6.ドラキュラがお兄様の子分になりました
喉元をドラキュラの牙で血を吸われる!
私が観念した時だ。
「退けっ!」
ドシン!
私の上を飛んでいたドラキュラはお兄様の蹴りを受けて一撃で壁に激突していた。
「お兄様!」
私は駆けてきたお兄様に抱きついていた。
「大丈夫か、アイン?」
「なんとか大丈夫。助けてく切れて有難う!」
私はお兄様にしがみついた。
お兄様の腕の中は絶対安全圏だ。
古代竜が来ようが大丈夫!
私はほっとした。
「アイン、少し待て。俺のアインに手を出そうとした化け物を地獄に送り返してやるからな」
お兄様は不敵な笑みを浮かべて左手で私を抱き上げると壁に激突して倒れ込んだドラキュラを睨み付けた。その右手には幾多の魔物を地獄に帰した剣が輝いていた。
これでドラキュラも終わりだ。私がほっとした瞬間だ。
「も、申し訳ありませんでした!」
なんとドラキュラがお兄様に土下座してきたのだ。
えっ?
魔物って土下座するんだ!
それも言葉を発しているし……
ドラキュラは長生きしているから人間の言葉を覚えたんだろうか?
「も、申し訳ありません。暗黒竜も一撃で成敗される赤髪のオーガスト様とは存じ上げず、大変失礼いたしました」
このドラキュラは凄かった。
ただひたすらお兄様に土下座して謝ったのだ。それもちゃんと敬語を話している。
幾多の魔物がお兄様に敵わないまでも力尽くで反抗して、お兄様の力で一瞬で消滅されたのだが、お兄様に土下座して謝ってくる魔物は初めてだった。
「オーガスト様。ドラキュラなんて銀の十字架で成敗すれば良いではありませんか」
後ろからやってきたセイラが主張したのだが、
「そんな……何でもします。私はこの地方に1000年以上住んでいる魔物です。絶対にオーガスト様のお役に立ってみせます。だから願いですから命だけはお助けください」
地面に頭を擦り付けてドラキュラは懇願した。
「しかし、魔物を子分にしたことなどないからな」
お兄様が困った顔をしていると、
「私も聞いたことはありませんよ、そんなの」
けんもほろろにセイラが言い出した。
「それは私も聞いたことはございません」
魔物までも頷いていた。
「ならば……」
「いやあ……お待ちあれ!」
魔物は自分の言葉の選択ミスに気付いたみたいだ。
必死に言い訳を始めた。
「未だかつていないのならば、史上初めて魔物を子分にされるのが、この世界で最もお強い赤髪のオーガスト様です。その名は世界に響き渡るでしょう」
魔物は必死に叫んでいた。
「お前の言う赤髪のオーガストという二つ名は聞いたことが無いぞ!」
「我が魔物の間に広まっている噂でございます。赤い髪のオーガスト様を見つけたら、即座に尻尾を巻いて逃げろと」
これ幸いとドラキュラが説明始めた。
「世界中にこの噂は広まっております。何しろオーガスト様が退治された魔物は古代竜だけで3匹、もはやこの国には生きた古代竜がおりません。この国にだけは来てはいけないと全世界の古代竜どもにもオーガスト様は恐れられております」
「うん、なるほど」
お兄様はドラキュラの言葉にうんうんと頷いていた。
「ちょっとお兄様。私がドラキュラに血を吸われそうになったのよ!」
私がむっとして怒ると、
「こちらはオーガスト様の想い人でいらっしゃいますか?」
「まあ、そうだ」
「何それ、私はお兄様の単なる妹よ」
何故かドラキュラの言葉に頷いたお兄様を私は全力で否定した。
「アイン、何もそこまで否定しなくても」
「だってそうじゃない。それにこの前までは私を邪険にしていたし」
「ああ、少し前までは赤髪のオーガスト様には黒髪の想い人がいると魔物界隈でも有名でした。怖いもの知らずのコボルトがその想い人を傷つけたとかでダンジョンが一つ滅んだとか」
ドラキュラは余計な事を思い出させてくれた。
お兄様の目が少し細くなるが……
「でも何でも仲違いされて、オーガスト様は今はピンク頭の聖女に乗り換えられたとかききましたが……」
そうだった。私は今までお兄様に捨てられていたのだ!
「ドラキュラよ。貴様はここで地獄に帰りたいらしいな」
急速に冷気を発したお兄様を見て、
「も、申し訳ありません。私の情報が古うございました」
ドラキュラがまた土下座を始めたんだけど……
結局ドラキュラはお兄様の子分としてこの屋敷の執事をセバスの下でやることになった。
「お兄様、本当に大丈夫なの? ドラキュラは私に酷い事しない?」
「したら消滅させるだけだ」
何でもないようにお兄様が言ってくれるが、私が血を吸われた後じゃ遅いじゃない!
私が切れると
「めっ滅相もございません。そんなことしたらこの最果ての地が廃墟となってしまうではないですか」
ドラキュラは冗談にならないことをいいだしてくれたんだけど……
だから絶対に私には手を出さないとドラキュラが約束してくれた。
「周りの子供達にも酷い事をしては駄目よ」
「当然でございます」
私の言葉にドラキュラは頷いていた。
「少しでも怪しい素振りをみせましたら、私が白銀の十字架をドラキュラに突き立てますから」
真顔でセイラが宣言してくれた。
まあ、セイラがそう言ってくれたなら、問題はないだろう。
「でも、血を吸わなくて大丈夫なの?」
私が心配して尋ねると、
「100年位は吸わなくても全く問題はございません」
ドラキュラは平然と答えてくれたのだが、本当なんだろうか?
「そう言うならそうなんだろう」
お兄様はそれを見て鷹揚に頷いていたけれど……どこの世界にドラキュラを執事で使う貴族家があるのよ。
私は呆れたが、当主のお兄様が決定したからもはやどうしようも無かったんだけど、まあ、ドラキュラは千年も生きてきたので結構これから役に立つのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
ここでまた変なのが味方になりました。
ブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾








