聖女視点 使者のドラキュラは十字架の前に倒れました。
見習い侍女はいくら待っても帰ってこなかった。
イライラして待っていてもどうにもならない。
「ええい、どうなっているのよ?」
私は叫んだが、誰も返事をしてくれなかった。
こんなところに一人でいてもどうしようもない。
私は仕方なしにエドワード様の執務室に向かった。
廊下の途中でも人影はほとんど見当たらなかった。
「一体どういう事なの?」
私は思わず口に出していた。
ここはグレナン王国の王都にある王宮なのだ。
人がいないなんておかしい!
執務室には、椅子に座り込んで疲れ切ったエドワード様がいた。
目に隈を作って頭を抱えている。
その横にいるビリーもブラッドも同じような顔をしていた。
「貴方達、そんな顔されてどうされたの?」
私はエドワード様たちに尋ねていた。
「どうもこうもないぞ、メリンダ。いくら声をかけても援軍は来ないし城にいた諸侯までも出て行ってしまったのだ」
そう言うエドワード様の顔に血の気がなかった。
これではいけない。
私はこのゲームのヒロインなのよ。
その私がエドワード様についている限り負けるなんてことはないのよ!
「エドワード様。まだ、何か手があるはずですわ、絶対に!」
私は思わずそう叫んでいた。
「何があるというのだ? 敵は10万の大軍になってこの王都目指しているのだぞ」
エドワード様が私を睨み付けた。
さすがケームの攻略対象だ。
怒リ狂う顔も様になっていた。
私がしっかりしなくては……
ここまで来ればやはりオーガストの魅了がはずれたのが悔やまれる。
私が体を許しておけば良かった。
オーガストさえ王家の剣に残しておけば例え10万の兵に囲まれてもなんとかなったのに!
なんとかしてオーガストを再びこちらの側に引き込まないと!
「まだ、手が残っているはずですわ」
私が再度そう進言した時だ。
「さすが聖女様だ。よく言ってくれた」
「父上!」
「「「陛下!」」」
倒れていた国王陛下がいきなり入ってこられた。
私は大きく目を見開いたし、エドワード様なんて思わず椅子から立ち上っておられた。
「エドワード、貴様諦めるのが早すぎるぞ」
「しかし、父上、兵がほとんどいなくなった現状でどうやって奴らと戦うのです!」
「ふんっ、貴様はまだまだ経験が足りん」
国王陛下が鼻で笑われた。
陛下は昔兄の皇太子を陥れた時の切り札であるジルという村長をアデラインのいる村に残しているとおっしゃった。
そのジルを動かしてアデラインを監禁して交渉材料にするというのだ。
悪役令嬢アデラインをオーガストが溺愛している、それを使うというのだが、確かにゲームの中でアデラインをオーガストが監禁するルートがあったけれど、オーガストは禁断の恋心をアデラインに抱いているそうだ。
まあこの前私の魅了が解けたのはエドワード様がアデラインを蹴飛ばしたからだし……
私達は期待して待っていたのよ。
でも、結果は最悪だった。
アデラインはオーガストに助けられて全軍がこの城に攻めてきたのよ。
何でもアデラインはダンブリーズ公爵家の養女で実際は前皇太子の娘だったというじゃない!
そんな、あのアデラインが王家の血を引いていたなんて設定、ゲームにはなかったわよ!
私がその話に驚いて頭の中が切り替えられない時に、王宮にそのジルが使いとして現れたのよ。
陛下が玉座に座り、その右となりが宰相とその息子のビリー、反対の左側にエドワード様と私が並んで待っていた。その私の横に大司祭とその息子のブラッドまでが並んでくれているんだけど……
「ジルよ、久しいな」
陛下が声をかけた。
「さようでございますな、陛下」
ジルと言う貧相な年寄りは不敵に笑ってくれた。
どう見ても田舎のじじいだ。
でも、その体からはとても禍々しいものが溢れているんやだけど……
これは絶対に化け物だ。
「で要件は何だ?」
「決まっておりましょう。我が主オーガス様は陛下に降伏を勧告するために私を派遣されたのです」
「ふん、甘えたことを。私が降伏などあの小僧にする訳は亡かろう」
「貴方が殺した前皇太子殿下の娘御のアデライン様にもですか?」
ジルが不敵に笑ってくれた。
こいつの牙がキラリと光ってくれたんだけど……何こいつ、ドラキュラなの?
私はまじまじとジルを見た。
「当たり前だ。兄は反逆罪で処刑されたのだ。その兄の娘など当に王族から除籍されておるわ。そのようなものに頭を下げる訳なかろう」
陛下は平然と首を振られた。
「何という愚かな」
ジルは笑ってくれたが、
「愚かなのはその方であろう。ランガム!」
「はっ」
大司祭が陛下に頭を下げると懐から大きな白い十字架を取り出したのよ。
「な、何だ?」
ジルは大きく動揺していた。
「これは我が教会に古くからある由緒正しき十字架だ。貴様の苦手なな」
大司祭がそう叫ぶと高々と十字架を掲げてくれた。
「うっ!」
ジルは胸を抑えてよろけた。
さすがドラキュラ避けの十字架、それも絶対に霊験あらたかな奴だ。
「ここにもあるぞ」
ブラッドがその横から同じくような大きさの十字架を掲げてくれたのだ。
「ギャーーーー」
ジルは胸を抑えて地面に倒れ込んだ。
「死ね、化け物!」
大司祭がその白い大きな十字架をジルの心臓に当たるところに突き刺した。
「ギャーーーー」
ジルの悲鳴が謁見の前に響いた。
「喰らえ!」
ブラッドも十字架をジルに突き刺していた。
ピクピク震えてジルは動かなくなったのよ。
申し訳ありません。
この3連休表銀座を槍ヶ岳まで歩いていました。途中書こうと思ったんですが電波状況が悪くて2回空の色と同じで真っ白にホワイトアウトしてしまい断念しました。
ギャーとか夜中に叫んでしまい周りに迷惑かけてしまった……山は最近3時起きとか皆早いです。
もう一度、申し訳ありませんでした。
完結まであと少し全力で突っ走ります








