空中に放り出されて絶体絶命のピンチになったら、お兄様が助けてくれました
ドカーン!
ドラちゃんというか元皇太子殿下が爆発した。
その爆発で村長は壁に叩きつけられて階段を転がり落ちていった。
私も爆風を受けて吹っ飛んだのだ。
勢い余ってガラスをぶち破ってそのまま空に飛び出していたんだけど……
「ええええ!」
嘘、本当に外に飛び出しているんだけど……
まさか塔の上から外に飛び出すなんて思ってもいなかった。
「ギャーーーー!」
私の絶叫が辺り一面に響いた。
もう終わりだ。
私は走馬灯のように今までの人生が脳裏を流れた。
「おにいたま!」
お兄様を追って小さい頃はいつも歩いていた。
「お兄様と一緒に訓練する」
「いや、アデライン。それは危険だから絶対にいけません」
「そうだぞ、アデライン。それだけは駄目だ」
お母様とお父様は私の我が儘を聞いてくれなかった。
「お兄様と一緒に結婚するんだから」
赤くなるお兄様に私は抱きついていた。
「アインを傷つけた奴らは許さん」
血まみれの私を見て切れたお兄様が魔術を発動させた。
ズドーーーーーン!
凄まじい爆発が起こってダンジョンは消滅した。
「誰だ。アインを傷つけた奴は!」
私がエドワードに蹴り飛ばされた時に私を抱き取ってくれたお兄様だ。
本当にこの時ほどお兄様を頼りにしたことはなかった。
でも、今回は無理だと思う。
あの時は私のすぐ傍にお兄様はいてくれた。もっとも聖女に胸を押しつけられてその隣で鼻のしたを伸ばしていたけれど……それでも助けてくれたのよ。
でも、今回はお兄様ははるか離れた王都にいる。
ここまで一気に飛ぶのは中々無理だ。
私が諦めた時だ。
「アデライン、大丈夫だ!」
誰かの声が私の頭に響いた。
この声は皇太子殿下の声だ。
ひょっとして私のお父様の声?
大丈夫だって言われても、私は空は飛べないんだけど……
受け身も障壁も出来ないのよ!
私は叫びたかった。
「お前の傍にはもういられないが、これからはこいつが守ってくれる」
お父様の声が私の頭の中に響いた時だ。
スポンと私は誰かの腕の中に落ちていた。
「大丈夫か、アイン?」
そこには確かにお兄様が現れたのだ。
「嘘、お、お兄様!」
私はお兄様にしがみついた。
そう、お兄様にしがみついてさえいれば、どんな高所から落ちても大丈夫だ。
それは今までの経験から判っていた。
100メートルの断崖から落ちた時もお兄様は無傷だったし、その腕の中にいた私も当然無傷だった。
これで落ちても大丈夫だ。
ドカーン!
大音響がした。
おそらく爆発で白い塔が横倒しに倒れたんだと思う。
次は私達が落ちる番だ。
私は衝撃に備えた。
でも中々衝撃は私に襲ってこなかった。
「あれ?」
私がキョロキョロと下を見ると、なんとお兄様が宙に完全に浮いているんだけど……
「えっ、お兄様は空を飛べたの?」
私が目を大きく見張って尋ねると、
「アインのためなら空を飛ぶくらい簡単なことだ」
お兄様は平然と言いきってくれたんだけど……
嘘!
飛行術までいつの間にかお兄様は身につけていたみたいだった。
本当にアニメのヒーローみたいだった。
乙女ゲームの攻略対象の一人だけれど……
こんなんだったらもっと前にお兄様に頼んで空を飛んでもらえば良かった。
それなら、村長の白い塔なんかに引っかからなかったのに!
私は後悔した。
そしてもう一つ気になることがあった。
「お兄様、戦場をほっておいてこんなところに来て良かったの?」
私が慌てて尋ねると、
「アインの危機に駆けつけないなどあり得ないだろう」
お兄様は言い切ってくれたんだけど……
それはとても嬉しかったけれど……来てくれていなかったら私は死んでいたし本当に嬉しかったんだけど……戦場が大丈夫なのか一抹の不安があった。
お兄様のことだからちゃんと引き継ぎもせずに飛んで来てくれたに違いないのよ。
まあ、お陰で私の命は助かったんだけど……
「あ、アデライン様、大丈夫でしたか?」
私を抱いたお兄様がゆっくりと地上に降りてくれると、セイラ達が慌てて私の周りに寄って来てくれた。
倒れた塔は幸いなことに誰一人けが人を出さなかったみたいだ。
寂れた村はずれに、立派な巨大な石の塔が倒れているのを見るのはとてもシュールだった。
後で聞いたんだけど、隠蔽魔術も含めて前王朝の古代技術の結晶だったらしい。
私の実のお父様もこの塔に閉じ込められて、最後は村長に毒を盛られて殺されたらしい。
実際に私は知らなかったけれど、ドラちゃんの体に憑依してお父様は現れてくれたらしい。
お父様が村長の攻撃を全て身に受けてくれたから、ドラちゃんは無傷だったみたいで、お兄様に呼ばれて元気いっぱい現れた。
そのドラちゃんによって私を襲った村長はドラキュラにされていた。
「アデライン様。これは仕方の無いことだったのです」
ドラちゃんは言い訳してくれたが、お兄様も認めたことについて私は何も言えなかった。
村長は王家の陰というか、キップフォード宰相に上手い具合に使われていたみたいだ。
今回も私を亡き者にしてお兄様にショックを与えて決死回生の一手を打とうとしていたみたいだった。
その事をドラキュラになった村長はペラペラと全て話してくれた。
「ふん、国王とエドワードめ。俺のアインを危険な目に遭わせたこと今度こそ許さん」
お兄様は完全に切れていた。
「あの二人には目にもの見せてくれるわ」
怒り狂ったお兄様の前に、グレナン王国の行く末は風前の灯火だった。
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間もなく完結です








