聖女視点 悪徳領主アデラインの噂を全土に流すことにしました
結局私達の米作りは上手くいかなかった。
当初、ジェイコブが種籾を蒔いた時にふんだんに水をくれていたらもっと稲も育ったのよ。
水をケチってくれるから多くの稲が生長を止めてしまったのよ。
更にはジェイコブの奴は、雨が少ないから雨ごいをしろとやいのやいの言ってきたのよ。
私は今年は長雨になるから必要ないって言っていたのに!
いい加減に煩くなったから雨ごいしてやったわ。
当然沢山の雨が降ってきて、感謝されたの。
最初は!
でも、今度は降らせすぎだって文句を言い出してくれたんだけど……
そんなに急には雨を止めるのは無理よ。
そもそも今年は長雨だって私は警告したじゃない!
なんとか止めて上げたけれど、その後も雨は結構降ったわ。
長雨たってわざわざ警告して上げたのに……
元々長雨の予定だったのに更に降らせるから本当に大変なことになってしまったのよ。
長雨で小麦の病害も広がって大変なことになったわ。
収穫も半分くらいに落ちてしまったのよ。
米も最初の成長が著しくなかったのでその後の雨でも大して育たなかったのよ。
結局、必死に民の為にやろうとしたのに、ジェイコブに邪魔されて上手くいかなかったのよ。
仕方が無いから、今度は最果ての地で出来た米をアデラインから徴発してやろうと思ったのよ。
ゴダートとか言うぱっとしない男にエドワード様が命じてくれたわ。
いかにも頼りなさそうな男だったから心配したんだけど、エドワード様は大丈夫だろうというから楽しみに待っていたのよ。
「何ですって、オーガストが私達に謝れって言ったって言うの?」
私はその答えを聞いた時に完全に切れていた。
米を寄越すんじゃ無くて謝れって何よ!
「あの悪役令嬢のアデラインは、元々私に散々酷い事をしておいて最後は破落戸に襲わせて私を傷物にしようとしたのよ。悪いのは私ではなくてアデラインでしょ!」
私は使者に立ったという見た目の地味なぱっとしないしがないゴダード男爵を見下ろしていた。
謁見の間で私達の足下で跪いているが、何のために交渉に行ったのよ!
「そうだ。そもそもオーガストはメリンダを蔑ろにして傷つけたアデラインを、俺達が傷つけたと言いがかりを付けて1万枚もの金貨と最果ての領地の権利をもぎ取っていったのだぞ。全て返してもらいたいくらいだ」
横でエドワード様が一緒に憤ってくれた。
「も、申し訳ありません」
ゴダード男爵が頭を下げてくれるが
「お前が頭を下げてくれてもどうしようもないわ。それよりも米の徴税は上手くいったんでしょうね」
「それが……」
「まさか断られたのか?」
エドワード様が横から身を乗り出された。
「私では役不足だと言われて、話さえ聞いてもらえませんでした」
「騎士ども、この役立たずをつまみ出せ」
エドワード様の堪忍袋の緒が切れた。
「で、殿下、そんな、お待ちください、殿下!」
「静かについてこい」
何一つ役に立たなかったゴダードは騎士達によってつまみ出された。
「やはり、官吏なんかに任せてもどうしようもなかったな」
「本当ですな。オーガスト様も更に謝罪が足りないとか何を今更おっしゃるのでしょう。元々オーガスト様もアデラインの最果ての地追放は納得なさっていたはずですのに……」
「そうだ。オーガストはメリンダに酷いことをしたアデラインを最果ての地に追放しても問題ないと申していたのに」
ブラッドにエドワード様も不思議がっていたが、私に取ってもオーガストの行動は謎だった。
まあ、おそらく魅了が切れてしまったのが原因だと思うが……
しかしこの代わり用はどうだ?
「いかがいたしますか?」
ビリーがエドワード様に尋ねていたが、
「いかがするも何も、どうしようもなかろう」
エドワード様は肩をすくめられた。
「ゴダードにはダメ元で交渉に行かせたのだ。まあ、全く話さえ出来ないとは本当に役立たずだったが」
エドワード様と一緒で私も呆れるしか無かった。
まあ、領地無しの貴族では仕方がないのかもしれない。
「他の貴族からは食料の配給の依頼が来ておりますが」
「はああああ? 領主の仕事はこういった凶作の時に民を飢えさせないように食料を元々貯蔵するなり、輸入するなりしておくものであろうが。それを怠ったのはその領主が職務怠慢だったのだろう。俺達ですら米を育てようと死にもの狂いで努力したのだ。怠慢だったからと言って王家に言われてもどうしようもないわ」
ビリーの言葉にエドワード様は投げ捨てるように返された。
「しかし」
なおも何かビリーは言いたそうにしていた。
「エドワード様。こうされたらどうですか。聖女メリンダの助言のお陰で辺境の地にアデラインが米を作れたのにもかかわらず、その米を約束通り王家に供出せよと依頼したら、目の前の金に目がくらんだのか、アデラインは拒否していると」
ブラッドが話を作ってくれた。
「まあ、アデラインは凶作で困っている領主から金をむしり取ろうとしているのですの?」
私が更に話を盛った。
「食べ物が無くて飢えている民を前に一儲けしようとしているなんてなんてあくどい奴らだ」
エドワード様が最後に笑ってくれた。
「よし、ビリー、食料の援助を求めてきた領主には今の話をまとめて返事にしろ。食物をアデラインが出し渋っているとな。それと王家の陰を使ってその噂を全土に流すのだ」
エドワード様がビリーに命じていた。
「それは面白いですな。奴らどう出るか」
「いくらアデラインが酷い領主でもここまで言われたら供出せざるを得なくなりますわ」
「本当だな。どうするか楽しみだ」
私はあの傲慢なアデラインが苦虫を噛み潰したような顔をして王家に米を供出する様を思い描いて大いにむ溜飲を下げたのだった。
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