王家の陰をドラちゃん達が退治してくれて、お兄様に差し入れを持っていったら、竜巻の中から古代竜の雄叫びが聞こえてきました
ドカーン!
爆発の瞬間が凄かった。
我が家は建国以来の武のダンブリーズ公爵家だ。
それはよく知っているはずだった。
私的に!
でも、その瞬間、侍女達は全員短剣を手に取ってくれていたんだけど……
見事なまでに一瞬だった。
料理人は出刃包丁握っているし……何これ?
本当にシュールな世界だった。
それもその瞬間、さっとセイラ達は私を囲ってくれたのだ。
完全な防御態勢で。
セバスなんて長剣を構えているし……
見た目下手な騎士よりも余程強そうなんだけど。
知らなかった。
もっとも今まで屋敷が襲われたことなんて無かったのよ。
使用人全員どう見ても戦闘訓練経験者だ。
この中で出来ないのは唯一私だけ……
公爵令嬢でも普通は出来ないといけないんじゃないだろうか?
お父様とお兄様が私には甘いから、こうなっているんだけど……
「申し訳ありません。一人外壁に到達されて自爆されしまいました。その後続に邸内に突入されてしまいました」
そこに確かドラちゃんに吸血されたジョージが外の扉から現れて説明してくれた。。
「敵の数は?」
「5人ほどかと」
セバスの問いにジョージが答えてくれた。
「大雨の中、領外から、林を伝って侵入された模様です」
「ラストヴィレッジは大丈夫なの?」
ジョージに私が思わず尋ねると、
「あちらには陰が10人ほど常駐しております。問題ないかと」
そう言われて私はほっとした。
「キャーーーー!」
「賊が入ったぞ」
カキンカキン!
外で剣の打ち合う音がする。
皆慌てて、構え直す。
ジョージが外を覗こうとした時だ。
「どけーーーー!」
なんか爆弾を体に巻き付けている男が現れたんだけど……
さすがに皆ぎょっとした。
男はジョージを手で突き飛ばしていた。
そして、皆の慌てるすきに私に向けて駆け込んで来た。
「えっ?」
私が口を開けた時だ。
私の前にアリス達が立ち塞がる。
でもその前に、ドン! と何か透明な壁にぶつかったみたいに止まった。
「な、何だ?」
男が慌てて周りを見渡して叫ぶ。
その男の首筋に白い牙が突き立てられるのが見えた。
「ギャーーーー!」
男が爆発するかと思ったんだけど……その前に男に牙が食い込む。
この牙はドラちゃんだと思う。
さすが吸血鬼、突然現れるなんて!
男が真っ白になって倒れる。
「何で爆発しない?」
次の男が叫びながら入ってきたが、
「ギャーーーー!」
こちらはジョージに噛み付かれていた。
「おい、どうしたんだ?」
部屋の外から男の声が聞こえたが、
「ギャーーーー!」
悲鳴が聞こえて静かになった。
ビューーーー
外を強風と大雨が降っている音がする。
それ以外は静かになった。
倒された男達がセバス達によって武装解除されてどこかに運ばれていく。
また、ドラキュラ部隊が増えたみたい……
「どうやら、中の敵は片付けたみたいです」
ドラちゃんが報告してくれた。
「じゃあ、お兄様のところにおにぎりの差し入れに向かって良いよね」
私がセバスに尋ねていた。
「この天候の中向かわれますか?」
セバスが何か言いたそうにしてくれたけれど、
「お願い、セバス!
お兄様は必要ないかもしれないけれど、騎士団の皆はお腹が減っていると思うのよ」
「しかし、大雨で川も増水しておりますし、風もきついですよ。歩くのも大変だと思われますが……」
セバスは良い顔をしなかったが、
「どうしてもダメ?」
上目遣いに尋ねると、
「仕方がないですな。くれぐれも無茶は止めて下さいね。護衛の言うことは必ず聞いて下さい。ドラクエ、宜しく頼むぞ」
私の護衛を命ぜられたドラクエに頼んでくれた。
私に同行する騎士達がおにぎりの入った、背嚢を背負ってくれた。
私の周りを皆で囲んでくれる。
「うわー!」
外に出ると凄まじい風と横殴りの雨が私たちに襲いかかってきた。私は慌てて飛びそうになったレインコートの帽子を押さえる。
地面は水浸しで、長靴も、ズボスボっとはまり川の中を歩いているようだ。
出てきたのは失敗したかなと少し後悔したけれど、今さら引き返すなんて出来ない。
私は風に持っていかれそうになりながら、必死にドラちゃんについていった。
田んぼの稲も、水に浸かっていて、穂先が見えているだけだった。こんなので大丈夫なんだろうか? 私は不安になってきた。
「アデライン様。あちらです」
向こうにお兄様の赤い髪が見えた。さすがお兄様の赤髪は目立つ。
お兄様は必死に土を掘ってそれを土嚢にいれていた。満杯に成ると、控えていた騎士がその土嚢を縛って、他の騎士がそれを堤防の上に持っていく。
堤防の上では今にも越えそうな水を越えさせないように土嚢を次々に上積みしていた。
「お兄様!」
私が大声で叫んだが、風に阻まれて声は届かなかった。
「こちらです」
ドラちゃんが私が歩きやすいルートを案内してくれた。
騎士の一人が私を見つけて指差してくれた。
「アイン! 何しに来たんだ!」
お兄様が怒り口調で叱責してきた。
「おにぎりの差し入れを持って来たのよ!」
私がムッとして言うと、
「差し入れって、この暴風雨の中をか」
お兄様が、私を睨み付けてきたが、
「お兄様は要らないなら良いわ」
私はこわばった表情のお兄様を無視して、お兄様のそばで疲れきって座って休憩している騎士達に
「皆の守ってくれているお米で作ったおにぎりよ!食べて!」
笹の葉の包みごと渡していく。
「アデライン様、ありがとうございます」
「あっ、これ旨いです」
「でしょう、私も丹精込めて握ったんだから」
私が自慢して言うと、
「アイン、俺は何も要らないとは言っていないぞ」
スコップを他の騎士に渡したお兄様が横から手を出してきた。
「えっ?」
私が嫌そうな顔をすると、
「おい、アイン」
お兄様が眉を落として私を見る。
「仕方ないわね」
お兄様には私が握ったお握りを渡してあげた。
「なんか少し形が歪だな」
「いらないんなら、あげない」
お兄様のいらない一言に私が取り上げようとしたら、お兄様がひょいと避けてくれた。
「いらないとは言っていないぞ」
そう言って一口で食べてくれた。
どれだけ大きな口をしているんだと私が呆れてみた時だ。
「ギャオーーーーー!」
暴風の中、竜の雄叫びのような声が聞こえてきたきた。
「「「えっ?」」」
私達はキョロキョロ当たりを見渡した。
「竜?」
「いや、気のせいでしょう」
一緒についてきてくれたセイラが否定してくれたが、
「ギャオーーーー!」
今度はもっと身近で聞こえた。
そして、竜巻がこちらにゆっくりと川を遡上してくるのが見えた。
その竜巻の中から竜の雄叫びが聞こえたんだけど……
ええええ!
竜巻とともに竜が来たの?
川に竜巻なんかが遡上してきたら、補強した土嚢なんて一瞬で弾き飛ばされてしまう。
私達は青くなったのよ!
嵐の中に現れる巨大竜巻、と竜の雄叫び。
その正体は?
明日をお楽しみに!








