お兄様視点 アインが、行方不明になったので、慌てて領地に帰りました
戦いは順調に進んだ。
というか、全く戦いらしい戦いなんてなかった。
俺達が進むごとにその領地の兵士達や領主自らが馳せ参じてくれたのだ。
現国王はみずからその後ろ盾のヨーク公爵家を滅ぼしていた。
それに第一王子の婚約者のメリンダのバックは教会でしかない。
すなわち血縁関係の外戚が残っていなかった。対する我らは王国を今まで王家に成り代わって守り抜いてきたダンブリーズ公爵家だ。その公爵家の姫を婚約破棄した上で断罪しようとしたのだ。
そんな王家に命をかけて忠誠を尽くす諸侯などいなかった。
何しろこちらは王国最強のダンブリーズ騎士団だ。
当たるところ敵無しというか、進軍すれば進軍するだけ兵力が膨れ上がるのだ。
最初は千人で進み出したこの軍は豊富な食糧事情もありあっという間に1万人を越えた。
そして、副都と言うべきニュートンについたのだ。
さすがにこの地は国王直轄地だ。
久しぶりに戦闘があると俺は覚悟していた。
全軍会わせて今は1万人強。敵は騎士団中心に千人くらい。
しかし、王家直属の領地として簡単には降らないだろうと思っていた。
「バージル、一応降伏を勧告してくれ」
「判りました。直ちに私自身が使者として向かいましょう」
「セバス、お前がか?」
俺は驚いた。公爵家の陰の長のセバス自身が直接赴くとは思ってもいなかったのだ。
「お任せ下さい。この地の代官のジェイコブとは昔から交流があります」
同じ文官同士話せば判るとセバスは使者として出て行った。
そして、丸一日経ってニュートンが全面降伏してきたのだ。
まさか王家の穀倉地帯と化していたこの地が簡単に降伏するとは思ってもいなかった。
まあ、元々この地はヨーク公爵家が治めていた土地で、王家の支配下になつてからまだ十数年しか経っていない。
なんでも、この地でエドワードとメリンダが米を植えろとか好きかつてな事をしてくれて、長雨以上の被害をこの地に与えてくれたのだとか……
こんな風光明媚な所に稲なんか育てるなんてきちがい沙汰だ。
この国で米は高温多雨の最果ての地以外に育つ訳はなかった。
飢饉の対策に俺は直ちに最果ての地から大量の米を運送する手はずを整えた。
最果ての地からは大量の米が運び込まれて、周辺の住民や兵士達に配られたのだ。
食料が乏しくなって来た所に米を配ったのだ。
俺達は救世主として歓迎された。
その噂を聞いて、今までだんまりを決めていた王都周辺の領主達も雪崩をうったようにこちらに合流してきた。
兵士の数は5万を超えた。
もはや王都に守る兵の数は高々知れていよう。
俺は満を持して降伏勧告を王都に送ったのだ。
しかし、王都からは中々返事が返ってこなかった。
国王やエドワードは勝てるつもりでいるんだろうか?
俺には信じられなかった。
ここから王都までは50キロくらいだ。
強行すれば1日の距離だが、どうすべきか?
そんな時だ。
王都から返事が返ってきた。
それも降伏するどころか、拒否してきたのだ。
いやそれ以上の愚文だった。
「逆賊ダンブリーズへ。王家へ反逆するなどなんたることか!
貴様の爵位を剥奪する。それがいやなら直ちに降伏せよ。
そもそも聖女に対するアデラインがした愚行への恩赦が、その方達をつけあがらせたようだ。
愚女アデラインに対する恩赦を剥奪し処刑することを命じる
国王ウィリアム・グレナン」
「な、何だと! セバス、直ちに全面攻撃準備だ」
俺はその文面を見て激怒した。
「オーガスト様。攻撃はいつでも出来ますが、アデライン様は大丈夫ですか? というか、そろそろアデライン様のご身分を明かされても良いのではありませんか?」
セバスが進言してくれた。
「アインの本当の身分を皆に公表するのか?」
俺は逡巡した。
「その方が王家も何も言えなくなりますが」
「しかし、セバス、そうする前にアインにきちんと話さねばならないではないか」
俺はいやそうな顔をしていたと思う。
「前からお話しされた方が宜しかろうと散々私は申してきました」
セバスの言うことはもっともなのだが、そう簡単にアインに話せていたらさっさと話をしている!
俺は苦虫を噛み潰したような顔をした。
そんな時だ。
「オーガスト様!」
突然呼ばれたのだ!
「何だ?」
俺が答えたが周りの者はキョトンとしている。
「どうかされましたか?」
不思議そうにセバスが尋ねてきた。
「いや、ドラの助に呼ばれたような気がしたのだが……」
俺は不吉な予感がして、アインの位置を探った。
アインには沢山のお守りを渡しており、それからアインの位置が判るようになっていたのだ。
「アインの位置が判らん」
俺は慌てた。
いくら探っても居所が判らなかった。
「オーガスト様!」
セバスも慌て出した。
「取り敢えず、王都に対して攻撃準備を整えておけ。俺はアインを探しに行く」
そう言うと俺は慌てて、最果ての地の屋敷に転移したのだ。
「オーガスト様!」
セバスが何か叫んでいたがそれどころではなかった。
「オーガスト様、どうされたのですか?」
屋敷の召し使い達に驚かれた。
「アインはどこにいる?」
俺が尋ねると、
「開拓地にいらっしゃると思いますが」
その声に慌てて、開拓地に向かう。
「アインはどうした?」
途中で出会った陰に聞くと、
「村長と一緒に村外れの建物に入られました」
その声にそのものと一緒にその建物に向かう。
「オーガスト様」
村外れの石畳の建物の前でホレス達が慌てていた。
「どうしたのだ?」
「アイン様が村長と中に入られたのですが、我々が入れなくなりまして」
ホレスが言い訳してくれた。
石の扉があって、びくともしないらしい。
「退け!」
俺は叫ぶや、皆が前から退くのも確かめずに宝剣を抜き放った。
「えっ?」
慌てて、皆が扉の前から退く。
「喰らえ!」
俺は渾身の力を込めて扉を叩き斬った。
ドシーン!
大きな音がしたが、扉は傷さえついていなかった。
「馬鹿な!」
俺は目を見開いた。
俺は中に転移しようとしたが、出来なかった。
「おのれ、どうなっている!」
俺はもう一度剣を振りかぶった。
その瞬間だ。
ドカーン!
建物の上の方で爆発が怒ったのだ。
「アイン!」
俺はその瞬間、アイン目掛けて転移した。








