聖女視点 反乱軍が北上してくると聞いて王宮から使用人がほとんどいなくなりました
「どうしたの? これだけしか無いの?」
私は晩餐の机の上に並んだ食べ物を見て目を見開いた。
いつもは山ほどの肉とパンが盛られている机には一人ほんの一切れの肉と数切れのパンしか盛られていなかったのよ。
「申し訳ありません。食糧不足でして」
王宮の侍女長は謝ってくれたが、
「食糧くらいちゃんと確保しておきなさいよ」
気の立っていた私は思わず机をバンと叩いていた。
「どうしたのだ、メリンダ?」
そこに目に隈を作ったエドワード様が入ってきた。
「何でもありませんわ」
私が首を振るとエドワード様も机の上の食糧を見て目が点になった。
「これは間食か何かか?」
呆れたエドワード様の声が食堂内に響いた。
「いえ、これしか食糧が無いそうですわ」
私が肩をすくめると、
「これだけと言うことは無いだろう?」
侍女長を責めるエドワード様の声がする。
「申し訳ありません。残りの食糧が少なくなりまして、料理長によると出せる分はこれしか無いと」
侍女長はすまなさそうに項を垂れた。
「食事を準備するのは料理長等の仕事だろう! 料理長等は何をしているのだ?」
エドワード様の高い声が響く。
「まあ、殿下。南部の道を反乱軍に抑えられているのです。食糧を集めるのは中々大変でしょう」
ビリーがいつものごとく料理長等を庇ってくれたが、そういう問題では無いはずよ。
「侍女長。料理長にもう少しちゃんと料理をするように注意しておけ」
エドワード様がおっしゃったが、侍女長は不満そうだった。
「返事はどうした?」
「しかとお伝えします」
侍女長は仕方なしに応えていた。
エドワード様はしばらく侍女長を睨んでいたが、
「エドワード様。今日は中部から聖騎士団が来てくれたのでしょう?」
私は雰囲気を変えるために話題を変えた。
「ああ、そうだ。30騎もの援軍が来てくれたぞ」
「えっ、高々三十騎ですか?」
中部の聖騎士団は100騎はいたはずだ。
それが何故高々三十しか来ないんだろう?
「何でも南部の反乱軍を抑えるために騎士団の全てを連れてくるわけには行かなかったそうだ」
「そうですか……」
私はエドワード様の言葉にがっかりとした。
エドワード様が発した最果ての領主が反逆したのでそれを討つために直ちに集合せよと言う命令によって周辺の領主はすぐに集まってきた。
しかし、遠方の領主達は食糧不足を理由に行軍できないと平然と命令に反抗してきたのよ。
王命に応じないとは信じられなかった。
ダンブリーズの領地からはエイブラムが50騎を率いて来ただけだった。もう少しダンブリーズの領地をまとめられているかと期待したのだけど、全然みたいだった。
これにも失望した。
そんな中今度はオーガストがあろうことか王族をたぶらかせて凶作を生み出したエセ聖女の私とそれにたぶらかされているエドワード様を討つと堂々と宣言してきたのよ。
まさか、正々堂々とこのゲームのヒロインの私に逆らってくるとは想像だにしていなかった。
ゲームのヒロインである私に逆らっても勝てるわけは無いのに!
オーガストももう少し私に忠誠を誓えば取り立ててやろうと思っていたのに、本当に愚かな奴だ。
この時は私はほくそ笑んでいたのよ。
「な、何ですって! 反乱軍が一万人もの兵を集めて北上を始めたですって! 嘘でしょう」
私はブラッドに教えてもらっても信じなかった。
王家に反逆するなんて大それたことを近隣領主がするわけはないと思っていたのよ。
それに王家に逆らうということは聖女でこのゲームのヒロインである私に逆らうってことよ。
それが私には信じられなかった。
この戦いに負けたら処刑されて終わりなのに。
何故王家に逆らうんだろう?
私には理解できなかった。
「どうやら反乱軍は大量の米を保有しているようで、それを餌に近隣の領主達を集めているようです」
ブラッドの言葉に私はよく理解できなかった。
王都近辺が食糧不足なのは理解できたが、王宮の食事を見る限りはそんなに大きく不足しているとは思っていなかったのよ。
私は最初にそれを聞いても食べ物に釣られる領主など高々知れていると思っていたわ。
でも、王都から離れた辺境の領主は食べ物に困窮していたみたいで、次々に集まっていると聞いて少しは善戦して制圧に時間がかかるかもと面倒だなと思ったくらいだった。
でも、それが一万人も集まって北上してくるなんて想像だにしていなかった。
「まあ、メリンダ、心配するな。王都近郊の兵を糾合したら一万人は集まるはずだ」
とエドワード様が教えてくれた。
「それに敵は遠路ここまで来るのだ。多くの脱落者が出るだろう。ここで待って叩けば問題ない」
エドワード様の言葉に私は大きく頷いた。
私はゲームのヒロインなのよ。いざとなれば奇跡が起こるはずよ。
私はそう、信じていたのよ。
でも、翌日は食糧はパン一個になっていたのよ。
「どういう事なの?」
私は侍女長ではなくて給仕に来た若い侍女を叱責した。
「申し訳ありません。私見習いでよくわからなくて」
侍女は涙ながらに言い訳してきた。
「何であなたみたいな我のわからない者が給仕しているのよ?」
「起きたら侍女長も侍女の先輩も王宮におられなくて」
「えッ?」
私は侍女見習いが何を言っているか最初は理解できなかった。
「そんなわけ無いでしょう。どんなことをしても侍女長を探し出してきなさい。見つけられるまで帰って来なくて良いわよ」
私が侍女見習いに命じていた。
しかし、侍女見習いはいくら待っても帰って来なかったのよ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
史上最強のダンブリーズ騎士団北上の報に使用人達は逃げ出しました…………
聖女達はどうする?
続きをお楽しみに!








