ねてくれた。
「我が王宮には昔より古代竜の卵が保管されているのだ。聖女殿が聖なる祈りを捧げれば蘇らんと言い伝えがあっての」
陛下が私をまっすぐに見てくれた。
「大司祭様、それは本当ですの?」
「教会にもその言い伝えは残っております。我が国が蛮族に攻め込まれた数百年前に聖女様が石に祈りを込められたら、石が孵化して古代竜になって蛮族共を排除してくれたと伝わっております」
私の問いに大司祭が答えてくれた。
「そのようなことが私に出来るのですか?」
「あなた様以外の誰にも出来ますまい」
私の質問に答えた大司祭は完全に私を信用しているようだった。
「そうだ。メリンダ。お前なら出来るさ」
エドワード様には太鼓判を押して頂けたし、
「メリンダ様ならばなんとかなりましょう」
ブラッドも大きく頷いてくれた。
ビリーだけは胡散臭そうにこちらを見てくれていたが、まあビリーはいつもこうだ。
参考にもならない。
まあ、私はこのゲーム『グレナンのピンクの薔薇』のヒロインの聖女様だ。
不可能は無いのよ。
あのシスコンのオーガストも私に逆らったらどうなるか目にもの見せてやる時が来たわ。
いくらオーガストが強くても聖女の私が孵した古代竜に勝てるわけなんて無いわ。
さすがゲームのヒロインよ。
最後の最後にちゃんと一発逆転のイベントが準備されていたのね。
「では聖女殿参ろうか」
陛下の案内でお子様のエドワード様すなわち国王親子と宰相親子と大司祭親子、それに私の七人で古代竜の卵の設置されている王宮の奥に向かったのよ。
私のエスコートはエドワード様がしてくれた。
陛下は体調は良くないみたいで、宰相親子に助けられながら奥に歩いて行った。
陛下の病を治したいと一度エドワード様に進言したのだが、
「父上の病は呪いだと言うことだ。メリンダがいくら偉大な聖女でも治らないそうだ」
と断られてしまった。
でも、私はゲームのヒロインなのよ。ヒロインに不可能は無いのに!
まあ、その分早くからエドワード様が摂政として執務できるから良いのかもしれないけれど、出来れば聖女としての仕事がしたかった。
まあ、機会があればやってみよう。
私は軽く考えていたのよ。
陛下は私達六人を王宮の王族以外立ち入り禁止区域の中に案内してくれた。
そして、石で出来た大きな扉の前で立ち止まった。
その鍵穴に陛下は取り出した大きな鍵を差し込む。
扉がゆっくりと観音開きに開いた。
中には地下へ降りる階段になっていた。
陛下を背負ってビリーが進んでくれた。
その後ろにエドワード様と私が続く。
壁には扉が開くと点くのか、魔導ランプが明るく光っていた。
そのまま階段を降りると下には広い吹き抜けの広場に出た。
「ビリー、すまなかったの」
「どういたしまして」
陛下はビリーの背から降りるとゆっくりと先に進まれた。
その奥の壇上にその白く輝く卵らしいものがあった。
大きさは長さ1メートルくらいの巨大な卵だ。
「では聖女殿。この卵に聖なる祈りを捧げて頂けるか?」
「聖女様。お願いします」
陛下と大司教が私に頼んできた。
「メリンダなら出来るさ」
エドワード様が私の肩に手を置いて励ましてくれた。
「判りました。やってみます」
私は大きく深呼吸した。
「古代竜よ。我が祈りを聞き届けて今この地に害さんとするダンブリーズ共を倒し給え!」
私はそう叫ぶと一心不乱に祈りだした。
私が30分くらい祈っていい加減に疲れてきた時だ。
「おおおお、卵が大きくなり出しましたぞ」
「本当だ」
「凄いです」
大司教の声にエドワード様とブラッドが喜んでくれた。
私が目を見開くと確かに卵が大きくなり出した。
「古代竜よ、我が願い聞き届け給え。この地に害なすダンブリーズの輩を倒し給え!」
私が声を大に叫んだ時だ。
ピキピキピキピキ
卵にひびが入った。
そして、そこには黒い色の古代竜が現れた。
そして、その古代竜はずんずんと大きくなっていた。
「危ない」
エドワード様は私を通路の奥に引っ張ってくれた。
「ギャオーーーー!」
古代竜の雄叫びと共に天井を突き破って古代竜が顔を地上に出していた。
バラバラと天井から石が落ちてくる。
「キャーーーー!」
私の悲鳴と共に私とエドワード様の周りにも建材が落ちてくる。
「大丈夫か、メリンダ?」
「はい」
エドワード様に私は抱きしめられていた。
「ギャオーーーー」
古代竜が咆哮すると共に凄まじい風を巻き起こして、地下室から地上に飛び出していた。
私は古代竜を孵すのに成功したのだ。








