お兄様視点 王家から反逆の汚名を着せられたので逆襲することにしました
我が妹アインに土魔術の加護があるのが判った。
これは喜ぶべき事だ。
何しろ、アインが祈って蒔いた籾殻が、15日で稲刈りまで終えられる超促成早場米になったのだ。
籾蒔きから収穫まで15日ってどんな奇跡なんだ?
俺はとても嬉しくなった。エイブラムのボケナスがアインのことを役立たずと言いだして、アインは泣いていた。そんなエイブラムを俺がただで許す訳は無いが……エイブラムをボコボコにしてもアインが自信を取り戻す訳もない。
でも、『お米の聖女』になることでアインも自信を取り戻せたはずだった。
もっとも本人はこの呼び名がメリンダと被るから嫌だと言っていたが……
少なくともこんな事はアインしか出来ないんだから聖女と呼ばれて当然だろう。
後は如何にしてあのエセ淫乱聖女を退場させるかだ。
俺様を魅了でアインから引き離したことは万死に値する。
俺は絶対に許さないと決めていた。
まあ、そんなのは後のことだが……
でも、これでアインの心配する食糧不足の心配は何もなくなった。
そんなに早く育ったら、土地も干からびるんじゃないかと危惧したんだが、その後すぐに蒔いた二度目のアインの種籾も順調に育ってくれた。
『お米の聖女』が蒔いた種籾は特殊みたいだった。
超促成米にもかかわらずほとんど変わらない質と量の米が採れていた……いや違う。短期間に収穫できたにもかかわらず、他に比べてアインの蒔いた稲は収穫量が倍くらいになっていたんだが……
成った籾の数が通常の倍になっているんだけど……
本当にチート能力だった。
アイン一人いれば公爵家の食糧くらいはどうにでもなるだろう。
さすが『お米の聖女様』だ。
でも、アインが言うにはこれから王都周辺で雨不足になって食糧不足になるから食糧はいくらあってもいいそうだ。
お米はアインが自分がご飯を食べたいから作っていたんじゃないんだ!
てっきり俺はアインの食欲を満たすために米を栽培していると思っていた。
アイン一人が食べるにしては莫大な耕作地を作っているなと不思議に思っていたのだ。
アインは国の民のことを考えてそうしていたのか!
素晴らしい考えだ!
でも、アインには未来予知まで出来るのか?
俺には信じられなかった。
アインは本で読んだと言っていたが、本に未来予知は載っていないだろう。
そんな本があれば俺が欲しい。
もしアインの言う通り長雨が続けば小麦の育成が悪くなり凶作になって、飢饉が起こるのは確実だった。
俺は飢饉が起これば国が乱れると思い、騎士団を分割して各地に派遣して少しでも各地の領主と顔つなぎ出来るようにし始めた。
各地に魔物や盗賊が現れて、困惑している領主達が現れたのだ。
この最果ての地に一個師団もあっても仕方が無い。戦力の無駄だ。
半数を残し、俺は残りを各地の困窮している我が家と親しい領主の元に派遣し始めた。
それと近隣領主に派遣した。
サウス山脈を越えた地域には多くの中小領主がいた。
そういう所に騎士団や使者を派遣して、関係強化を始めた。
それ以外にもバーモント商会や陰も使って、ご飯の実演販売や、備蓄食に米を売り込んだのだ。
米はアインの可愛らしい似顔絵の「お米の聖女」マークを麻袋に縫い込んで、大々的に売り出した。
米は家畜の餌という領主にも、取りあえず精米して炊飯したご飯を食べさせて、その印象を払拭させようとした。まあ、中々難しかったが、取りあえず、米が家畜の餌だけではにくて人間も食べられると言うことがその領主や領民にも判ったはずだ。
しかし、どちらかというと王都周辺は長雨というよりは雨が降らずに水不足だった。
まあ水不足で小麦が凶作になれば、米は使えるから、変わらずに米と騎士団の交流は続けさせたのだが……
お米の方は家畜の餌というのを払拭するのに役立ったが、備蓄に売り込むのは中々上手くいかなかった。騎士団の派遣は大成功だったが……
何しろダンブリーズ騎士団はこの国最強の騎士団なのだ。
それが駐留するだけで綱紀が引き締まり、罪人が少なくなった。
盗賊どもも、騎士団が常駐すると聞くと慌てて逃げ出す始末だ。
それに対抗しようとした山賊どもは公爵家の陰も協力して一網打尽にした。
騎士達は本当に活躍してくれた。
そんな中、夏になると本格的に雨が降り出した。
それも大雨だ。
あっという間にいくつかの川が氾濫して、洪水が起こった。
氾濫しないところも長雨の影響や疾病の蔓延で小麦の取れ高が大幅に少なくなったのだ。
ついに米の出番だった。
我が領地の米の出番だ。
ここまで小まめに実演販売していた成果が出だした。
米が大量に売れ出したのだ。
値段はあっという間に小麦と同等の価格になった。
倍の値段になるのに時間はかからなかった。
俺は我が領地に友好的なところには小麦と同等の値段で販売した。
王家からはふざけた事に税で徴収するだとか米を寄越せとか言ってきたが無視した。
舐めたことを言うな!
何しに王家にそこまでしてやる必要がある。
米を譲って欲しければエドワードがここまで来てアインに土下座して謝れば良いのだ。
まずはそこからだった。
そうしない限り俺は王家に米を譲る気なんてなかった。
俺としては王家が我が公爵家を反逆罪で訴えてくれても全然問題はなかった。
まさか王家がそんな自殺行為をするなんて思ってもいなかったのだ。
そうしたらどうしたことだ?
何をトチ狂ったか王家は我が家が反逆したと各領地に討伐命令を下したのだ。
俺はそれを聞いた時に心の中で喝采を叫んでいた。
普通の時に戦っても王家は我が家に絶対に勝てはしない。
それをこの食糧不足の飢饉時に我が家を反逆者にしたのだ。
俺には自殺行為にしか思えなかった。
「いやあ、こんなに上手くいくとは思いませんでしたな」
「エドワードがこれほど馬鹿だとは思ってもいなかったぞ」
「どうされますか、オーガスト様」
バージルが尋ねてきた。
「食糧不足で狂気に駆られたエドワードを討つと全領地に使者を送れ」
「よろしいので」
セバスが聞いてきたが、
「王家がここまでアインを蔑ろにしてきたのを我慢して耐えてきたのだ。ここまで来れば我慢する必要もなかろう。王家の悪を正すという事でエセ聖女とそれに騙されたエドワードを討つという名目で全領主に対して招集をかける。食糧はこちら持ちだとはっきりと明言しろよ。我が領地に反する行動を取った領地には二度と米は渡さんとな」
「判りました。直ちに全領主に使者を送ります」
「よし、エドワードとあの淫乱聖女に思い知らせてやる」
俺は王家を叩き潰す気満々だった。








