村の収穫祭で王都の商会が私の悪口を言ったら、周りの皆に庇われました
王家が色々と画策しているなんて、私は全く知らなかった。
と言うか王家が何かしてくるなんて考えもしていなかった。
あのメリンダが何も考えないわけないのに!
そんな能天気な私は、毎朝、お兄様の指示で作られる味噌汁とご飯にほだされていた。
全部私が旺雅兄ちゃんに好きだって言ったおみおつけなんだけど、何でだろ?
「アデライン様、今日はトウフの味噌汁です」
今日も料理長のグスタフに言われて私は目が点になった。
味噌汁に白い具が揺れている。
「嘘、お豆腐なんてどうしたの?」
「大豆から作ったのですが、オーガスト様が本で読んだ知識を元にして作られたんですが……」
「えっ、お兄様が」
「いや、アインが好きそうだなと思って……」
お兄様がぶっきらぼうに言い訳する姿が、どこか旺雅兄ちゃんと似ていた。
「嘘、私お豆腐は大好きよ!」
「そうだろう」
私が大きく目を見開いて頷くとお兄様が笑ってくれた。
パクリと一口食べる。
「美味しい!」
豆腐なんて食べるのは久しぶりだ。
口の中でとろけるんだけど……
「ありがとうお兄様」
そう言って笑うと何故かお兄様が固まっているんだけど何でだろう?
いつの間にか私とお兄様だけは箸を使って食べているし……他の皆はスプーンとかフォークを使っているのに……絶対に変だったと思う。
今日は村の収穫祭だ。
今年の小麦はこの村でも長雨の影響で取れ高は少なかったみたいだ。
まあ、でも、今年はお近付きの印にとお米を一人10キロ贈ったので、この村で餓死者が出ることはないと思う。
「こんなに頂いてよろしいのですか?」
村長は恐縮していた。
「良いのよ。メイちゃん達には世話になったし、これから皆にはどんどん働いてもらわないといけないから」
私は鷹揚に頷いた。
もっと沢山あげてもいいんだけど、あまり与えるのは村人にとって勤労意欲を失うから良くないとお兄様達が言うので、これだけにしたのよ。
まあ、食うに困れば屋敷を訪ねてくるだろうし、この冬は屋敷を中心に街を作るということで、仕事には事欠かないと思う。
屋敷の周りには既に鍛冶屋とバーモント商会が出している雑貨屋があったが、更には服飾店とか食べ物屋とか宿屋とかを作ろうと、お兄様とセバスによっていろいろと計画はされていた。
「皆の者、本日は皆も存じ上げていると思うがこの地の御領主様のアデライン様にもご参加賜っている。アデライン様は今年不作の我々を哀れんで一人10キロの米を我々に与えていただけた」
「おおおお」
「さすが御領主様」
「良く我々のことを考えて頂けている」
皆から歓声が上がった。
「アデライン様、一言よろしいですか」
「えっ?」
私は村長に言われて固まってしまった。
しまった……何も考えていなかった。
「御領主様」
「アデライン様!」
でも、皆から見つめられた。
「お姉ちゃん!」
メイも私を期待した目で見てくるし、話さないわけにはいかない。
私は壇上に立つと、
「ええと、領主のアデラインです。皆にはお兄様が領主だと思われていますが……」
私がそう言うと、皆どっと笑ってくれたんだけど……
うーん、何か違うと思いつつ、受けたから良いのか?
「まあ、お兄様はいずれこの国のダンブリーズ公爵家を継ぐので、この地の領主は名実ともに私になります。今は足りないところをお兄様や皆に助けてもらっている頼りない領主ですけど、宜しくお願いします」
私はペコリと頭を下げたのだ。
アリスからは後で威厳が足りないとか、平民に頭を下げるのは何事だとか散々怒られたけど、私は私だ。
それ以上を求められても困る。
祭りは盛況で、バーモント商会が出している出店や、騎士達が出している串かつやとかがあって、結構楽しめた。
「これはなんの肉なの?」
「アデライン様、この前オーガスト様が倒された水竜の肉ですよ」
今日は私の護衛についたホレスが答えてくれた。珍しくお兄様は仕事があるとかで今日は朝から出掛けていたのよ。
アデラインに何かあったら殺すとか物騒なことを言って脅していたけど……
この地で一番恐ろしいのは何を仕出かすかわからないお兄様だから、お兄様がいない限り問題はないと思うんだけど……
それに隠れてドラちゃんも護衛していると思うし、騎士団ベスト10に入るホレスが護衛してくれるんだから問題はないだろう。
「ほお、これが水竜の串焼きですか?」
村長と話していた男が寄ってきた。
ホレスが慌てて、男と私の間に入る。
「御領主様はちゃんと守られていらっしゃいますな」
男が感心してくれた?
「その方、何者だ?」
つんけんにホレスが誰何した。
「これは申し遅れました。王都のニュートン商会ともうします」
「ああ、王都の商人が何だ?」
「少しでも、今話題のアデライン様にお近づきになれたらと存じまして」
「王都では相変わらず聖女に酷いことをした悪役令嬢とか言われているんでしょう」
私が横から口を出すと、
「いえ、今は聖女様が飢えた人を助けるのにお米を少しでも譲ってほしいとお願いされたのに、それを袖にして、金を持ってこいと法外な金額を請求されたと話題でございますよ」
「な、何だと」
それを聞いて、ホレスが剣の柄に手を添えて睨み付けてくれたんだけど……
「これはこれは不思議ですな」
その時、後ろからバーモントが顔を出してくれた。
「お米の聖女アデライン様は聖女様の今までのアデライン様に対する酷い行いを謝罪しにこの地に来ればお米を渡しましょうとおっしゃられたにも関わらず、聖女様が頭を下げるなんて自分のプライドが許さないと拒否されたと聞いておりますが」
「な、何だと!」
その声にニュートンが怒り出したが、
「そうだ。アデライン様は俺達農民が飢えて困っていたら、お米をただで分けていただいた聖女様だ」
「法外な金を請求なんかされるものか」
「嘘をつくんじゃない、エセ商人」
「そうだ、聖女様の悪口をいうやつはここから帰れ」
「そうだ、さっさと帰れ」
皆、私の肩を持ってくれるんだけど
「ニュートン、ここは素直に謝って、この地から出た方が良いのではないか」
村長もニュートンに助言した。
「そうですな、アデライン様、申し訳ありませんでした。今日は失礼します」
男は私に頭を下げると、唇を噛んで去って行った。
「皆私を庇ってくれてありがとう」
私が周りを見回して言うと、
「当然の事をしたまでですよ」
バーモント達が大きく頷いてくれた。








