困窮している貴族達にお米を渡して私の人気はうなぎ登りに上がり、聖女の人気は地に落ちました
「皆ありがとう」
私が皆に感謝していると、いきなり私の目の前の空間が歪んだんだけど……
「キャッ」
思わず声を上げると、転移して現れたのはお兄様だった。
そのまま押し倒されたんだけど……
倒す前にお兄様が抱きしめて手で庇ってくれたから、ショックは無かったけれど……
「ちょっといきなり出て来て押し倒さないでよ」
下から私が文句を言うと、
「すまんすまん、アインが襲われたと聞いてな慌てて飛んで来たんだ」
お兄様はそう言い訳しながら立上がるや私を立たせてくれた。
「本当に、もう!」
私が怒ろうとするがお兄様はキョロキョロして、
「ドラの助!」
「はい、御前に」
お兄様の叫び声に即座にドラちゃんが現れた。
「アインを貶したニュートン商会の奴はどこだ?」
「バーモント商会長に反論されてすたこらと逃げ出しましたが」
ドラちゃんが報告してくれた。
「何だと、逃げ足の速い奴だな。誰か付けているのか」
「はい」
「判っているな」
お兄様がドラちゃんに念押しするんだけど……絶対に良からぬことだ。
私がジト目でお兄様を見ていると
「これはこれはオーガスト様」
村長がやってきた。
「本日はお越しにならないと聞いておりましたが」
「アインが色々と言われたと聞いてな。慌てて飛んで来たのだ」
「オーガスト様は本当にアデライン様を大切にしていらっしゃるんですね」
村長が生暖かい視線を私達に向けてくれるんだけど……何か違う。
「先程アデライン様に失礼な事を話していたのは、昔から付き合いのある業者です。最近はとんと来なかったのですが、ジョージさんがニュートン商会の方をご存じで、また来られるようになったのですよ」
村長が説明してくれた。
「しかし、村長。その男は、何でもアデラインが飢えた庶民のことを考えない金に汚い女のように言っていたそうでは無いか」
お兄様の周りの気温が急激に下がってきたんだけど……
あまりヒートアップされると不味い。
「まあまあお兄様。バーモント商会を始め皆が庇ってくれたのよ」
私がお兄様のシャツの裾を引いた。
「アデライン様は凶作の我々を哀れんで、お米を各自に恵んで頂ける慈悲深い聖女様です。当然言われ無き中傷に対しては、ちゃんと我々も言わせていただきます」
村長も横から説明してくれた。
「ならば良いが……いや、村長、世話になったな」
お兄様が村長に礼を言うと
「こちらこそ御領主様始めオーガス様にはとても世話になっております。今回も収穫祭に屋台を出して頂いてありがとうございます」
「そう言ってもらえるとこちらとしても嬉しいな」
お兄様の機嫌が少し直った。
「ではアイン、そろそろ帰るか」
「えっ、もう帰られるのですか」
お兄様の声に村長と私も驚いたが、
「我々があまり長居すると村民達も羽を伸ばしにくかろう」
お兄様が笑って言い切るや、私を抱き上げてくれたんだけど……
「ちょっとお兄様!」
私は驚いたが、
「お兄ちゃんとお姉ちゃんはラブラブなのね」
メイが変な事を言ってくれるんだけど……
実の兄妹でラブラブなんてあり得ないわよ!
私の心の声は聞こえなかったけれど……
その日はお兄様は何故か超ご機嫌だった。
「小さい子供にアデライン様とラブラブのカップルに見えると言われて喜んでおられるのではありませんか」
セイラが推測してくれたんだけど……実の兄妹でラブラブと言われても違うだろうと私は思った。
でも、それを問い詰めるような余裕があるのはこの日までだった。
翌日から私はとても忙しくなったのだ。
「グレンバー子爵が参られました」
セバスの案内で謁見の間に小太りの中年のグレンバー子爵が入ってきた。
「お米の聖女、アデライン様におかれましては大変麗しく。私南部に領地を持つグレンバー子爵と申します」
「貴方の娘のキャロルには学園時代に色々と世話になったわ」
私が懐かしがって言うと
「アデライン様に覚えて頂けていると娘が知ったら喜びましょう」
グレンバー子爵は微笑んでくれた。
「この長雨は大変だったわね」
「本当に、作物の生育にも影響するし小麦の疫病も流行って本当に難しいシーズンでした」
噛みしめるようにグレンバー子爵は粒やいた。
「この長雨は、止めれば良いのに面白がって聖女達が雨が降り出してから雨ごいをしたのが原因だそうだぞ」
「誠にございますか?」
お兄様の指摘に目をつり上げてグレンバー子爵は見た。
「グレナン流域のジェイコブという男が泣いて雨を止めるように聖女に具申したのに、聖女は『雨を求めたのは貴方達でしょう』と言って雨を止め無かったそうだ」
「なんたること。許されませんな」
子爵は握りこぶしを握って憤っていた。
「エセ聖女は自分が災いを招いたのに、あろうことかここにある米を徴収して家畜の餌にしようとしたのだ」
「本当でございますか!」
子爵は目を見開いてお兄様を見ていた。
「なんでも、エセ聖女は肉が食べたいとグレナン流域を開墾して大規模な養豚場を計画しているとか。王家も聖女も民が飢えるよりも豚肉が食べたいそうだ」
お兄様が言い切ってくれたんだけど……本当なんだろうか?
「我らが抵抗したからなんとかグレンバー子爵に渡せる分は取り置けたが、いつまで抵抗できるかわからんのだ。殿下や聖女の我が儘にも困ったものだ」
お兄様が下を向いて呟くと、
「オーガスト様。我らこの飢饉の時のこの食料の恩義は一生忘れません。何かございましたらいつでもお声がけください。直ちに馳せ参じます」
「うん、その時は頼むぞ」
「ははあ」
子爵は私達に跪くと外に出て行った。
外に出るとホルス達が米の食べ方を伝授しているはずだ。
今ので今日は5組目だった。
小麦の凶作で食べ物が高騰して庶民には飢え死にするものまで出だしたのよ。
そんな中お兄様達の声かけが功を奏して、次々に貴族達が最果ての地を訪ねだしたのだ。
その貴族達に私は『お米の聖女』として謁見して、お米を渡したのよ。
その噂がグレナン国内を駆け巡るのに時間はかからなかった。
貴族達が大挙してこの地を訪れ出したのよ。
そんな貴族達にお兄様は惜しげも無くお米をドンドン与えたわ。
あっという間に王家の人気は地に落ちて、お米の聖女の私の人気がうなぎ登りに上ったのよ。
私は聖女やエドワードに仕返しが出来て私は最高の気分だった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
次は聖女の反撃です
お楽しみに








