お兄様の言うことは衝撃の事実でした。
王家に反逆する?
小心な私には思いもつかないことだった。
もっとも私も王家の私に対する扱に対して思うことが無いわけではかったけれど……
でも、流石に反逆は……
「アイン! 何を言っている お前、王家にあそこまでやられて黙っているのか?」
私はお兄様叱られた。
「でも、お兄様、反逆だよ。王家に反旗を翻すんだよ!」
私は怯えたようにお兄様を見ると
「ふんっ、奴らは卒業パーティーでアインにあのような屈辱を与えてくれた上に、何度も襲いかかってきたのだぞ。我慢にも限界があろう」
お兄様が私に対して説明してくれるんだけど……
確かにそれは言えていた。
でも、反逆なんて恐ろしいことまではするつもりはなかった。
「そもそも、四年前の公爵領に対しての暗黒竜の出現だって王家が陰で暗黒竜を繰っていた可能性があるのだぞ」
「えっ、お兄様、それは本当なの?」
私が初めて聞いたことだった。
「その可能性が高いよな、セバス」
お兄様は私の傍に控えているセバスに声をかけた。
「確証がある者ではありませんが、私が調べた限りは大いにその可能性があります。暗黒竜に関しては教会も噛んでいる可能性が大きいです」
セバスの報告に私はショックを受けた。
そんな王家が我が家を攻撃してくるなんて……
お父様が死ぬ原因を作ったのも王家だというの?
「おお、アデライン、よく来てくれたの?」
国王陛下は王宮を訪ねた私によくもてなしてくれた。
私は人の良さそうな国王陛下が悪事を企んだなど想像も出来なかった。
「アデライン様。人間というのはいくつもの顔を持っているのです。特にあの国王は古狸です。何しろ前の皇太子殿下を反逆の罪に貶めて第二王子の自分が国王の座についたくらいですからな。あの人の良さそうな顔に騙されてはいけませんぞ」
「そうだ、アイン。あの狸は本心では何を考えているかわからん」
お兄様達が口を酸っぱく言ってくれたが、私にはあの国王陛下が私に嘘をついているようには到底思えなかったんだけど……
「アデライン様。大好きなご飯ですよ」
「あっ、美味しそう」
悩んでいた私の前にセイラがお昼ご飯を持ってきてくれた。
熱々のご飯にのりと卵焼きと野菜が乗っていた。それとお味噌汁だ。
我が家の料理長の卵焼きも絶品なのよね。
「頂きます!」
私はそう食事時の挨拶をするとご飯を口に入れた。
うーん、このご飯のもちもち感が良いのよね!
私は軟らかいご飯を口に入れて感激していた。
でも、この現状について思うところもあった。
「私はお米のご飯が美味しく食べたいだけで必死にお米を作っていただけなのに……それが反逆罪になるなんて!」
「嘘つけ! 寝言で散々『絶対にエドワードと聖女に仕返ししてやる!』って叫んでいたぞ」
呟いたらお兄様に反論されてしまったけれど……
「ちょっとお兄様、私の寝言を聞いているって、勝手に淑女の寝室に忍び込まないでよ」
私が文句を言うと
「何を言う。ここまで来る馬車の中とか、最初にお前が忍び込んできた時も散々寝言で叫んでいたことじゃないか」
「えっ? そんな寝言叫んでいた?」
私が赤くなってセイラを見ると
「はい。私も聞いてことがあります」
セイラにまで言われてしまったなだけど……
変だ!
あの二人にそこまで恨みはないはず……いや、私の顔面をあのボケナスエドワードが蹴飛ばしてくれたし、あの淫乱聖女は私の大切なお兄様をあのデカい胸で籠絡してくれた。
私のお兄様を私にはないあの大きな胸で魅了するなんて絶対に許せない!
そう心の中では思っていたのだ。
「アイン、反逆なんてと思うかもしれないが、今までダンブリーズ公爵家は国の為に必死にやってきたんだ。なのに王家に対する俺達への対応は何だ? 父上を殺して、アインを嵌めてその顔を蹴飛ばして、笑うなど許されることではないぞ。ここはこの兄に任せておけ。絶対に傲慢無知な王家を叩き潰してやる」
お兄様の言うことに何一つ反論できなかった。
そうだ。お父様は私に優しかった。
王家との婚約にあまりいい顔はしなかったが、その条件の北方の砦にダンブリーズ騎士団を派遣してくれた。
なのに王家はお父様を亡き者にするために暗黒竜を教会と組んでダンブリーズ公爵家に送り込むなど許される事ではなかった。
そう言えば私は前にお父様が前の皇太子殿下の話をするのを聞いていた。
「反逆した皇太子殿下ってそんなに酷い人だったの?」
私が歴史の勉強の時に家庭教師から教えられて、夕食の時にお父様に尋ねると
「アデライン。物の見方というのはいろんな面がある。今の残った貴族からしたら皇太子殿下はとても悪い方にした方が都合が良いのだよ」
「えっ、どういう事?」
小さい私はお父様の言うことがよく判らなかった。
「当時皇太子殿下と今の国王陛下、その時の第二王子殿下がどちらが国を継ぐかで争っていたのだよ」
お父様が言うには皇太子殿下は黒髪の貴公子と呼ばれて女性達に大変人気があったらしい。とても優しい方だったそうだ。
「最後は皇太子殿下が反逆罪で罪を得たが、俺には未だに信じられないんだ」
お父様は寂しそうに私に教えてくれた。
「ふうん、そうなんだ」
小さい私にはお父様の話がよく判らなかったが、皇太子殿下に関してはそんなに悪い人ではなかったと父の言うことは理解できた。
そうだ。国王陛下は私にはいい顔をしていたが、自分が王位を継ぐ為には優しい皇太子に罪に着せたのかもしれない。
お兄様のことを信じるなら、父を殺そうと画策した腹黒国王みたいだし……
私はお父様を殺したのが国王ならばお兄様が反逆するのは仕方がないと思ってしまった。
ついでにあのエドワードと淫乱聖女に仕返しが出来るし……
私も覚悟を決めたのだった。








