指を切ったら過保護なお兄様に絶対安静を言いつけられました
暑い夏、やっと日本の熱い夏が終わった。
ジメジメしていて太陽カンカン照り。
汗かいてもヨーロツパみたいに乾燥していないからすぐひかないし、本当に最悪だった。
「温暖化していないから40度なんていかないからまだましだ」
とお兄様は訳の判らない事を言っていたけれど、人間の生息しているところで40度越えなんて砂漠の国くらいだ。あの熱い前世日本でもほとんど聞いた事なかったし、私は……
その暑い夏がやっと終わった。
最後は台風ならぬ竜巻竜が現れて大変だったけれど、それもお兄様が退治してなんとか無事には……終わらなかった。
あの後はお兄様が駄目にした稲を泣く泣く家畜の餌にして、私の蒔いた超早場米を植えたのよ。
あっという間に、穂が成って既に収穫が終わったけれど、とてもシュールだった。
15日で籾蒔きから田植えして稲刈りまで終わるって絶対に変だ。
「さすが、『お米の聖女様』は違うな」
お兄様とかはそう褒めてくれたけれど、なんだかな……
自分が駄目にしたところを私がカバーしたからって、調子には乗らせないんだから!
「何だ? お礼のキスならしてやろうか」
いらない!
なんで実の兄妹でキスしないといけないのよ!
確かにお兄様は見目麗しくて、何も知らない令嬢とかは赤髪の貴公子とか呼んでいたけれど……
私はその恐ろしい正体を知っているからね。
何しろダンジョンの1つや二つ普通に消滅させているから……
そうセイラに愚痴ったら
「でも、そのダンジョン消滅の元々の原因ってアデライド様が傷つけられたからじゃないですか?」
そう、セイラに言われてしまったんだけど……
うーん、確かにそうかもしれないけれど……
お兄様はシスコンなんだろうか?
いや、でも、胸デカ聖女の魅了に引っかかっていたし……
いかん、またムカムカしてきた!
そして、今は秋。
今は田んぼが一面黄金色に輝いている。
うーん、本当に日本の秋っていう感じよ。
まあ、ここはグレナン王国の辺境の地、最果ての地だけど……
やっと夏が終わって、少し涼しくなってきた。
田んぼの水を抜いて、稲刈りをしていた。
今年は豊作だ。
私は稲が無事に育ってくれてほっとした。
最初はセイラに家畜の餌とか馬鹿にされていたけれど、大切な所は全部お兄様とかセバスにおんぶに抱っこだったけれど、言い出したのは私だし、ゲームの聖女みたいにちゃんと収穫できそうだ。
更には私が蒔いた種籾は成長速度がとても速くて、それが既に大量に収穫されていた。
ゲームのように北部の他の地域は大雨や小麦の疫病のせいで、取れ高は大幅に少なくなっているらしい。
よし、これで私がゲームの偉大な聖女のポジションに立てた。
ふふんっ、私に酷い事をした聖女に絶対に仕返ししてやるんだから!
まあ、私はもう一度エドワードの婚約者の位置に戻るつもりは無いけれど……
せめて無一発くらい殴らせろとは思っていた。
特にあのエドワードの奴、可愛いアデラインちゃんのこのきれいな顔をあろうことか蹴り飛ばしてくれた。
あの屈辱、未だに忘れていないわ!
絶対に蹴返してやる。
私はやる気に燃えていた。
もっとも、王家が許す訳はないと思うけれど……。
それにあの聖女の魅了が心配だ。
お兄様が再びあの淫乱聖女の胸に惹き付けられたら、目も当てられない状況になるのは確実だった。
そういう意味では王都には行かない方が良いかもしれないし……
うーん、どうしよう?
「どうした、アイン?」
お兄様が手の止った私を見て尋ねてきた。
「えっ、何でもないわ」
私は慌てて稲刈りの鎌を動かそうとして、
「あっ」
焦って少し指を切ってしまった。
大した傷ではないんだけど、一筋の血が流れてきたのだ。
「何をしているんだ、アイン!」
お兄様の大声が辺りに響き渡った。
「えっ、ちょっとだけ切ってしまって」
「ちょっと、見せてみろ」
お兄様が私の血の流れる指を見て青くなった。
「何をしているんだ、アイン!」
やばいねお兄様が切れそうだ!
私は青くなった。
チュっ
えっ?
私はその瞬間目を見開いていた。
お兄様が私の血を流している指に吸い付いてくれたのだ。
ちゅーちゅー吸ってくれているんだけど……ええええ! 何してくれるのよ!
私は真っ赤になっていた。
「お、お兄様」
私が慌てて叫ぶが、お兄様は吸うのを止めてくれない。
いや、毒蛇に噛まれたんじゃ無いから!
「消毒だ」
いや、消毒でつば塗るって、原始時代ではあるまいし、まあ今は中世でそんなに変わらないと言えばそうなんだけど
「癒やし魔術師に消毒してもらうから」
私が言うと
「そうだな、セバス、後は頼むぞ」
そう言うとお兄様が私を抱えてくれたんだけど……ちょっとお姫様抱っこって何するのよ!
「判りました」
セバスが頷いているんだけど、
「ちょっと止めてよ!」
そう言った時にはお兄様が転移してくれたんだけど……
気付いたら館のホールだった。
「お、お帰りなさいませ」
私をお姫様抱っこしたお兄様が現れてアリスが驚いていた。
「直ちに癒やし魔術師をアインの部屋に」
お兄様が言い出したんだけど、
「いや、単に軽く切っただけだから」
私の言い訳も聞かずに私は自分の部屋に連れて行かれるとそのままベッドの上に上げられたんだけど……
「オーガスト様。癒やし魔術師をお連れしました」
「ああ、アインが手を切ったんだ。すぐに治してくれ」
「人差し指だけですか」
癒やし魔術師のリラが聞いてきた。
絶対に呆れている。
「そのはずだ」
「判りました」
ちょっと判らないてよ。こんな軽傷癒やし魔術をかけないで……
「切り傷からばい菌が入ると不味いからな」
お兄様はもっともらしく言い訳してくれるけれど、絶対に過保護だから!
リラが癒やし魔術をかけてくれて切り傷がきれいさっぱりなくなる。
「終わりました」
「ご苦労」
生暖かいリラの視線を感じながら、私は立上がろうとした。
「どうした、アイン」
お兄様がその私を止めてくれた。
「どうしたって治療が終わったから戻ろうと思って」
「はああああ、怪我したのはお前だろう。今日はもう静かにしておけ」
「いや、そんな訳には」
「良いから!」
強引にお兄様にベッドに戻されてしまったんだけど……ちょっと過保護すぎるって!
結局、午前中はベッドからも出してもらえなかったんだけど……
静かな日常の一コマでした……
そろそろ王家が黙っていません。
何を言ってくるのか?
次回お楽しみに!








