お兄様に公開プロポーズされてしまいました
お兄様は怒り狂っていた。
村長から話を聞くと、元々お父様が亡くなった暗黒竜の公爵領襲撃も王家と教会が噛んでいたらしい。
そもそも標的は私だったという事だ。
ダンブリーズ騎士団が北の砦を警戒して不在。更には最強のお兄様が王都で学園に通っている間に私を亡き者にしようとしたらしい。
「あの国王とエドワード、それと教会に目にもの知らせてくれるわ」
お兄様は怒り狂っていた。
「まあ、お兄様。私はなんとか無事でしたから……」
いや、ちょっと、本来は怒るのは私のはずなのに、お兄様が激切れしてしまったので、私がお兄様を抑えなければ成らなかった。
「アイン。お前は人が良すぎるぞ。あのボケナス国王はエドワードとエセ聖女がお前を断罪するのも黙認していたんだぞ。お前はこの地に送られる途中で破落戸どもに襲われておもちゃにされて殺される運命にあったんだぞ」
「さようでございます。アデライン様。国王はあんな胸無しに破落戸どもが惑わされる訳はないだろうとか言って笑っておったのです」
「胸無しですって!」
私は村長の言葉に完全に切れていた。
絶対にあの国王とエドワード、それに淫乱聖女は許さない!
誰が胸無しよ! あのボケナス聖女も胸がでかいだけじゃない!
顔は絶対に私の方が上なんだから!
「じゃあ、アイン、いくぞ」
お兄様は私にそう言ってくれたんだけど……行くって私も戦場に行くって言うの?
しかし、そう思った時にはお兄様は既に転移していたんだけど……
グラリとした瞬間私を連れてお兄様は転移していた。
「「「おおおお!」」」
私を抱き上げてお兄様が転移したのは作戦会議で諸侯が揃っている会議室だった。
「さすがオーガスト様。最果ての地からここまでアデライン様を連れて転移なさるとは……さすが最強騎士ですな」
大げさにバージルが感心してくれた。
「さすが、オーガスト様は違いますな」
「本当に!」
諸侯が大きく頷いているんだけど……
「おい、オーガスト様が連れておられるのは悪役令嬢アデラインだよな」
「あの聖女様を虐めたって言う」
皆が私を見てざわざわする。
お兄様が私なんか連れてくるから、私は淫乱聖女のお陰で人気は地に落ちているのよ。
「お前ら何を言っている。アデライン様は『お米の聖女様だぞ』」
「何、あの『お米の聖女様』はアデライン様だったのか?」
「あの似顔絵にそっくりだろうが」
「本当だ」
その声に今度は私は赤くなった。
『お米の聖女』と呼ばれるのはそんなに好きじゃないんだけど。
「そうだ。我が妹アデラインは『お米の聖女様』だ。あの淫乱偽聖女はこの地グレナンに米を入れようとして失敗してこの地に多大な損害を与えたが、『お米の聖女様』が育てられた米はすくすくと育った。貴様らが今食べている米も大半は『お米の聖女』様が作られたものだ。この凶作の地に天が授けられた聖女様であるぞ」
お兄様がそう言うと皆を見渡した。
「皆の者、聖女様に跪くのじゃ」
バージルが叫び出してくれて、全員それにならって跪いてくれたんだけど……それは確かに多くの種籾は私が蒔いたし、それは15日間で育ったから食糧の多くは私が供給したかもしれないけれど……大半を育ててくれたのは騎士団や村の皆だ。私一人では到底出来なかったんだけど。
「そして、皆の者には言わなかったが、我が妹アデライン様は我が父がとある方から託された養女だ。そして、その父は現国王ウィリアムに嵌められて殺された前皇太子殿下アーサー様なのだ」
「な、何ですと、アデライン様は前皇太子殿下の隠し子だったのですか」
バージルが大げさに驚いてくれた。
絶対にやらせだ。
バージルはお父様の側近だったから絶対に知っていたはずだ。
「この飢饉の地に食糧を提供して頂いたアデライン様は元々王家のお方なのだ」
「「「ははあ!」」」
バージルの声の元全員拝礼というか頭を下げてくれた。
水戸黄門じゃ無いって言うの!
私はもう真っ赤になっていた。
「そして、今私は皆の前に誓いたいと思う」
そう言うと何故かお兄様は目の前の椅子に私を座らせて跪いてくれたのだ。
そして、何故かお兄様が私の前で跪いてくれたんだけど……
「アデライン・グレナン様。小さい時に一目貴方を見た時から好きでした。どうか私の未来永劫の伴侶になって下さい」
そう言って手を差し出してくれたんだけど……
ええええ!
諸侯の揃っている目の前で公開プロポーズしてくれた!
信じられない!
それに私はお兄様をついさっきまで実の兄としか認識していなかったんだけど……
それは散々キスされたけれど……実の兄からのキスだと思っていたのよ……
でも、諸侯揃って私を注目してくれているし、お兄様が下から見上げる視線はとても鋭かった。
バージルやセバスが私を見て大きく頷いてくれているんだけど……いや、ちょっと待って、私の一生が決まるんだけど……
こんな中で総司令官のお兄様が私に跪いて求婚してくれているんだけど……絶対に断れない奴じゃない!
お兄様の真剣な目が怖いんだけど……
これは脅迫?
困難で結婚を決めていいのか?
私は皆の熱い視線を受けても全てを受け止めることは出来なかった。
「お兄様、いや、オーガスト、いきなり婚姻の申し込みをされても困ります。今まで兄妹だったのですから」
私の声にお兄様の顔がカチリと凍ってしまった。
バージルとセバスも固まってくれた。
「まずお付き合いすることから始めても良いですか?」
「アイン!」
私の言葉にお兄様はいきなり私を抱きしめてくれた。
そして、次の瞬間、私の唇がお兄様に奪われたんだけど……
ちょっと待って!
私はまずお友達から始めましょうって言うつもりだったのに!
お兄様は絶対に勘違いしている。
でも、お兄様の激しい口づけの前に私は何も言えなかった。
気づいたら舌を絡め取られていた。
というか息が上ってしまったのだ。
息が出来なくて、ぼおーっとしてしまった。
「「「おおおお!」」」
「皆の者。アデライン様とオーガスト様の婚約がここになったぞ」
バージルやセバスの叫び声に反論することも出来なくて、私とお兄様の婚約がここになされてしまったのよ!








