聖女視点 ついにアデライン達を反逆者に仕立て上げることに成功しました
「殿下、直轄領内で餓死者が出始めています」
「倉庫を開いたのでは無いのですか?」
ビリーの報告に私が指摘すると、
「秋からの不作でグレナン流域の倉庫にももうあまり在庫はありません」
ビリーが首を振ってくれた。
「そんなに放出したのか?」
「殿下ができる限り放出しろとのことでしたので放出しました」
エドワード様の質問にビリーが答える。
「最果ての地の米の供出の話はどうなっている?」
そうだ。あそこには米が余っているはずだ。
本来ならば私が行ってお米を作ったはずなのところなのよ。
普通に育てればお米は取れたはずだ。
その手柄をアデラインに取られたけれど、余っているんだから王国に供出させるべきだろう。
「全く無視されております」
ビリーが首を振ってくれた。
「ビリー、少し舐められすぎているのではないか?」
エドワード様がビリーを睨むと、
「舐められようが何しようが返事一つ送ってこないのが実情です」
ビリーは全く動じなかった。
「お前がやっても無理か」
「父からも送ってもらいましたが、なしのつぶてでした」
「宰相から連絡しても無理か」
エドワード様が考え込まれた。
「本当にアデラインは生意気ですね。お米を作れたからって、あの女の罪が無くなった訳ではないのに」
私は呆れた。
断罪の時のオーガストの雰囲気にのまれて許してしまった事が惜しまれた。
もっとその時反対すれば良かった。
「やむを得ん。父上にアデラインに王命で米の供出をするように命じてもらおう」
エドワード様が決断された。
こうなれば陛下に王命で命じてもらうしかない。
そうすればいくらアデラインでも米を供出するだろう。
私は陛下の病室に向かうエドワード様とビリーを見送った。
「しかし、アデラインも頑なね。お米くらい寄越せば良いのに。どこかに売ろうとしているのかしら?」
私が残ったブラッドに尋ねると
「何回も刺客を送ったことがオーガストを始め態度を硬化している原因だそうです」
ブラッドの言葉に私は黙り込んだ。
確かにやり過ぎたかもしれない。
その後の様子を見に行ったニュートン商会の会長はまだ戻ってきていなかった。
「確かにやり過ぎたかもしれないわね」
私は肩をすくめた。
「教会の飼っていた水竜も壊滅したみたいだし、教会としても痛手よね」
私はこの時はまだ笑っていられたのだ。
陛下の王命を奉じた使者が疲れ切って帰ってきたのはそれから1ヶ月後だった。
飢饉で道中の治安も悪くなっており、辺境にある最果ての地まで往復するのは本当に大変だったみたいだ。
「王都周辺は農民の頬もこけており、十分な食料も無く、死体があちらこちらに散乱している状況でしたが、辺境に近付くにつれて農民達の頬もぷっくらとふくれるとまでは申しませんが、食は足りているようでした」
使者が報告した。
「なんだと! 南部は凶作では無かったというのか?」
「そうは申しませんが、ダンブリーズの者達が米を融通しているのではないかと存じます」
「なんだと、奴らいつから王家の代わりをするようになったのだ。思い上がるのも甚だしいぞ」
エドワード様は眉間にしわを寄せて使者を睨み付けられた。
「本当にございますな」
使者も大きく頷いた。
「で、結果はどうだったのだ?」
「全くとりつく島もありませんでした」
使者が首を振ってくれた。
「とりつく島もないとはどういう事だ?」
「王命の書類をオーガスト様が見る前に燃やされました」
私には王命の書かれた書類を燃やすなど信じられなかった。
「な、何だと、王命の書類を見る前に燃やしただと」
エドワード様も大きく目を見開かれた。
「し、信じられません。これは反逆では無いのですか?」
私は思わず声を上げていた。
「メリンダ様、めったなことは口になさいますな」
ビリーが注意してきたが、
「何が悪いのですか? 王命の書類を見もせずに燃やすなど歴とした反逆行為でしょう」
私ははっきりと断言したのよ。
「本当だな。許すまじ行為だ」
「殿下まで。今ダンブリーズにへそを曲げられますと下手したら本当に独立してしまいますよ」
ビリーが反論してくれたけれど、王命に逆らえば周りから逆賊として見なされて討伐されるはずだ。
王命で討伐が命じられれば、いくらダンブリーズが強くても勝てないだろう。何しろ全領主の軍隊と戦うのだ。
ダンブリーズが制圧されれば何もせずとも米を接収することは出来るだろう。
これで食糧不足は解決だ。
反逆を理由にアデラインを今度こそ処刑出来るはずだわ。
私には良いことずくめに思えた。
「エドワード様。アデラインにそこまで我が儘を許されるのですか?」
「まあ、メリンダの憤りも当然だが、そこは後で考えよう。オーガストは何か申していたか?」
エドワード様は取りあえず使者の報告を全て先に聞くようだった。
まあ仕方が無い。
「いや、まあ、辺境の地のものは口が悪うございますからな」
使者が笑ってくれたが、それでは全然意味が判らない。
「何を申したのだ。碌な事は言わなかったろう?」
エドワード様が使者を促した。
「オーガスト様はエドワード様がアデライン様を傷つけたことを未だに根に持っておられるようで、どうしても米が欲しかったら、まずはこの地に王子自ら馳せ参じて、アデライン様に謝れと申されました」
「な、何だと!」
エドワード様は手を震わせて立上がられた。
「彼奴、ここまで我慢して聞いておればいい気になりおって、こうなればもう許さん。全領地に通達せよ。反逆者オーガストとアデラインを討つために直ちに馳せ参じよと」
エドワード様が命じられた。
「殿下、お待ちください。そのようなことをしてよろしいのですか?」
「何だ、ビリーは我が王国軍がダンブリーズ軍に負けるというのか?」
「いえ、そうは申しませんが……」
ビリーが慌てて首を振った。
「なら良かろう。全領地に伝えるのだ。ダンブリーズ公爵家が反乱したとな。直ちに討伐の軍を起こす。全領主は兵を率いて参集せよ。食料は最果ての地にあると伝えるのも忘れるなよ。討伐に活躍した領地には応分の食料を与える」
「了解しました」
直ちに文官達が書類を書き出した。
「ふん、オーガストめ。ここまで我慢してやったが、もう許さん。俺の足下にひれ伏せてやるわ」
私はエドワード様の横でエドワード様の頼もしい言葉を聞いた。
あの生意気なアデラインをやっと処刑出来ると私は笑いが止らなかったのだ。
ついに討伐軍を起こすことになりました。
しかし、王子達の予想通りに事が運ぶのか?
続きは明日です。
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