国王視点 公爵と兄の忘れ形見を亡き者にしようと企てました。
俺は王宮にヨーク公爵家の当主を呼び出した。
「これは陛下、どのようなご用件ですかな」
傲岸な態度を改めもせずに悠然とヨーク公爵は謁見の間に入ってきた。
「何でも陛下の小鳥が城の傍の川に浮いていたとか。王都も物騒になりましたな」
俺はこの瞬間この男を処断せよと叫ぶところだった。
「公爵貴様が手を下したのか」
俺は一応言い訳を聞いてやるつもりだった。
冷たい声になっていたと思う。
「まさか、女官相手に何故儂が手を汚す必要があるのです。王都の破落戸の仕業であるそうですぞ。女官は最後まで陛下の名前を呼んでいたとか」
ニタニタといやらしい笑みを浮かべて公爵が説明してくれた。
こやつは余程の馬鹿らしい。
俺はこの場で処刑するのを決断した。
「そうか、やはり貴様が手を下したか。愚かな奴よ」
俺はさっと手を上げた。
物陰から、詰めていた近衞騎士がなだれ込んできた。
「な、何奴だ?」
公爵が叫んでいた。
「陛下に対する反逆容疑で処断する」
近衛の隊長がそう叫ぶと近衞騎士達が一斉にヨーク公爵に殺到した。
「おのれ、裏切る気か!」
公爵が俺を見た時は遅かった。
「ギャーーーー」
公爵が殺到した近衛に何本もの剣を突き刺されていた。
「おのれ……ウィリアム、儂を排除してこの国が……治まると……思うな」
倒れた公爵は俺に手を伸ばした。
「ふんっ、貴様の後はダンブリーズ公爵が引き継いでくれるわ。奴は貴様と違って政にとやかく口は挟む捲いて」
俺は俺にすがりつこうとした公爵を蹴り飛ばした。
その時だ。王妃が入ってきた。
「お、お父様、どうして!」
王妃は叫び声を上げていた。
「貴方どういう事なの?」
俺をきっと睨み付けてくれたのだ。
「公爵は反逆罪で処断した」
「な、なんでお父様が……何をしたって言うの?」
「王妃よ。貴様もエリンを殺すのに手を貸したのだな」
「え、エリンなど、汚らわしい。破落戸どもにおもちゃにされる時に最後まで貴方の名前を叫んでいたそうよ」
そう言うとこの女は高笑いしてくれたのだが……
この状況でどうやったら笑えるのだろう?
俺は不思議だった。
「そうか、それならば貴様もあの世でエリンに謝れ」
「へ、陛下!」
それまで黙って冷静に見ていたキップフォードが慌てて止めようとしてくれたが、遅かった。
俺は抜いた剣で王妃を刺し貫いたのだ。
「ギャー」
叫び声を上げた王妃はそのまま倒れて動かなくなった。
「陛下、何も王妃様まで手にかけなくても」
沈着冷静なキップフォードが俺に文句を付けてきたが、
「許してやろうと思っていたが、その気が失せた。どのみちヨーク公爵の血を引いているのだ。生かしておいても害悪にしか成るまい」
「しかし、何も陛下自らがお手を下されなくても」
「エリンに対する手向けだ」
俺は首を振った。
栄華を極めたヨーク公爵家はこの日を境にして滅んでいった。
当主一族の反逆罪という事で一族郎党は処刑。
制圧をダンブリーズ公爵に任せて、処刑は派遣した王宮の文官が行った。
ヨーク公爵家の親族はこの国に多くいたが、その多くを捕縛し領地を取り上げた。
グレナン王国の国王直下地が多くなったのはこの時からだ。
多くのヨーク公爵家の係留が領地を取り上げられて平民に落とされた。
全て取り上げられなくても領地半減で、例えば伯爵から子爵位に降爵させた貴族も多数いた。
やり過ぎの面もあったかもしれないが、これで外戚の脅威も半減した。
残ったダンブリーズ公爵家だが、基本的に武のダンブリーズ公爵家は政には口を出さない。
娘のアデラインと息子のエドワードの婚約をすると、北部のノルデイン族の取り締まりをダンブリーズ公爵家に任せた。
公爵は騎士団の多くを国境の砦に配置してくれて、ノルディン族を圧倒してくれた。
煩い公爵はいなくなり、俺の親政が始まった。
宰相にはここまでよくやってくれたキップフォードを任命した。
政はキップフォードを中心に回り、我が国は繁栄を始めたのだ。
俺はほっとした。
そんな時だ。俺が原因不明の病で倒れたのは……
「何故これからという時に倒れなければならない?」
俺は少しも慌てふためいた様子のない沈着冷静な宰相に尋ねていた。
「さあ」
宰相は首を振るだけだった。
「兄上の祟りか?」
「そのような。祟りなどこの世には存在いたしません」
冷静な宰相が即座に否定してくれたが、俺はそのまま素直に信じる訳にもいかなかった。
ヨーク公爵家の面々にも恨まれているはずだ。
何しろ2歳の子まで処刑したのだから。
処刑した公爵夫人は最後まで俺に対して恨みを述べていたそうだ。
エリンも公爵を恨んでいたはずだ。
いい気味だと当時は思っていたのだが、その恨みが俺にかかってくるとそれは堪えた。
俺は息子のエドワードがまだ成人していないのに危惧した。
いつ、兄の残党が兄の遺児のアデラインを担がないとも限らない。
そんな中ダンブリーズ公爵の跡継ぎのオーガストは剣術と魔術をドンドン吸収して伸び出した。いずれはこの国を代表する騎士になるはずだった。そのオーガストが妹のアデラインを溺愛しているらしい。
オーガストがアデラインを担ぐと面倒だ。
俺は宰相と教会に銘じてダンブリーズ公爵領に教会で飼っていた暗黒竜を向かわせた。
幸いなことにオーガストは学園に入学しており王都にいた。
公爵領にいるのは公爵とアデラインだ。
兄の血を引いているアデラインさえ亡き者にすれば万全だ。
俺は将来を慮って非情に徹することにした。
しかし、暗黒竜の攻撃で亡くなったのは公爵だけだった。
アデラインの暗殺は失敗した。
何でもオーガストが決死の覚悟で転移して暗黒竜を退治してしまったらしい。
俺は瞠目した。
アデラインをオーガストが守っている限りアデラインには手も足も出ない。
俺はしばらく様子見を決めた。
エドワードの妻にアデラインがなってくれれば問題はなかろう。
宰相も俺もそう思ったのだ。
聖女などと言うものが現れるなど俺達は想像もしていなかった。
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国王がアデライン暗殺を考えて公爵領を暗黒竜に襲わせていたなんて……
アデラインの反撃成るか
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